店主酔言
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5月1日(木) 曇
 肌寒い一日、仕事が妙に長引いて帰る道すがら、白い花の塊を見る。今年は咲き初める間際に冷え込んだので、例年のような葉桜にならなかったものらしい。常ならば桜餅が実ったような賑々しい印象のあるこの地の桜が、夜闇のなかにがぼうっと浮かんでいるのはなかなか興趣深い。浄瑠璃や歌舞伎の作者が舞台の闇に作りたかったのはこんな情景だったのだろうなぁと、しみじみと眺め入る。しかし頭の片隅で「メイドの飛脚」とか馬鹿ネタをこしらえ、人気の無い道端でぐふぐふ笑ったりもしたのだが。 <アブナイからやめれ

 帰宅後、とりあえずパソ復活。とはいってもOfficeとメーラーを入れてそれぞれアップデートしただけなのだが。他のアプリは追々再インストールしていかねばならん、ああ面倒くさい。
 もうアレだよなぁ、こうなったら環境丸ごとコピー用にHDDをもう1台買うべきなのか?しかしソレやって安全とも限らないのがマイクロソフト製品だからなぁ。もしかして社是に「マーフィーの法則」を採用してませんかビルゲッチよう、おい。 <何様

5月2日(金) 晴
 昨日とうって変わった快晴の朝。夜目に白く冴えて見えた桜もピンク一色、覗く若葉の緑を添えてまさに桜餅である。うむうむ、かくあるべし道産子の桜。なんたって花見っつ〜と木の下にコンロ持ってきてジンギスカンやるような人種が棲息する土地柄だから、花も勢いパワフルコミカル系に走ろうってもんだ。死体が埋まってるように見えても、酔いかつ食いつぶれたオヤジ(熊に非ず)だろうて。つーかよう、煙で花も見えなかろうに。でもビールが旨いんだ。

 とかとか、夜桜に夢を馳せていたら(違うだろうが)自分でまとめておいたゴミを出し忘れた。あらまと収集車を見送って仕方なく出社準備をし家を出たら、今度は鍵がポケットに入ってない。あやういところで相方に渡してもらい、慌てて地下鉄駅へ走ったら通勤用のカードが見当たらない。まぁいいさと切符を買おうとしたら、小銭入れが昨日のシャツに残っているのを思い出すという体たらく。
 ふ…桜に魅入られたかな。 <違うだろう!

 まぁともかく日記のネタにはなったなぁと思いつつ出社。しかし戸外は今年最高の陽気(予報では24度)で、来る電車には行楽客がゾロゾロ。なんかこう、労働意欲がもりもりと減少する。明日からの休みを待って、今日はひたすらぼ〜っと過ごすことにしよう。仕事なんか知るかってんでぇベラボウめ!

 …とか言いつつ残業して、またしらじらと冴えた桜を眺めながら帰りました。ループしてますしくしくしく。

5月3日(土) 晴
 ひとりバスに乗り、某地方都市へ赴く。いや、何のこたぁない親元への顔見せなんだが。好天に恵まれ、新緑萌えそめる風景が殊のほか美しい。市街地の外れでカササギ(迷鳥が居付いてるそうな)を目撃し、ちょっと得をしたような気分になる。黒地に風切羽と腹部が白という、なかなかダンディな色合いだ。しかし、どうしてアレが七夕の渡しになるんだろう。中国四千年の思考パターンはよう分からんな。
 そういえば、人間は白黒バイカラーの生き物を妙に好むきらいがあるように思えるんだが、どうか。パンダ、バク、シマウマときて、他の生き物にもその模様をつけてもてはやしたりする。ウサギにマウス、あげくは魚類でコリドラスだもんな。元は熊だぞ?猛獣なんだぞ?白と黒ならパトカーでもいいじゃん?つかヒトってそんなに白黒つけたがるイキモノだっけ?
 いや、たれぱんだやYonda?グッズを集める人間と暮らしながら考えることじゃあありませんけどね。ええ、分かってますともさ。

