店主酔言
書籍・映画・その他もろもろ日記

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11月1日(木) 曇のち雨
 昼食時、戸外へ出て強風に驚く。もともと勤務先近辺は風の強い土地柄なんだが、それにしても強烈だ。轟音とともに駆け抜けた風は辻で渦を巻き、折から紅葉した街路樹の葉を吹き飛ばし巻き上げている。ん、なんかに似てるなこれ。そう、白戸三平の忍者漫画だ!忍者武芸帳だ!
 渦の真中に立って「フフフフ」などと言うと非常に似合いそうである。スーパーのビニール製買い物袋を下げてたんじゃ、一気にいしいひさいちの世界、忍者無芸帳だけどな。おまけに中身の大半が食玩だし。トホホ。

 しかしトホホな世界にも幾ばくかの光明はあるモンで、とりあえずヌーを手に入れた。やったね♪ <末期的

11月4日(日) 雪のち曇
 早暁、窓にぱらぱらと当るもの音に目覚める。いよいよ敵・冬将軍の進攻が始まったものらしい。霰での急襲は、しかし既に篭城の構えを取っている我々には屁でもなく、また惰眠をむさぼる。
 今日は「アギト」も無いのでパワパフ&ガオのみで起床後はちまちまと室内を片付けて日を過ごす。夕刻、柳刻満氏の退院祝いとて、仲間と焼肉屋へ。狂牛病ネタ満載の昨今にどうかと言う声はどこからも上がらないあたり、さすが我が友人どもである。ひとしきり祝いごとを述べた後はひたすら食って食って食いまくってたのも、やはり……認めたくないものだな、若さゆえに集まった類友というのは。

 いいだけ食って呑んで帰宅後は「キングスフィールド4」クリア。せんだっていったん終わらせたのだが、いろいろ片付けてなかったものがあって、パーフェクトクリアを目指してみた。
 で、グッド&バッド、両方終えてみて感想。
 広大な空間、リアルな迷宮、美しい効果……どれも素晴らしい出来だと思う。初めてPSの1をプレイした時から、僕が夢見ていたのはこういう「世界ひとつ」のような被造物の中を駆け回ることだったといえよう。よしや一部が宮崎アニメみたいだったとしてもだ。
 だが、せっかくの舞台に、物語は無い。いや無いなら無いで、いっそ環境だけで延々と遊ばせてくれればいいのに、中途半端なのだよな。お膳立ては整えられ、妙に作りこんだNPCもいる、過去を語る言葉は壁に記され涙を誘わんばかり……なのに、物語の根幹部がまともに明かされない。そこまで倒しまくってきた「中ボス」のように巨大な敵を倒して、さぁ次は何だ!と気負い込んだところでエンディング。え?今ので終わり?アイツ誰?ってな印象なのだ。
 長広舌を振るわれてもどうかと思うけど、せめて「我は何々」ぐらいは言ってほしかったぞ。つかアレ、依り代なんだから元は人間なんだよね?ちったぁソレらしいところを残しておいてくれないと、ワケ分かりませんて。僕の想像では千の鍵のツワイクだと思うんだけど、それらしい姿がちょっとでも残ってて欲しかったな。
 なんかこう、力の入れどころが違うというか、間に合わなくなって慌てて突っ込んだような印象が抜けない。それは、こないだも書いたけどバグの多さにも現れている。公式に発表されてるもの以外にゴロゴロ出てくるのは、どうしちまったんだフロムソフト?己の技量ギリギリのところで戦って死亡、あるいはバカやって即死なら納得するが、バグに呑まれて世界から消えるんじゃ、あまりにも情けないじゃないか。目の前の空間(床じゃないんだぞ!)からスケルトンがいきなり飛び出すのも閉口だ。思い入れがあるユーザーも多かろうに、これは哀しい。
 穴のあった武器・防具の修理システムは、時間がかかることを除けば実は結構気に入っている。ドワーフ爺さん(いや、実は青年なのかも)と火の傍でぼんやり過ごす時間は、悪い雰囲気じゃない。武具を戻してくれる時にまた3D回転させてくれればよかったなぁとか思うけど。ついでに、強化システムもあんな単純なんじゃなく、「コレコレを20個集めてきたら、この剣を倍の長さにしてやろう」とかってのがあるともっともっと……いや、こりゃ妄想だけど。
 次回に期待したい。やっぱり好きなんだよ、このゲーム。

