店主酔言
書籍・映画・その他もろもろ日記

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6月1日(日) 雨
 台風の影響で終日雨。とはいえ小ぶりな台風が、日本北上の半ばで勢いを失ったものだから、雨粒こそ大きいが風はほとんど無い状態。まっすぐに地面にぶつかる軌跡を眺めるのはなかなかに楽しい。室内にいるか、汚しまくってOKな服に裸足で戸外に立てるときには特に。
 で、早起きしてそんな雨を楽しんでいたら、日曜朝の特撮コースを録画しそこなった。タイマーセットしていたものの、昨夜から電源を入れっぱなしだったのに気付かなかったのだよな。これも台風の被害にカウントしていいだろうか? <阿呆

 そんな雨の日にも関わらず、珍客がやってきた。去る5月25日に餌付けした…というか、餌を渡して遊んでもらったカラスである。ずぶ濡れにもかかわらず、庭木の梢で元気に呼ばわっているのが腕白らしくて愉快だ。いや、腕も何も、真っ黒ですけど。
 しかし今日はヤツの気に入りのチクワは無い。で、朝飯の残りのゆで卵を置いてみると、見事に咥えて飛び去った。結構重いと思うんだが、さすがのパワーである。
 しかし、その後の経過を見ていると、近くの川岸で分解して、黄身だけを草の間に丁寧に隠していた。
 それっきり、帰ってこない。
 何を考えてるカラス。それは食い物だって分かってるか?物陰とはいえ雨の中に卵の黄身なんて、明日になったら溶けて流れてると思うぞ。
 とは思ったが、いかんせん僕はドリトル先生ではなく、ローレンツ博士がソロモン王から受け継いだという指輪も持っていないのだった。今度長めの休みが取れたら、せめて「ききみみずきん」でも探すとしよう。

 かくて傘があっても遊びに出たくない怠け者として、午前中をダラダラと過ごし、これではいかんと発起して午後からは労働。例によって部屋の片付けと掃除、水槽のケアに植物の世話…って、なんか老人じみてるなあ。別にいいけど。
 で、掃除の途中ふと日ごろ触れない内窓に、白い影が映っているのに気付いた。窓を斜めに横切る線は、蜘蛛の巣にしては太すぎる。なんだろうと内窓を開けたら。
 窓に穴が開いてるよ、おい。
 線のほぼ真中、窓に対しても中央近くに、丸い穴が開いている。どうみても何かがぶつかった跡だ。過去の戦歴(っておい)を思い出すに、BB弾のように思われる。
 そういえば、数日前に窓の下で犬が激しく吠えていた。常ならぬ声に、窓を開けて周囲を見渡したが特に目に付くものもなかったが…もしかして、あの時か?しかし犬を狙った流れ弾にしてはあまりにも外しすぎだ。よほどのへっぽこシューターだな、ふん!青二才め!
 ってまぁ、真面目に考えれば、犬を撃って吠えられて飼い主の窓を狙ったってセンだろうけどね。ただ、この犬(アイヌ犬・3歳)は我が家のじゃないんだけど、いずれにしても、犬だの他人様の窓などを狙うクソガキには正義の鉄槌が必要であろう。ボウガン・スリングショット・火炎瓶を用意、あとは落とし穴に竹槍ぐらいで勘弁しといてやるが。大人をナメんじゃねぇぞ小僧。 <いや、それ大人のすることちゃうし

6月2日(月) 曇
 暖かくなってからこっち、早起きの日が続いている。朝日とともに起き、日が暮れると眠くなる、きわめて健康的なリズムといえよう。口の悪い我が人生の片棒担ぎ・ねこまには、野生の王国とか太陽電池とか矛盾した評価をされているが、まぁ気にすまい。どうせテキは寝たきり中ねいたたたたいたいいたいいた

 ((そのまましばらくお待ちください))