 帰途は別ルートを選び、千歳空港でふらふら。地元民は目にしたことも無いような土産物をひやかすのが楽しくて時折訪れるのだが、今日はさのみ面白いブツも無く、早々に撤収。ゴールデンウィークの割にはSARSとかで人出も少なく、歩きやすかっただけに残念である…って、この時期に人込み嫌いが出歩いても平気な状況って、やっぱ問題あるわなぁ。戦争・疫病・不景気に冷える世界を思いつつ、バスに揺られた夕べであったよ。

5月5日(月) 晴
 ねこま10回目の誕生日。詳しくは過去の同月同日を参照…しなくていいです、はい。テキが後で睨んでいますんで。
 猫又がさらに古く甲羅を経ただけの日を祝うのも業腹ではあるが、先ごろ買いととのえた机周りの収納ツールなどを求めるべく、街へと出てゆく。まずは無印良品ショップで下見。寸法に合いそうなものを見定めたところで本屋へ寄り道。去る4月30日に物欲神に打ち克ったことを、かの神の使徒いや神官長にして憑坐、いやいや生ける物欲神の御座所(しかも胡座をかかれている)と言っても過言ではない『グッズ山のシジフォス』『クラインの財布』こと奇妙愛博士に誇ったあたりである。これについては博士の日記で天罰を予言されていたのだが、なんのことやあらん、品切れの憂き目には遭わなかった。保留しといた『始末屋ジャック 悪夢の秘薬(F・ポール・ウィルスン/著、大滝啓裕/訳、扶桑社ミステリー )』上下巻を手に意気揚揚と売り場を離れる。
 しかし途上、ゴーリーの『うろんな客』のポストカード・ブックを見つけたのを皮切りに、欲しい本が増える増える。『北野勇作どうぶつ図鑑 その1・かめ(北野勇作/著、ハヤカワ文庫JA』同『その2・とんぼ』を、『かめくん』も読まなくてはなぁと思いつつ手に取る。かと思うと懐かしき『密室殺人傑作選(H・S・サンテッスン/編、山本俊子・他/訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)』が、今市子表紙の『幻想ファンタジー夢幻夜話アイズコミックス』が、次々と目にとまるではないか。しかも、これは己の分だけであるから後は推して知るべし。レジに着いた時には既に小山が出来ていたのであった。
 げに神のみわざは人の子の知り得るものではない。考えてみりゃ〜クトゥルフ神話の主人公たちも、異形と戦ってるつもりで、ある日ふと気付くと海へ還ったりしてたもんなぁ。ひとたび物欲神の洗礼を受けた者がセーブして欲しがるなんて器用な真似は出来っこないのだ。「求めよ、さらば嫌になるほど与えられん」とも言いますし。<言わんて

 かくて本と収納ケースの山に、心ばかりのケーキを載せて帰宅。ちなみにケーキは所謂デコレーションタイプではない。今日この日にソレを買おうとすると、鯉幟だの兜だの金太郎さんだのが天辺にのさばってる仕様になるのである。
 あとはひたすらのんびりと片付けものしつつ茶を喫しつ録画した『アバレンジャー』&『555』眺めつ日を終えた。両方ともなかなか盛り上がっていて嬉しい限り。前者はハジケた展開が、後者は(ちと古典的ご都合主義に溢れてはいるが)交錯してゆく人間模様が、それぞれ見せるものがある。思い切り引いているので、来週が楽しみなところだ。

 ところでこの4日ばかり、全くPCに触ってない。閑古鳥農場と化してるあっちのサイトはいいとしても、溜まったメールの処理が怖い。週の前半に片付けば御の字ってところであろうか。1対1のやり取りは確実なれど遅延も招くもの、やっぱこっちにも掲示板つけようかなぁ。って掲示板でも遅レスしまくりなんだけどもさ。