11月5日(月) 曇
 酔っ払ってキングス遊んでそのまま寝たせいかもしれないが(つかモロだろうが)風邪が悪化。ぞくぞくと寒気がするのに顔だけが熱いという、子供のナゾナゾみたいな体調で早退した。しかし例によって眠気が訪れず、寝そべって読書三昧に。結句、これが一番リラックスできるんだからいいじゃん?ってコトで。反論却下。
 まずは『M・R・ジェイムズ怪談全集(M・R・ジェイムズ/著、紀田順一郎/訳、創元推理文庫)』。中の一編「銅版画」は、僕のホラー行脚の重要な道程のひとつである。他愛も無いといえばそこまで、古臭いといえばそれだけの、ごくごくシンプルな怪談なのだが、妙に怖い。最初にこれを読んだのは某地方都市の当時は古い建物だった図書館で、また国書刊行会の黒布装丁(エッチングつき)の重々しい本でもあった……というお膳立ての整いすぎた状況を差し引いてもだ。テキストのみで怖さを醸し出すには、言葉の山を書き連ね状況を克明に記す必要はないのかもしれないな。
 続いて『堪忍箱(宮部みゆき/著、新潮文庫)』。現代ものミステリを書くと、なぜか詰めで手加減が出てしまう作者だが、時代物、ことにホラー寄りはいっそ無惨なまでに容赦が無い。業にとらわれ絡め取られ、押しつぶされる人間の悲哀を描いて秀逸である。ま、ジェットコースター的に読めてしまって、後に何も残らんかったりするんだけど、それはそれで楽しみ方と言えると思うんだ。特に今日みたいな体調だと、蟠りが残らなくていい。
 あと「情話」系統も好ましい。特に「お墓の下まで」が気に入った。「人間はみな月だ」と言ったのはマーク・トゥエインだが、誰にも見せない暗い部分を抱えて互いに明かりを投げ合う、そういう関係ってェのも、いいじゃねぇかよ。けっ、こいつぁ涙じゃねぇ。ハナミズだい。オイラぁ風邪っぴきなんでぃ <オチなのか?

 夜に入って少々復調。ねこまに作ってもらった冷やしキツネ蕎麦(死んだ狐ってことでコードネームはFOX DIE←大嘘)を食ってさらに調子が上がったので、ドラマ『アンティーク』を観る。原作好きで観始めたのだが、ドラマはドラマなりに良く出来てると思う。役者が楽しいんだよな。ただ、音楽の使い方がナンカ変だと思う。場面に関係ない歌詞をガンガン流されるのはどうかと。メロディの美しい曲をあえてインメタで流しておいて、たとえばエンディングで歌詞入りを聴かせるとかって工夫もあるんじゃないか。あと、場面にそれなりに合った歌を流してるのに、切り替えるときにブツッと切るのもどうだろうか。
 あと、このドラマには致命的な欠陥がある。作中で美しいケーキがぞろぞろ出てくるものだから、観終わった後で無性に食いたくなるのだ。ドラマの舞台のように深夜までやってるケーキ屋があったら駆けつけたいぐらいなもんである。が、とりあえず今日は帰宅途中に極上のを買ってきてあったんで事無きを……って、早退したくせにナニやってんだとか言わないように。僕は私生活をこそ大事にするんである。 <開き直るな!