 ええ、とまあそういうワケで、ひとり目覚めた朝方には迂闊なこともできず、茶を飲みつつ読書というパターンができつつある。立派なジジイ見習というところ、早く隠居したいなぁとか思いながら読み了えた本。
 『怪しい日本語研究室(イアン・アーシー/著、新潮文庫)』
 著者名が「外人(とあえて書く)」なのに訳者名が無い。これだけで?マークが頭に浮かぶところだが、内容を読むとさらに驚かされる。カナダに生まれた人が日本語を使いこなすだけでなく、古典の「整備文」パロディまでしてのけるとは!著者来歴は本当なのか?『素晴らしき日本野球』のでんじゃあるめえな?
 …いや、本書の主題はそこには無いんだが、外国語オンチの僕としてはまずそこからが驚きだったのだ。しかも、まるで言語形式の違う日本語に魅せられたのは子供時代からの古代文字への興味からだという、そこらの経緯と比較論がまた実に面白くて、ついつい主眼部分を忘れそうになる。いかんいかん、ランニング姿でも襟を正して読むべき「日本語論」なのだから。
 もちろん「日本語の乱れ」がどーたらなぞという爺の文句なんかとは違う。根底に流れるのは「きちんと通じる、話して聞いて心地よい日本語を使おうよ」という、実に分かり易い主張だと思う。だからカナ交じりや半英語の造語に対する筆者の目は非常に優しい。対して、上に挙げた整備文やら社長の挨拶文やら政治家の言葉遣いといった「趣旨の分かり難い定型文」には手厳しく、ちょっと辛辣に洒落のめしている。
 実のところ、これは既に諸家が語っている内容ではある。そういう意味では同工異曲の謗りはあるかもしれない。ただ、外から来た者が、この地の人となってなお旺盛な好奇心と観察眼を失わない、その姿勢の上に書かれているという点で、ある意味ガイドブックのような視点を読者にも与えてくれる点は非常に興味深いと思う。
 む。やっぱり作者への驚きが最後に戻ってきてしまったな。ま、ぼてくり合うも多生は縁、どこかで誰かに出会い関心をもつきっかけは様々であろうってことで。 <冗談だからね

6月3日(火) 晴
 帰宅途上、相方からの頼まれ物を求めてロフトへ。ふと…というか、まぁ、いつものように(駄目な大人の巡回コースとして)獲物を求め食玩コーナーに立ち寄ったら、新しい製品が並んでいた。「懐メロクッキー(ブルボン)」と「タイムスリップグリコ・青春のメロディーチョコレート(グリコ)」のCDつき菓子2種である。
 以前にもこの手はあったが、それはたとえば映画やアイドルのキャンペーンといった、どっちかというと「キャラクターグッズ」だった。今回のは、音楽CD自体で楽しもうという企画らしい。とはいえ前者は全9種から中身が択べるので、あまり食玩ふうでなはい。要らないものは買わなくていい…って点から考えると嬉しいが、あまり数は出ないような気がするな。そこらへんはメーカーにも考えがあるんだろう。多分。つか僕が心配するこっちゃないですな。とか思いつつ、まずは1点手に取った。
 さて、対する後者は「オマケといえば」のメーカーだけあって、全22種(シークレット4種含む)がブラインドで入っているお気軽ギャンブル仕様。これも1つ求める。
 で、あくまで食玩として中身を比較すると…これはグリコの勝ちだろう。取り組み方が違いすぎる。
 発売当時のシングルをそのまま縮小したジャケットの、裏面には歌詞。内袋(取り出し口の切り込みも再現)に入った盤面にはレコードの印刷がしてあって、しかも触れると溝のような感触がするという凝りっぷり。歌い手には悪いが、ちょいとキワモノがかったミニチュアとしても楽しめる作りである。もっとも、我が家の住人の趣味たる1/6人形と並べるとLPサイズになっちまうが。
 対してブルボンは、シングルCDが紙袋に入っているだけ。これは寂しい。CDそのものはどちらもタイトル1曲だから、それのみを中身とみなす人にはいい…のかも知れないけど。
 ちなみに僕が買ったのは、ブルボンのはC-C-Bの「Romanticが止まらない」、グリコのはフィンガー5の「学園天国」だった。え〜と、これを青春って言われても。僕ぁ当時イタイケな小学生でした。

 あ、お菓子は両方とも美味しかったです。この点においては、どちらも買って損は無いッスね。

6月6日(金) 晴
 通勤車上、『その時殺しの手が動く(「新潮45」編集部/編、新潮文庫)』読了。
 シリーズ3冊目、例によって凶悪事件の追跡ルポ。怖いもの見たさか窃視の楽しみか、はたまた己の裡に棲む同種の異形への戒めか。いずれにしても、3つ目にほど近い内容を語っている解説子が、常には軽い口調でトンデモ人生を語る女性であったのが一番興味深く読めたな。結句、人の心に潜む歪が不思議に思えないってことで、それはそれで問題あるよーな気がしないでもありませんが。