5月8日(木) 雨のち晴
 「レイ・ハリーハウゼン リアルフィギュアコレクション」をねこまが買ってきてくれた。とりあえず2個、様子見にということで、内容はエイリアンとケンタウロスだった。出来は…ええと、まぁ前者についてはオリジナルが「のっぺら」なんで語ることは特に。しかし後者は塗りが甘いとはいえ、毛のモールドや細部の作り込みが細かくてなかなかのモンである。チョコQで海洋堂と袂を別って以来、僕の心の琴線にはイマイチというにもいま一歩みたいな商品しか出ていなかった(失敬)フルタ、ひさびさの快挙である。
 しかし製作協力がX-PLUSとあってはむべなるかな。以前からハリーハウゼン作品のフィギュアをこさえてる、いわば本家本元であるものなあ。餅は餅屋というか、適材適所というか、割れ鍋に閉じ蓋…は、ええと違いますですな、はい。
 とりあえずこれはシリーズの1回目ということで、フルタでもようやっと真面目にオマケに取り組む気配が見えたのだろうかと、ちょいと期待してみたいところである。いやさ是非頑張って欲しいもんなのだ。今回はとりあえずスケルトンをフルコンプしたいし、シークレットのカーリーも欲しい。ヒュドラを出してくれるまではシリーズにも続いて欲しいのだから。もちろん、「霧笛」の恐竜も希望。って思いきりよく偏ってますかわし?

5月10日(土) 曇
 仕事に出かける相方を見送って、朝から屋内の片付けに専念。冬のさなかの洪水事件からこっち、物置/書斎から退避させといたものを徐々に戻していくという不毛な作業である。何が不毛って、戻すべきスペースが既に他のもので埋まっているっつーこったな。なぜだろうふしぎだなー(棒読み)。

 ひととおり周辺を片寄せた(片付けたではない)後、今度は植木の手入れ。冬を過ごした鉢から出して根をほぐし、新しい土に入れ替えてやる。自慢だが(てヲイ)僕はこのテの作業が得意である。ちなみにねこまが触ると、たいがいの植物が元気を無くすらしい。本人の言うところによれば、松葉牡丹を蒔いたら芽が出ず、ヒヤシンスの水栽培にも失敗したとか。何をどうやったらそんな事になるんだろう。ものみな枯らす「茶色の親指」でも持っているのか。ついでに言うと、この特殊な才能は我が友人のひとりも持ち合わせており…って、話は変わるが何で緑の「親指」なんだろうな。『指輪物語』において忠勇なる庭師(ってのも妙な存在だよな)の名前がサムであるのもここらの語路合せか?と、バラすと後が怖いから、話を脱線させて今日は幕。 <腰抜け

5月11日(日) 晴
 柚さんが遊びに見え、3人で中国茶店へ昼飯→ホームセンターで買い物コース。相方が欲しがっているハーブの苗を買う予定だったのだが、種すら無くて驚く。なにかね、ブームが去ったのか。それとも呪い師組合で素人には売らないよう申し合わせ園芸屋に圧力かけてるのか。いや、それとも茶色い親指コンビと来たために、つかわしめを哀れんだ植物の神が隠したもうたか?む、昨日伏せた事に何の意味があったのか。というかここでバラしたことが知れたら何をされr(以下削除)

 まぁ色々あって帰宅後、客をそっちのけで水槽掃除だの植木のケアだのと片付け物を続行。とはいえ我らと同様今市子大好きな柚さんは『幻想ファンタジー夢幻夜話アイズコミックス』で「岸辺の歌」最新作に読みふけっておられたが。
 ちなみに、これは良かった、相変わらず。古代中国かシルクロードの一端かという異国情緒とともに不思議なノスタルジアを感じさせる風景、そこで織り成される人の営み、すれ違い、すずやかに心に沁みる想いといったくさぐさの配分・調和がなんともいえない。とても文鳥の下僕をやってる人の作品には思えませんな!
 しかしこの本全体を見ると、他の部分はほとんど何も残らないのが何とも。凡庸やら説明不足の自己満足やら、読むに耐えないほどの愚作にも落ちないのが却って辛いほどである。もとより表紙に釣られて買った身、期待もしていなかったけど、新しい出会いがなかったのは残念であった。