11月7日(水) 曇
 昨日、帰宅したら素晴らしく楽しいお見舞いがメールで届いてたので、今日も何かないかといそいそ帰宅、即刻メーラを起動。しかし、入っていたのはDMばかり、それもクソがつくほどくだらないシロモノばかりであった。ひとりでムカついてるのもナンなので、ちょっと紹介してみよう。<をい
 1.ネットホストになりませんか?
 どういう基準で送ってきたのか知らないが、これで真に受けて自薦する人間がいたら顔を見たい。いや見たくない。自意識過剰で小金を稼げると思い込むようなバカ青二才ひっかけて、会費とでも称して金を取るのかね?よしホストとして選別できるだけの人間を集めるとして、それに金を払う女がいたら悶絶ものの気持ち悪さである。
 2.SEXYなSFは写真で探す
 タイトルで既にバカ全開という印象だが、中身も凄い。これで商売にしようという意思さえ見えないほどの低脳文。「会員は男女ともヤル気まんまん」とか書いてるんじゃねぇ阿呆。ソノ気の無い人間がSF(サイエンス・フィクションに非ず)探しに来るか!つか会員募集メールで言える内容かよ?画像アップ可能な掲示板をウリにしたいらしいが、いまどきそんなモン、珍しくも無い。つか著作権モノをパチって来てるんじゃねぇだろうな?
 はぁはぁ。ああムナクソ悪い。しかし最後が究めつけである。
 3.ClubD●C●M● E-mail Express Extra
 迷惑メールで名高いD●C●M●様からの登録完了メールである。ちなみに我が家はマイラインは他社、携帯もヨソのを使っている。独占市場をいいコトに高料金で最悪の使い勝手を提供してくれたみかか(ちょっとヲタ表現)なんかと、誰がこれ以上付き合うかッ!と袂を別って幾星霜(そんなに経ってません)。当然登録なんぞしていない。
 これだけなら、誰かのイタズラかアドレス売りの被害かと「アドレス変更・配信中止のお手続きは、下記にてお願いいたします」と書かれたサイトへ行ってさくっと停止手続きをして、それまでよ……なんだが。
 さすがD●C●M●様、アドレスとパスワードの入力だけじゃ停止手続きはさせられないと来た!住所やなんかを入力しないと認められませんだそうだ。ブラボー!おまけに、問い合わせは(一応フリーではあるが)電話でのみ。素晴らしいぞ高ビー!(死語)さすが元オヤカタ日の丸ッ!(埋葬済み死語)
 そんなモンに割く時間は無いし、ちょっと前にはセキュリティがらみで新聞ダネになっていたD●C●M●様である。メールに返信するのもキショイ(し、おおかた自動送信専用アカウントだろ)ので、本文に載っていた適当なアドレスに送りつけてみた。さて、結果のほどやいかん。あるイミ興味深いところである。
 少なくとも、今日の日記のネタにはなったしな。 <をい

 ちなみに昨日の僕から風邪っ気をぶっ飛ばしてくれたお見舞いの品は、今野淳子さんから戴いたおっそろしくコカワイイ一枚絵である。見たい?見たい?実は僕も見せびらかしたい。つことで、このページの某所にこっそりリンクを張ってみた。どうしても見たい人は探してくれたまい。

11月12日(月) 雨
 『三月は深き紅の淵を(恩田陸/著、講談社文庫)』読了。
 怖い本である。いや別にホラーだってわけじゃない。厳密に言えばミステリでもないしサスペンスでもない。4部構成の、うち1つ以外は血腥い物語ではないし、実はそれとて劇中劇として宙宇に迷うような仕掛けがほどこしてある。何も不安に思うことはないよ、とこの本は囁きかける。でも怖い。少なくとも、僕は、ひやひやと小気味良い寒気を味わった。妙な言い草ではあるけれど。
 たったひとりに、ひと晩だけ貸すことを許された本。その在り処を探して、或いは謎に包まれたその書き手を求めて連なる物語。そのタイトルはその器であるこの本と同じく「三月は深き紅の淵を」という。だが、ありがちな入れ子状の物語かと思うと、さにあらず。
 最初は世間話のような調子で、いささかコミカルな謎解きの物語が語り掛けてくる。頷かされることも多い。そうだよね、民主主義だの中流意識だの平等だのって勘違いのもとに、世の中どんどん変になる。まして知っていることを楽しむ者が異物視されるいわれは無いよな。本読みをオタク呼ばわりも我慢できないね。もとより出発点が違うのだし……などと釣り込まれ話し込むようなイメージ。だが続けていくにつれ、ふと己の顔を合わせ鏡に見るような心地がし始める。本というもの、物語という化生に魅せられ魅入られ、帰るすべなき者の顔。いや、今、一瞬だけ、見知らぬ誰かの顔が見えなかったか?散り初める桜花の下でひとひらずつの花弁を見分けようとするような静かなパニックにとらわれる終幕。最後になってようやく、作中の本の入り口に読み手は辿り着くのかも知れない。そして次を求めてあてどなく視線を彷徨わせる。なのに……そこはふっつりと断崖、先には何も読むものが無い。ああッ怖い!この怖さは本読みにしか分るまい!
 ところで僕が「三月は深き紅の淵を」を持っていたとしたら、たぶんそこらの人間には貸さないだろう。本というものが或る人種にとっては至上の価値をもつことを知らず、ぞんざいに扱い、平気で又貸しし、挙句紛失してしまうような輩に幾度も出合ってきたからだ。だから、たとえばあの人に、ある日唐突に送りつけて読むことを強いるに違いない。心当たりのある向きは、覚悟していただきたい。