 帰宅途上、ガシャポン「ぼくの小学校〜2時間目〜」発見。飛びついて回し始めたが、机×2、百葉箱×2と自分基準のハズレばかりで敗退。両者ともにパターン違いなのが救いだが、僕ぁ顕微鏡とかの理科室セットが欲しかったんだよう机は趣味スケールじゃないからいらないんだよう。こうなったら「おどうぐばこプレゼント(ボックスを開くと教室になる。机&椅子セット20個つき!)」にでも応募しまくってやるか! <って当たったらどうするのやら

6月7日(土) 晴
 週末恒例の片付け物の傍ら、『シャングリラ病原体(ブライアン・フリーマントル/著、松本剛史/訳)』を読了。非常に疲れた。労働しながらだったせいではなく、ひたすら読みにくかったんである。
 突発的な奇病の蔓延に挑戦するため、国境を越え団結したチームの活躍!なぁんてステロなものを読みたいわけじゃない(そういうの結構好きだけど)が、人と人の軋轢、色と欲の坩堝のようなエゴのぶつけあいばかりが延々続く爽快感の無さは読んでて辛い。不協和音の塊のような展開に疲れてしまい、『二十日鼠と人間』の冒頭に掲げられた言葉を思い出してはため息ばかり。ここまで嫌な人間像が連なると、却って主人公たちの清廉さのほうが不思議な印象になってしまう。
 あと、素人が読んでて「へ?」と思うような間違いを、小説の中とはいえプロ集団にさせるのはどうかなあ。それも、2度3度と重ねられると、いい加減呆れ、飽きてしまう。危機感を盛り上げる手段としては最低じゃなかろーか。
 それでも読みつづけてしまうのは、やはり冒頭で投げつけられるショックの大きさによるだろう。人生の盛りにある人が数日で老い、死に至るというのは実にインパクトがある。自分が年を重ねたことを意識できる人間であれば、誰しも戦慄を覚えずにはいられないと思う。ましてエイズ、エボラ出血熱、SARSといった伝染病の脅威を知る現代人なれば。また温暖化の影響で未知の「病原体」が出現という設定も、いささか安直ではあるけれど、危機感を示すには良いネタだった。寄生した相手を病ませ殺し共倒れするということではヒトこそが地球のウイルスだ、などと青臭い悟りを口にする気はないが、まさにこうして危険を招きつつ、かたや動植物を絶滅させることによって対処方法の幅を狭めてゆく人類の物悲しさをしみじみ思ったことであったよ。
 最後に、これは些細なことだが、訳者氏は細部にもう少し気遣いをされたほうが良いのではなかろうか。散文的な冷たい筆致は作品に合っていると思うけど、モノの名前なんかに誤解を招きそうなのが幾つかあって気になった。例えば「ベイユー壁掛け」は無いと思う、これじゃまるで民芸品だ。「バイユー・タペストリー」ぐらいWebで検索すればすぐに出てくるのだから、ぜひご活用願いたい。

6月8日(日) 晴
 居住する市のトップ再選挙の日。休日には珍しく早起きしたねこまと、近在の小学校へてくてく出かける。おお、運動会のお知らせが貼ってあるな。おや、最近のアサガオ栽培鉢ってぇのはペットボトルで自動給水とか出来るんですか。ぬ、近頃の子供は上靴もごっついスニーカーなんだ。とか周囲を眺めてるうちに投票終了。いや、投票自体は真面目にやりましたってばよ! <問われる前に弁解する奴

 市内のデパートに京都の物産展が来ているというので、その足で街中へ。一大イベントとして定着したYosakoi騒乱…もといソーランの最終日とて混雑は予期できたが、午前中に行って帰れば回避も可能だろうと踏んでのことだ。結果は、まぁ、そこそこってぇとこか。ハンズに立ち寄る必要があって大通近辺を通らねばならなかったが、ほんの束の間、人波に揉まれただけで通過できたし。かねて相方が欲しがっていた黄楊の櫛も買えたし、珍しい菓子も手に入ったし、もって良しとすべきであろう。しかし、帰宅後に何もする気力が無くなったってことは、やはり負けていたんだろうか。