 柚さんはまた『猫つぐら島(猫十字社/著、扶桑社)』を読み、興味ぶかい見解を聴かせてくださった。特に序盤、著者がどうして犬との付き合いにかほど悩むのか?という疑問である。正直、僕はこうは思わなかった。犬を飼うことイコール相応の躾をすること、義務というよりは責務であろうと考えてたので、精神的なダメージを負った状態で著者がその種のプレッシャーを背負っているのにも、全く疑問は無かったのである。
 がしかし、柚さんいわくに「躾は必要だけど、それを前に”犬を愛せないかも”ってのは考え過ぎじゃないかな〜って」。結句、猫十字社氏は犬との付き合いを経て「ねばならない」状態から脱出しているワケだから、柚さんはそれを初手から持っているということなのだろう。心の赴くまま愛し、一緒に居て、そこから意思疎通をしてく、いわば自然体の精神をもつ彼女が、いささか羨ましくもあるな。僕には真似ができません。しないけど。

 晩飯に3人で鍋をつつき、ゲームにマンガに食玩に人形にと、とりとめもなく話を繰り広げて今日は終わり。たいへん楽しい1日であった。また遊んでください、柚さん。茶色い親指でもいじめませんから。 <いらんこと言って殴られる。

5月20日(火) 晴
 風邪をひいて1週間経った。
 枕も上がらぬほどの高熱でなし、呼吸が止まるほどの鼻詰まりでもなし、水も飲めないほどの喉荒れも無し…と中途半端な症状と、転職に伴って急に膨れ上がった仕事量のため、休みもせずにフラフラと会社へ行きヨロヨロと帰宅して日を送ってきたのだが、おかげで他のことは全くできないまま1週間過ごしてしまった。これは自己新記録である。つか今も更新中なのが非常にイタいんだが、まぁそれはさて置いて。
 この日記はまだしも、メールやら各方面のBBSやらチャットやらにご無沙汰が累積しまくった有様は、冬休み(当地では夏より長い)の最終日の記憶を鮮明に甦らせてくれる。うむ、人生には時々こうして過去を振り返る瞬間が必要という天の采配であろうかよ。若返る心地がするのう。つーか寿命が縮むような気もしてますが錯覚ですか?お返事出せずにいた皆様、ほんとにすいません。何とか追いつきますので勘弁してください。

 しかし、どの症状も、ゆるゆると緩和された程度で全快しとらんのである。こういうコンディションの時には何をやっても捗らない。せいぜいが布団に潜り込んで、文字を追ってはうとうと、絵を眺めてはうつらうつらが関の山。普段とあまり変わらない気がするが、冊数が段違いなんである。ついでに言うと脳がふやけているので、何を読んでも感動ニ割引である。
 で、そんな中で読んだにもかかわらず胸に迫って泣けてしまったのが『アメリカン・パイ(萩尾望都/著、小学館)』。再々々?読だっつーのに涙腺決壊。風邪の症状と相まってティッシュの山を消費してしまった。比重は聞くな。
 ストーリーのみを追うなら、類型には山ほど出くわすだろう。家出した少女が青年と出会う、始めは少年と間違われながら通う心、だがやがて病魔が彼女を奪う…しかし凡百の物語を突き放して遥か高みへ読み手の想いを連れ去る、その結末は比肩するものが無い。喪うことを知らなかった若年期にも感動したが、幾多の別れを経て年を重ねた今となってはそれが層倍している。絵空事ではなく誰かを何かを失ったことがある人へ、やがて失われゆく我々自身に、差し出したい物語である。

5月21日(水) 晴
 ヒロツさんちのチャットで楠葉さんから、熊さんの訃報を聞く。
 熊さんは、ニフティサーブ時代『キングスフィールド』好きが寄り集まった仲間内の最年長にして、ある記録を打ち立てた僕らのヒーローだった。ナイフ1本でメラナット島を駆け抜ける(もちろんストーリーはクリア)という、遊びゴコロに満ち満ちためざましい記録。実社会では某新聞社の立場ある方でもあり、そうした豊かな知識と経験に裏打ちされ(かつちょっぴり頑固顔を覗かせ)ながらも軽妙このうえない発言を読むのはつとに楽しみであった。
 喉頭癌で床につかれ、治療を受けながらも、ゲームの語り部として時折Webを闊歩しておられた。奥様がものされる闘病記を読んでは帰安あれと祈っていたのだが…。
 今はただ、思い出を新たにしつつ、ご冥福を祈るばかりである。合掌。