 さて今日は『西洋骨董洋菓子店』の日である。いやドラマじゃなくて、よしながふみの原作(ウイングスコミックス)。3巻の発売予告を見てから幾星霜(ってコレ多用するのもうやめろよ>わし)、待っただけのことはある。相変わらず淡々と笑わせるテンポがいいし、シリアス面を描いてもギャグに引きずられない、でも読者レベルではそこに「段差」を感じずに読める、これは大したコトだよな〜。それに、ちょっと出だけのキャラが端々で個性を見せているのが好ましい。女子アナコンビの片割れの結婚相手とか披露宴の客とか、そんな風景の一部にさえ存在感を持たせられるってのは筆力以外の何でもないだろう。以前のエピソードの脇役たち(芥川氏と夫人とか、クリスマスの時のガングロ娘とか)もちょこちょこ顔を覗かせてくれて、日々の重なりを感じさせてくれる。
 話自体は、今回メインになってる小野のネタがサブイボだったが……でこちゃん萌え〜なので無視。いや、終幕の母と子のやり取りはマジでほろっと来ましたぜ。
 テレビの方は、テロップがうるさい。コミックと違って読み飛ばしが利かないんだから、役者がちゃんと演技してたり、演出が見えてる場面で出すなよ。邪魔!音もバランスが取れてなくて、せっかく上手くなってきたキャストが可哀相である。話自体は、ほのぼのと楽しかったのにね。もっと頑張りましょう……て、12月で終わりだから、もうクランクアップしてるんだろうけどさ。

11月13日(火) 雪
 今年初めての雪の朝。真っ白になった戸外の風景を見ていたら、ニューヨークで、今度は住宅街に飛行機が落ちたとのニュース。またテロなのか、願わくば事故であってほしい。死んだ人にはどっちだって同じだろうが、あんな真似をする人間がまだこの世に残ってるよりは幾分マシではなかろうか。
 午後に入って、カンダハル陥落のニュース。これが平和に繋がると思えるほど短絡では無いが、せめても今朝の一瞬のように静謐な世界を……て、でっかいミサイルどっかんどっかん撃ち合えば、そのうち地球丸ごと真っ白で静謐になりますけどねうひひひひBAD AGAIN。 <聖飢魔II好き

11月18日(日) 曇時々雪
 公私共に多忙な一週間が過ぎ、ようやく訪れた日曜日。だが戦士には一瞬の休息も許されない。いやいつ戦士になったか知りませんが、つか戦死つー気もするし。仕事の波を乗り越えた果てに引きずり出された週末の飲み会帰りにゲーセンへ駆け込んでギルスのキーチェーンを1発ゲットして勝利の雄叫び上げたりしたんで、精根尽き果てたのよ。<そういうヤツです
 ともかく、大家さんが「畳を入れ替えてあげよう!」と言い出したので、今日は該当する部屋から家具を全て出さねばならんのである。可愛くまとまったパワパフと、ラスト前の盛り上げどころなガオレンジャーと、アギトの会(補欠1名含む)1回目開催ゲストは強化復活水のエル声は梁田清之っつえば侍トルーパーのシュテンの声だっけ謎の答は待て次号!なアギトと観て、速攻起床。少々時間がかかった気もしますけど。
 かくて終日、どっすんばったんと家具を動かし、リアル倉庫番をやってみる。大物だけなら却って簡単なんだろうが、我が家には何故か細かいガラクタが多い。フィギュアとかフィギュアとかフィギュアである。おそらくねこまが溜め込んでいるということにしておくべく、ヤツの荷物に紛れ込ませてみる。が、しょせん運ぶのは一緒であったり。いやはや。
 肉体労働終了後、先日買っておいたアクリルボックスに好みのチョコエッグフィギュアを飾ってみた。虫と爬虫類と海棲生物の混成ボックスが出来上がり、なんかこう「女の子に全力で嫌われるぞコレクション」という趣である。まぁいいですけどね、もう。