6月10日(火) 晴
 『秘密-THE TOP SECRET- 2(清水玲子/著、ジェッツコミックス)』を読む。死んだ人間の脳から映像を再生して犯罪の真相に迫るという設定はもちろん、それをフルに活かしたストーリー展開が前作にまして面白い、実にもって読ませる。特に人以外の脳を見る最終話は、そこに現れた光景と、同じ場所を見ていた殺人者の、これから捜査官たちの前に見えるであろう画の際立つ対比が胸をうつ。感動と恐怖がないまぜになる、読み応えのあるラストであった。あと、後書きがひじょ〜にナイス。
 あえて難癖をつけるなら、少女漫画ファクター山盛りな特捜チームのキャラ設定かな。第1話がアレだったのだから、使用者(探偵役)を固定せず、この技術をめぐる様々な立場にある人々を描いて欲しいと期待していたってのもある。それに、やはり「年齢不詳の美形」とか「その美貌と才知に目が眩んで言うがまま」とかってぇのは僕には乗り難いシチュエーションであるのよ。この作者には類例が非常に多いしさ。
 が…ま、野暮は言うまい、著者はもとより少女漫画畑の人であり、かくゆえに美しい画面を描き出してみせてくれるのだから。ついでに言うと、そそけ立つようにグロテスクなナマナマシイものが、同じ筆致で描かれるゆえか不可思議な魅力をさえ醸し出していると思う。いや、僕はアブナイ奴じゃありませんけどもさ。たぶん。 <おい

6月12日(木) 晴
 『13羽の怒れるフラミンゴ(ドナ・アンドリューズ/著、島村浩子/訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)』読了。コージー・ミステリのシリーズ3作目、円熟の面白さである。推理要素はまるで無い(基本的に謎部分はシンプルだし、それを解くためのネタは後から後から出てくるので、読者はどこまでもフォロワーなのだ)が、あくまで人間関係ドラマ部分が楽しい作品なので、これはこれでOKだろう。
 とにかく、場面ごとの情景の描き方が上手い。軽妙な会話もあいまって、TVムービーのような映像が脳裏で鮮やかに流れる印象さえある。また、今回の舞台が独立戦争記念祭の再現イベントとなった故郷の町とあって、町をあげてのコスプレRPGみたいな状態に浮かれまくった人々、ことにもヒロインの「迷惑家族」がこぞって彼女を悩ませる内容がバラエティに富んでいて(かつ時代錯誤的で!)ひたすら笑える。不愉快系ではない、愛情あふれる「世話の焼ける」人々の中、頭脳フル回転で駆け回るヒロインの好ましさは言うまでもない。しかも、今回は前作のラストで登場した恋人の母親が、イベントの総指揮官として君臨しているのだ。プレとはいえど嫁姑、いえば宿敵の代名詞みたいなモンである。このバトル?の結末も本シリーズらしく、かつ先を楽しみにできる幕切れであった。表紙描きの坂田靖子氏の解説もためになる。うむ、久しぶりに満足であった!

6月15日(日) 晴
 ねこまと街へ。今日は駅前方面で日用品を買うつもりである。
 が、我々が揃って出歩いて、まっすぐ目的地へ行くわけがあろうか。いやない。かくてまずはヨドバシのDVD売り場で『仮面ライダー龍騎・EPISODE FINAL完全版』を予約。続いて玩具売り場を一巡、しかしこれというものを見出さないまま1Fへと降り、空手で出るも癪なこととガシャポンコーナーへ赴く。で、行ってみて驚いたのだが、ガシャポンマシンが3段重ねでずら〜っと壁のように並んでいるではないか。これだけあれば、拾い物のひとつぐらいあるだろう!いざや物欲神降臨!とは思ったが、新商品前の端境期らしく、さのみ面白いものが無い。強いて言うならバンダイ製のライダーソフビぐらいだった。555とオートバジンの他は、タイガ・ベルデ・ガイ・シザースという、なんとも微妙な…というか嫌われ者セレクション。
 僕「このラインナップなら、カニだな」
 ねこま「当然カニでしょう」
 と回して、1発でカニゲット。小さいながらポーズを微妙に変えられる、なかなか優れものの出来に気を良くし、続けて購入。ガイをゲットして引き上げた。
 しかし『龍騎』ライダーは、やっぱSDタイプの食玩ソフビで集めたいものだなあ。現時点で約半数が出ているので、続きも是非にお願いしたいもんである。