5月22日(木) 晴
 『悪夢の秘薬 上・下(F・P・ウィルスン/著、大滝啓裕/訳、扶桑社ミステリー)』読了。いや〜、通勤経路が地下鉄主体になったもんだから、捗るはかどる。その分歩かなくなったんで、体重増加も捗ってますが。やばっ!
 それはさておき、始末屋ジャック・シリーズ最新刊。例によってキナ臭い話が舞い込み、皮肉かつ情け容赦なくターゲットを追いつめるジャック。今回は周辺の状況から描き出して、その中心にいるモノとの邂逅に至る過程がなかなか読ませる。依頼人とその関係者の側の視点の物語が、医療サスペンス風味で引っ張ってくれるのがいい。一応ターゲットになってる悪役はあまり強烈じゃないが、結句ヒトならざるものとの戦いに重点が置かれてしまうので、始末屋稼業が霞みがちなんだよな。シリーズの骨子にしてホラーゆえ当然とはいえ、比重の少なさ加減はちょっと不満なので、ソッチのファクターの大きい短編でも読み直すとしようか。
 ところでこのシリーズ1作目が映画化され、来年めでたく公開だとか。いったい誰が主役を張るのやら。なにせジャックは「目立たない」ことを金科玉条に日常を送る男なんだから…って、どーせハリウッド映画、原作なんざぁ無視むし大行進なんだろうなぁ。ならばいっそ『レリック』並みにブッ飛ばして欲しいもんである。ええ、好きなんですよアレ。駄目っすか?

5月23日(金) 晴
 治らない風邪のため長編読みが体に堪えるので、書斎から発掘したアート・バックウォルド傑作選など読んでみる。『だれがコロンブスを発見したか(永井淳/訳、文藝春秋社)』に始まる5冊は、ちょいと読んでは鼻をかみ、笑い転げては咳止めをすするのになかなか好適。ちょいと失礼な評価かもしれんが。
 しかしコラム、それも新聞紙上におけるそれは時事問題というナマモノを扱っている筈なのに、20〜10余年の歳月を経てなお笑えるというのは、筆者の慧眼やカロヤカこのうえない筆力ゆえもあるが、ここ数十年の社会が同じよ〜なことを繰り返してるってのも大きいな。政治の矛盾や腐敗、無意味な戦争、社会不安、テクノロジーの暴走、どれをとっても当に十年一日の趣である。違いがあるとすれば、ただ、彼の時代にSFめいたジョークとして語られていたクローニングや臓器移植が、今まさにおぞましい形で現実化してるぐらいか。そう思うとあんまり素直に笑えないよ〜な気もする。
 そういえば、今の米国政府首脳部ってみんな凄いばかりに悪役面なんだが、バックウォルドおじさんなら彼らをどう料理したやら。僕のレベルじゃ『ダイ・ハード』みたいな映画のストーリー(敵の傀儡ボス:ブッシュ、真の悪党:ラムズフェルド、敵陣営ながら信用できる奴:パウエル…とか)にするのが関の山なんで、ぜひ一発、お願いしたいもんであったな。