 『今昔続百鬼 雲(京極夏彦/著、講談社)』読了。感想をひとことで言うと「読みどころが無い」かな。これ、筆者のファンは読んじゃいけんよ。熱心な読者であればあるほど、筆者の動向を追っていればいるほど、どっかで見聞きしたような気がしてくると思う。キャラは「妖怪馬鹿」、ネタは「怪」を読んでいれば作者身辺に見えてしまうのだもの。
 冒険小説と銘打ってるが、盛り上がりは乏しい。謎も無いに等しい。どっちかつーと傍迷惑なコンビが勝手に冒険気分になって、落ち着いた途端に妖怪ばなしに転化してる「だけ」かなと。これは「面白いよ読み給え!」と誰かに薦める気にはなれないなぁ。ネタを知らない人でかつ妖怪の解釈を興がってくれそうな向きになら……なんか人選段階で難しいですけど。
 ふくやまけいこが挿画を描いているのが、懐かしくも嬉しかった。もういっそ、オマケにパロディ4コマとか載せてくれたら、この本も楽しかったかもしれん。ふくやま氏描く京極堂、ああ、見たいぞ畜生ーッ!ちなみに本日、移動作業中に氏の描いた「となりのトトロ」トランプ(大昔のアニメージュの付録)を発掘したので思いひとしおであったりする。こ、この絵で、魍魎の函をッ!ふくやま氏はアレに類する話を実際に描いてるので、マジで怖くなる可能性もあるが。

11月19日(月) 晴
 大ッ嫌いだ!青い空なんて!
 いやなに、昨夜から早暁にかけて、疲れた老骨に鞭打って「獅子座流星群」を見るべく出歩いていたと思いねぇ。少なくとも100個単位の流れ星が拝める、次の機会は33年後、これを拝まずになんとしよう!と、数十年ぶりの再放送である「タイム・トラベラー(最終回)」と「ユタとふしぎな仲間たち(ダイジェスト)」を観てから出撃したのである。おりしも戸外は氷点下、地面は凍てつき街灯の明かりにきらきらと輝き、見上げた空は…空は…
 雲で真っ白。
 それでも、コンビニで買ったホットドリンク飲みのみ辿り着いた近在の公園の森陰からは、数個の流星を拝むことができた。薄雲の紗をまとって飛び過ぎる大きな光は感動モンであった。いやいや、冥土の土産に良いものを拝みましたわい……って、33年後の分の台詞かこれは。
 それにしても改めて思うのは、今の夜はとにかく明るいという驚きだ。どこへ行っても街灯の明かりが邪魔で、星なんか見えやしねぇ。妙に明るく瞬かぬ人工衛星だけが、空をわびしく彩っている。だからといって地上がくまなく明るく照らされているかつーと、全然そんなこと無いんだよな。強烈な光の分だけ影も濃くなり、見えないモノが増えている気がする。それは満遍なく月や星の光が当っていた時代よりも、たぶん禍々しさも増しているのではなかろうか。む、なんかガラじゃないこと言ってますな。やっぱ睡眠不足でしょうか。
 ちなみにヒロツさん方のチャット仲間の面々は、各地方で大いに星を眺めたらしい。くそう、北海道だけが貧乏くじかよう。夜が明けたとたんに真っ青な空になったのが更に腹立たしい。やっぱり大ッ嫌いだ!青い空なんて!