5月24日(土) 曇
 バックウォルド傑作選を読了。ちょいと触発されたので、真似事などしてみようと思う。

 【社会の木鐸節約法】
 学生時代をともにこの街で過ごした友人が、出張で久しぶりにやってきた。名前はとりあえずAとしておこう。
 待ち合わせ場所の駅前に着くと、彼はプラスティックのバスケットを持った若い女性に何やら文句を言っているところだった。どうやら配布物を彼にだけ寄越さないらしい。きちんとした身なりのサラリーマンを差別するのも妙な話だと思い、傍から口添えしてみた。
 「お嬢さん、すまないが彼にもやってくれませんか」
 「でもぉ、これぇ、男の人には用が無いものなんですけどぉ」
 それでモノが何か理解できたので、Aに伝えたが、彼はそれでも引き下がらなかった。結局、お嬢さんが根負けして渡してくれるまで僕らはそこから離れられなかった。
 「どうするんだ、そんなもの貰って」
 僕が聞くと、彼は鞄を開けて一杯のポケットティッシュを見せた。
 「これと同じさ。無料なら貰わなければ損だろう。自分で使わなくても、女子社員の急場に売ってもいいし」
 「しかし、それは広告だろう?1人で何個も貰うのは却って迷惑じゃないのかな」
 「受け取らない人間もいる。そいつの分を貰ってやってるだけさ」
 道すがら、欲しい雑誌があったので書店へ立ち寄った。見つけてレジへ歩き出そうとすると、Aは引き止めた。
 「本なんか買うな」彼は叫んだ。「立ち読みで十分だ」
 僕が、この記事はどうしても読みたいのだというと、彼は携帯を取り出して誌面を撮影した。
 「これでいい。後から画像を送ってやるよ。なに、パケット料はまけておいてやるから」
 それはある意味盗みじゃないのか、そもそもそのサイズで文字が読めるのかとは思ったが、久しぶりの再会に水を差すのも嫌なので黙って従った。
 そろそろ昼時、食事でもと言うと、彼は大学へ行こうと答えた。
 「確かに懐かしいが、ここからはずいぶんあるぞ。手近で済ませないか?」
 「出張のときは事前にそこの役所か大学を調べて、昼飯はそういう施設の食堂と決めてるんだ。結構美味いぞ。何より廉いし」
 「役所はともかく、学食はたいがい、大学生協が運営してるんじゃないのか?我々はもう会員じゃないぞ」
 「だからなんだ?どうせ親のすねかじりどもが、我々の納めた税金の助成で運営してるんだ。少しぐらい元を取ったって、どうってことあるまい」
 学食に辿りつく頃には時分どきは過ぎ、限られたメニューしか残っていなかった。大学はたいてい郊外にあるので、こういうこともある、サービス改善すべきだと、Aは憤懣やるかたない様子で食券売り場のおばさんに文句を言った。
 量だけはごっそりだが塩味のほうが勝るカレーを食べながら、近況を報告しあった。彼は名前を聞けば誰もが知る大新聞社にいるという。景気はどうかと尋ねると、最近は購読者が減るいっぽうで、思わしくないのだと顔をしかめた。
 「TVやネットでニュースは伝わるからと買わないんだよ。ケチどもめ!無料の号外にはワラワラたかるくせに!」
 ここには書けないような言葉で、ひとしきり新聞を購読しない人々を罵ってから、彼はそそくさと引き上げ支度にかかった。セルフサービスで食器を下げるのを忘れていったのを片付けて追うと、帰りの飛行機に間に合わせるのに急ぐという。
 「ゆっくりして行けよ。最終で帰ってもいいじゃないか」
 「いや、デパートが開いている時間に戻って、食品売り場の試食で晩飯を済ませるんだ」
 別れ際、夕風に吹かれてクシャミをした僕に、彼は大事に抱えていたポケットティッシュのひとつを分けてくれた。「友達だからな」という言葉の温かみは万金の重みがあったと思う。まあその後に「A新聞、取ってくれよ」と付け加えられたにしてもだ。
 ただ、貰ったティッシュ(お金を貸してくれるサーヴィスらしい)はどちらかというと強度に重点を置いて作られたものらしく、二つ折りにするのにいささか苦労するものであった。なんとか鼻をかんだものの、その後ひりつきを抑えるために薬局で軟膏を求めねばならなかった。

 …とまあ、アート御大の軽妙洒脱には及びもつかない粗悪コピーであるが、いかがだろうか。ちなみに元ネタはA新聞の土曜版に載っていたコラムである。いい年をしたオッサン向けの紙面にこの節約?ばなしというのがあまりに寒く、今は購読をやめようかと検討中だ。
 だがこれでA紙の財政がますます思わしくなくなり、ために担当者が更なる珍案を出して世上に供することになったら心苦しい。それに、急場の防寒用品や掃除具(特に猫のゲロ始末)に新聞ほど適当なものは無くいずれにせよ購読は必要なのだが、ライバル紙の導入には相方の信仰が邪魔をする。縞模様の道衣を身にまとって禊をし、カーネル・サンダース人形を形代として川に流す習慣のあるこの信仰については、また日を改めて書いてみたい。 <もうネタ口調はやめれ

5月25日(日) 晴
 早暁、妙にすっきりと目覚めてしまい、1時間半ほど寝床で読書。するうちウトウトと眠くなり、再び置きだしてみれば9時少し前。何か頭がぼんやりして気だるい。無理してまで二度寝を決め込むべきじゃなかったなあ。

 ごそごそと、既に恒例化した屋内の片づけをしていたら、外でカラスの声がした。自慢じゃないが(って、ならんだろう>自慢)僕はカラスが好きである。もちろんスズメもヒヨドリもセキレイもコジュケイもシジュウカラもコゲラも(中略)好きなんだが、それらの「愛らしい」「可憐」などとは一段離れたところ、賢しく逞しい異類の貌と、人間の子供のような習性や仕草のミスマッチが実に好ましいのだ。
 で、声につられて出てみたら、大家さんの庭の木にそいつは止まっていた。成長サイズ、だが毛艶からすると結構若いらしい、ハシブトのオスである。眠い顔で出てきた人間を、あっちからも興味ぶかげに眺めている。
 野生動物相手にいかんとは知りつつ、餌をやってみようと思った。
 冷蔵庫からチクワを出してきて、ちぎって投げてみる。奴さんは即座にそれに飛びつき、ためつすがめつ転がして、大きな嘴でさくっと切り取った。鋏で切ったような切り口を呆然と見る僕を尻目に、気に入ったらしく口いっぱいに頬張って、そのままこっちにやって来るではないか。正確には、庭への階段をてってって、と1段ずつ上がってきたんである。で、3段下で立ち止まり、(鳥の常だが)首を傾げてこっちを見ている。
 ちょっと、猪口才である。
 もう1個投げてみると、これももぐもぐと口に押し込んだ。さらに1個。嘴からはみ出すほど咥えて、やおらばさりと飛び立った。巣へ持っていったのだろう。
 しかし、緊張感の無い奴だ。少なくとも、僕を恐れる気配はまるで無い。さすがに手からは取らなかったが、なんかこう、鳥というよりは野良犬みたいな印象だ。ええんかね、アレで?
 とか、自分の所業を省みずにぶつぶつ言ってたら、ばさばさと羽音させて奴は戻ってきたではないか。しかも、今度は一気に距離を詰め、首を傾げ口を開けて、あからさまにねだっている。
 結局そのまま、小一時間も付き合ってしまった。というか、なんとな〜く、遊んでもらったような気がするんだが。ええんかね?はオノレに言うべきことであったな。

 日中は片付けと買出し、それに水槽掃除。この3つ目は、年に2度の大掃除とあって、ちょいとばかり大ごとであった。まぁ本来は砂も生体も取り出してやるべきところを、流木と植物だけ抜いて底床クリーナーかけただけなんで、それでも手抜きの領域なんだけど。
 しかし水槽ってヤツぁ、己が手がけ養って、かつ室内から動かないものなのに、開けてみると意外なものがゾロゾロ出てきて驚かされる。たとえば死滅したと思ってた種類が生き延びてたり、時々見かけるな〜ぐらいに思ってたスネール類が続々と出現したり。ええ、後者はほとんど絶叫モノでした。連中用のゴキブリ?ホイホイなんぞがあれば大歓迎したいところである。って昔、その触れ込みで買った器具は全く役立たずであったが。
 それにしても、たかが素人の飼う60センチ水槽でこの有様なのだから、自然の川や湖、まして海なんざぁどれほどの驚きが隠れているのだろう。泳ぎ下手で潜水は怖い僕だが、深海探査とかやる人の気持ちが少しだけ理解できた気がした。
 いや、少しだけです。ほんの少し。絶対行きたくありませんので、そこんとこ宜しく。 <誰も連れて行かねーよ