 とか言いつつ眠い目をこすりながら出社すると、週明けとて異様に寒い。おまけに夜明かしして何も食ってないのである。ヤバい。凍死の三大用件が揃ってしまった。とりあえず暖房を強化しコーヒーを流し込んで要因の一部は排除したものの、眠いには代わりが無く、終日ぼよよ〜んと過ごしたのであった。クソ忙しいには変わりが無いつ〜に。お星様タスケテ。

11月22日(木) 晴
 帰宅途上に書店パトロール。ファンタジー系統が大増殖している。古い名作に「ハリー・ポッターの源流」だの「〜が好きな貴方に」とかの腰巻つけて売られるのは失笑というより哀れを覚えるが、それで読むべき人の手に渡るなら良しとすべきなんだろう。新作もどんどん増えてて嬉しい限りだし。しかしハードカヴァー主体なのが問題だ。置く場所が無いんだよな〜。同じ値段でいいから文庫サイズ出してくれませんかね。なんでもかんでもペーパーバック(もちろん例外はあるが)のアメリカ仕様が、こういう時には羨ましい……上作に出会うと装丁にケチつけたくなるんだけどね。えっへっへ。
 と言いつつ、今日までに買った本はほとんどコミック。
 『Papa Told Me(秦野なな恵/著、集英社)26』いつもながらのきびしい眼差しをやさしい絵柄にくるんで、読ませるのう。バレンタインに関するあたり、モノでのやりとりを考えさせられるわい。いや、無責任に批判し野放図に書き飛ばす素人ゆえに突き刺さる話もあったりするんだけど。でも、無批判の中では「プロ」も「名作」も生まれないと思うんで現状維持でいいよな。<をい
 『OL進化論(秋月りす/著、講談社漫画文庫)』うまくなれども変質せず、コンスタントに面白い。これを12年続けるというのは並大抵ではないよなぁと思いつつ、作中人物同様ににへら〜と笑える。
 『X(CLAMP/著、角川書店)17』『からくりサーカス(藤田和日郎/著、小学館)』ここらは「To Be Continue」なんで感想の言えるトコじゃないなあ。どっちもどっすんばったん忙しく見えて、結句それぞれのパターンで終わりそうな予感。ひっくり返してくれることを期待しつつ、続巻待ちというところか。

 そして今日は、待ちに待った『ギャラクシー・クエスト』DVD発売日。上質なパロディと絡み合う上質なスペオペ・ストーリーは、幾度観直しても飽きないものがある。オマケのボツ場面も実にいい!特にグエンの色仕掛け。女って酷いよ(笑)
 さらにドキュメンタリーを観るほどに、スタトレ世代の心はふるえるのであった。いや〜、なんせセットが揺れなかったんだぜあっちは。さ、もっと細部を楽しむべく、もう一度観るとしよう!

11月23日(金) 晴
 クリスマスや年末の用意、冬への備え、それに何よりアレやコレな工作材料の調達がしたくて、三連休の初日に街へ買い物に出る。
 失策であった。世間様も同様だったらしく(いや、アレやコレなブツについては違うかもしれんが)地獄のように混雑してる。レジ前はどこも行列。人込みと行列が死ぬほどキライなのに、その只中をウロつく羽目になり非常に消耗する。
 それでも光ファイバーだの裏地用布だのカラースプレーだのと、取りとめもないリストの品は何とか調達することができた。もうしばらくは出てこないぞと、早々と冬ごもりを決意した勤労感謝の日であった。うう、過労死しそうである。

 中心街方面での任務を達成し、ついでのことにねこまと遅い昼食をともにしようと駅方面へ。かつてこの地の政を行っていた赤煉瓦の建物の前を通る。庁舎前の池には、例によって数多くの鴨が泳ぎ、観光客から貰う餌に群がっていた。どーでもいいが、恵まれた環境に渡りをせんようになった鴨もずいぶんいるらしい。そんなん毛色の違うアヒルじゃねぇかいっそ鍋にして食っちまえと思いつつ、なにごころなく眺めたら……なんか白いヤツがいる。サイズも一回り違う。つかクチバシ尖ってるし。あれ、カモメじゃねえか?!
 なんかこう、あまりにもシュールな光景であった。しばし疲れを忘れたほどに。代わりに脱力したけどね。