 夜に入ってコレクション類をプチ整理。『謎の円盤UFO』と『ハリーハウゼンコレクション』の各食玩を組み立て、用意しておいたケースに納める。ううむ、見れば見るほどカッコいい。特撮中年にはこたえられないセレクションであるなぁ。
 残念ながら前者にはエリス中尉が、後者にはスケルトン(B)が欠けているのだが、まぁフルコンプせずとも十分に幸せである。来週は『スペース1999』関係を追加して、さらに業の深さを開陳するとしよう。

5月27日(火) 雨のち曇
 新しい職場の近所を探索していて、コンビニで「手塚治虫ミニヴィネットアンソロジー 第2弾」を見つける。え〜と、探してたのはこういうモンだったかな〜とか思いつつ、1つ買ってみた。海洋堂製、出来の良さはかねて雑誌などでチェックしていたものの、第1弾は全く目にせずに終わっていて少々悔しかったし、何より今回は『ふしぎなメルモ』3段変化が入っている。『トリトン』や『どろろ』もかなり欲しい。これが買わずにいられようか!
 で、ヒゲオヤジが出てしまったんですが、どうすればいいでしょうね?


 いや、一緒に場面を構成しているヒョウタンツギともども、手塚ワールドの重要キャラなのは認めますけどね。で、でも、僕ぁメルモが欲しかったんだよう!わぁん!

5月28日(水) 晴
 昨日の雪辱を果たすべく、勇躍国道を越えてコンビニへ。ってこういう張り切り方をする中年もどうかと思うが。
 早速また1個求め、自席に戻って開封。見事!メルモを射止めた。出来は最高。赤ん坊&幼児の愛らしさもさりながら、やはり大人の彼女の色っぽさはたまらないものがある。幼少時にアニメ観てドキドキしたことを思い出しつつ、持ち帰って飾るべく鞄に収納。
 ただ、このパッケージに重さ調整用のウェイトが入っていたのにはいささか驚かされた。確かに昨日のヒゲオヤジなんぞと比べると格段に構成要素が少なく軽いので、サーチが簡単なんだろうが…こういう形で阻止するってぇのは、なんか微妙にイヤな感じだ。まぁ、コレ目当てにうきうきやって来る中年(オマエだ)に大人買いさせるための作戦なのだろうけどな。あと、実際に目にしたことはないが、秤を持ち込んでまでレア者をサーチするという馬鹿者除けかも知れん。いずれにせよ、ラインナップから推して子供相手の対策でないのは明白なワケだが。
 今日は件のミニヴィネットの他、「世界の神話 第2集仏教神話編」「黒潮コメッコ 第2弾」それに「チョコQ 第7弾(日本の動物)」をゲット。特にチョコQはカエルスキーとして楽しみにしていたので、非常に嬉しいものがある。

 帰宅したら、相方も黒潮コメッコをごろっこ買ってきていた。どれも出来が良いうえにダブリが無いので嬉しい。
 世界の神話は、広目天。造形はなかなかだが、色が少し濃い目に寄ってる気がする。もう2つ3つは買ってみるか。お菓子がナッツ入りのチョコボールなので、コメッコと一緒に酒のアテにできて嬉しい。
 チョコQは…ええと、出てくれたのは嬉しい。が、さすがに夜にここまで甘いものは食べられないんで、後日改めて、ということで嬉しがりつつ就寝。う〜い。 <マジで飲んでいた

5月29日(木) 晴
 カーテン越しに射し込む陽光の眩さに寝ていられず、寝床から這い出す。あきれるほどの快晴。TVでは最高気温が26度になるなどと空恐ろしい予報が流れている。ナンですかいご隠居(誰)もう夏ですかい?
 洗濯に布団干しに最適の日だのうと所帯じみたことを思いつつ、汗を拭きながら出社。昼休みは当然のようにコンビニへ駈けていったが、日差しの強烈さには目も眩むばかりであった。起床からして太陽電池で動いているらしい僕だが、過充電は禁物であるのだな。うむ、マニュアルに書いておかねば。(注:そんなものありません。てか、あっても誰も読んでくれねぇし)



翌月へ




[ 銀鰻亭店内へ ]