11月24日(土) 晴
 柚さん来訪。先ごろ休暇で花巻方面へ出かけたとのことで、可愛いらしいパッケージに「山猫軒」なる名前の入ったクッキーをいただく。なかなか美味い。しかし店名がひっかかるなあ。材料は何なんだ、やっぱ「注文の多い」ルートを通ってきた牛さん&ニワトリさん&小麦運搬人さんだったりしますか。ってソレでどうしてクッキーになるとか聞かないように。
 先週の「妖怪・畳返し(未発見)」の来襲以来、部屋が片付いていないのだが、とりあえず席をしつらえて映画など流す。モノは……やっぱ『ギャラクシー・クエスト』でしょう!未見の人に伝導するはクエスタリアンの使命!いつクエスタリアンになったかは聞くな!
 幸い、柚さんはNG系トレッキーでもあるため、すんなりハマってくださった。ひとしきり笑った後、好ましい作品がなかなかDVDで出ない、出ても品薄という話で盛り上がる。ことにファンタジー系の良品がなかなか見当たらないんだよね。『レディ・ホーク』『ラビリンス』『レジェンド』『ダーク・クリスタル』『指輪物語(アニメ版ね)』などなど、どれも今だに楽しめるグレードだと思うのだが。
 幸い、我が家にはナイショのビデオが数本あったりするので、中から『レディ・ホーク』を上映。画質はあまり良くないが、それでも引き込まれる。ああ、美しいぞミシェル・ファイファー!いかにも雑に切ったようなショートカットで、華やかな装いも1カットとて無いのに、他のどの映画で観るより綺麗なのだよな。
 それに、この作品では何つーてもルトガー・ハウアーがカッコエエ!クロスボウでぶん殴ったりバスタードソード(だよね?)投げつけたりのワイルドな闘いっぷりがよく似合うんだよなあ。鷹に変じて飛び去る恋人を見る哀切な表情もすばらしく上手いし。『ブレード・ランナー』のレプリカント役がハマりすぎた役者だけど、僕はこの映画でのナヴァール役が一番好きだ。二番目は『ザ・サバイバル(野生の呼び声)』のソーントン。三番目は……『ウォンテッド』の主人公と『ヒッチャー』の殺人鬼で迷うところだな。いや、まぁ、別に同席したいワケじゃありませんから。

 夜半、ちょいと考えあぐねることあるままに『難事件鑑定人(サリー・ライト/著、長島水際/訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)』読了。
 つまらん、とは言わないけど面白いとも言えない。主人公の仕事や、それにまつわる知識の部分は非常に楽しめるのだが、それがあまり濃くなくて、おまけに他がボロボロ。シリーズの3作目らしいのだが、前作からのヒキが出てきて読者を置き去りにすることしばしば。それはまぁ良いとしても、ミステリとしては最悪に近い点があって、これは酷いと思うんだ。凶器についてのミスディレクションをさんざんやった後で「知られてない毒素」ってのは無いだろうをい謎解きにはアンフェアすぎるよ。あと登場人物がめったやたらに多くて整理されてないのでイライラ。人物一覧を見ながらでないと海外ミステリを読めない人には断じてお勧めできない。なんせ30人ぐらい載ってるんだぜ、冒頭のリストに。
 自分が考えあぐねてるのがまさにその点だけに、妙に腹立たしくなってしまった。結局そっちの作業も進まなかったので、自戒のために枕もとに置いて就寝。

11月27日(火) 雪
 週があけてから急激に落ち込んだ気温の谷間に、とうとう雪が積もりだした。本格的な冬の到来を目にして、身の引き締まる思いがしたいところである。うう、最近とみに皮下脂肪が増えてるんだよう。自己努力あるのみだけど、そんな時間も無いときた。平均体重を上回ってないことだけが、心の慰めである。

 『綾織り幻想(波津彬子/著、小学館)』購入。ラヴリ同人の頃よりのファンである氏の画集、なんとしても入手!と購入……したのだが、うう、いわゆるナントカラブ系の表紙絵コレクションっすか!そのものをモロに描いてるワケじゃあないけれど、やっぱ抵抗があるなぁ。彩りうつくしい画風には、常のように惹かれるのだけど。CGじゃあ、この錦繍のごとき色合いは出せないよな。いや善し悪しを言うのじゃなくて、画風に合う合わないってコトなんだけど。
 短編コミックは氏らしい「やさしい宵闇」風味の幻想物語で、心やすらかに楽しめた。また巻末の絵葉書が良い。額に入れて飾りたいものだが…切るのが惜しい。うむ、こういう逡巡は久しぶりで楽しいぞ。
 偉そうな言い方で赤面モノなんだけど、早世された姉上を超えた「絵師」になられたものと思う。今後も新刊を楽しみにしたい。ボーイズアレ系には、さすがにお供しかねるけどね。

11月29日(木) 曇時々雪
 いまさらではあるが、僕はコジマニアと呼ばれることを好む。カテゴライズされることが大嫌いで、そうしようとする相手はことごとく撲殺してもいいや〜なんて思ってる人間としては特例として、KCEJの小島監督の手になるゲームを好きな人間という範疇に自己を置きたがっている。
 いや、面倒なコトは言うまい。要するにアレだ、買っちゃったのよ『METAL GEAR SOLID2 -Sons of Liberty-』。しかもメーカー様謹製のプレミアムパッケージ版。サントラCD&ポスター&画集その他の特典付き。ええっうるさいわいッ、これが贔屓筋の意地よ張りよあちきの操でありんすえ。なんで花魁になりますか。成り上がると花魁キングですか違いますか。
 ……しかしだ。
 遊べないんである。正確には、持ち帰れない。これを書いてる19:30現在、全然仕事が終わる気配を見せない。今回、てめぇで書いてるヘボ話に似た要素があるとかで、パロディネタにしてやろうとてぐすね引いて待ちわびていたのに…(それがファンかと聞かぬように。ファンです)…畜生、こんなことなら有給取っておくんだったぜ!
 とか言いながら、こんなモン書いてたら仕事が片付くワケもないのであった。分かってるんだけどな〜。
11月30日(金) 雪
 午後に入って鼻がグズグズいいはじめ、やがて滝のようなハナミズと連発するクシャミに悩まされ始める。軽い悪寒もする。あからさますぎる風邪であろう。
 この調子では帰ってもゲームは出来ん、と早々に見切りをつけ、帰宅途中にアルコール消毒と栄養補給をすることに。酒は「酔鯨」。うまい。日本酒は辛口に限るのう。ツマミは鳥中心だが、追加した焼き茄子と寄せ豆腐がことのほか美味で、ついもう一献。みるまに体が温まり気分が良くなる。うむ、消毒は完璧だなっ!これで明日はゲーム三昧だ!
 どのみち、足元が覚束なくなるまで呑んでしまっては、復調したってゲームどころじゃないけどな。

 深夜、目覚めて、ここしばらくの通勤の友だった『インスマス年代記(スティーヴァン・ジョーンズ/編、大瀧啓裕/訳、学研M文庫)上下』読了。
 このジャンル……というのは、いわゆる「クトゥルー神話」なんだけど、のアンソロジーのお約束として、前半の巻は古典で埋まっている。ほとんどは読んだ記憶があるが、こうして読み直すのもまた一興だ。ただ、どうも訳がこなれてない気がするのだが、何だろう?訳者氏はヴェテランだし、そもそも青土社あたりのは完全に取り仕切ってるのじゃなかったか?ムリに若年層に読みやすくしてるのかな?
 下巻に入ると現代もの、隠し味にインスマウス(つー読み方のほうが僕は好き)を使った作品などが現れる。で、上下巻通して僕が好きだったのは、こっちの真中へんに入ってる『インスマスの遺産(ブライアン・ステイブルフォード)』。まさかクトゥルーネタをこんな風に調理する人がいようとは。そう、かれらは魔に憑かれ呪わしい身になったことを喜んで海へ還る、それが違うとしたら?と約束事に投げかけた些細な疑問は、清涼とも言っていいような透き通った哀感に満ちみちた物語に昇華している。さらに、そうありながらも渦巻く疑念と恐怖は拭い去られぬまま、澱のように胸に残る。取り残される主人公の心とともに。
 他にはチャウシェスク政権を見立てに使った話が面白い。このパターンは以前、ヴァンパイアもののアンソロジーでも見たことがあるけどね。つまり、ヒトのすることは化物どもなんかじゃ追いつかないということなのかな。


翌月へ




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