 日用品?ああ、そんなものも買いました。でもそこへ行くまでに巨大化した荷物(主に本)の上に積み上げて帰ったら草臥れ果てて、午後はほとんど寝たきりでしたけどね。

6月16日(月) 晴
 『半身(サラ・ウォーターズ/著、中村有希/訳、創元推理文庫)』読了。面白い、と単純には片付けられない、興趣深さと不愉快さとの入り混じった読後感であった。
 ある事件をきっかけに獄舎につながれた霊媒の少女と、慰問に訪れた貴婦人の、事件を間に置いたそれぞれの日記を繰り混ぜて物語は展開する。美しく若く無垢そのもののように見える霊媒に魅せられ、惹かれてゆく貴婦人。彼女はまた旧い時代の社会と境遇、それに何よりも自らの性向ゆえに孤独感を深めており、物語の主軸を成すその内面の葛藤・煩悶はひどく痛ましく、同時に眉を顰めたくなるほどに後ろ向きで弱い。そして眩暈を伴う下降感の果てに導かれる終局、読者はかける言葉さえ見失って彼女から目を逸らすしかないだろう。結句、人は己の牢獄の囚われびとであるにせよ、そこを訪うものの在り様は己の選び積み上げた壁の様相で異なるのだから。
 物語の筋や事件の真相は、中盤までで見通せると思う。がしかし、オカルト〜時代物〜心理劇、そして歪な愛の影を漂わせるピカレスクものと、さまざまな味わいに退屈させられないだろう。1800年代英国の牢獄を目の当たりにするような迫真の描写もまた…ええと、楽しいかって言われるとちょいと返答に困りますですが。

6月20日(金) 曇のち雨
 南に迫った台風6号の影響で、むわっと蒸し暑く天気も悪い。日が傾くとともに雨脚も強くなり、文字どおりイヤ〜ンな雲行きとなった。こういうときは験直しに本屋である。いや、別に根拠は無いですが。
 『からくりサーカス 28(藤田和日郎/著、小学館)』『猫は火事場にかけつける(リリアン・J・ブラウン/著、羽田詩津子/訳、ハヤカワ文庫)』『江戸町めぐり(稲垣史生/著、河出文庫)』『階層別・江戸の暮らしがわかる本(竹内誠/監修、成美文庫)』…我ながら相変わらずとりとめが無いな。
 電車の中で『からくり』は読了。因縁話は終わり、やっと本筋に戻ってケリをつけるまでの長い道を辿ることになりそうだ。いや過去話も悪くは無いんだけどさ、途中やたら端折ったり説明的だったりするのが読みにくいわ退屈だわで、作者の意図とは違う意味で読むのが辛かったんだよな。今後の「2年」も同じにならないよう、せつに祈る次第でありますです。
 あと3冊は今後のお楽しみ。とはいえ『猫』はすぐ読めても、残り2冊はまたも積読山脈を高からしめるのみのような気がするが。

 今日はまた『家蝿とカナリア(ヘレン・マクロイ/著、深町真理子/訳、創元推理文庫)』を読み了える。ネタと解決だけをみると、いかんせん前時代の知識と人間像、どうにも単純に思えるのは否めない。だが、エラリー・クイーンで洗礼を受けた世代としてはその古さこそが懐かしく、また味わい深い一品である。久しぶりに謎解きそのものより過程を楽しめるミステリだった。

6月21日(土) 晴のち曇
 ねこまに頼まれ取り寄せた本がアマゾンから届く。『ぬいぐるみ団オドキンズ(ディーン・R・クーンツ/著、 風間賢二/訳、早川書房)』と『新本格猛虎会の冒険(アンソロジー、東京創元社)』の2冊。昨日は己の読書領域のとりとめなさに呆れたが、たった2冊でこれだけ妙なセレクトをしている相方には勝てないな。特に後者のごときは理解すら不能だ。
 いや、だって「次にハレー彗星が来たら優勝だ!」とか言いつつ「ハレーは宇宙のどっかで他の天体にぶつかっちゃった」って話を嬉々としてするし、優勝の時に神輿代わりに道頓堀川に投げ込まれたケンタッキーおじさんの祟りで勝てないまま18年を過ごし、かつ今だにカーネル・サンダースは発見されてないってのも本人から聞いたネタだし。えーと、あの、阪神ファンってなぁマゾですか?それとも疑うことをもって信条とする不可知論者、あるいは永劫に救済のもたらされないことを心の拠り所とする不可思議な信仰に身を捧げているのでしょうか?

 疑念をとりあえず脳の片隅に押し込めて買い物に出る。ハンズで用を足し、帰り道に大通を選んだら、ボーネルンドのショップを見つけた。たしか北欧系の、シンプルかつ丁寧なつくりの玩具メーカーである。僕の守備範囲はせいぜい魚型のシロフォン(いや、買っても演奏できないけど)ぐらいとはいえ、友人知人宅の赤ん坊にはここのアイテムを贈って外したことが無いので所々でチェックしていたものだが、ここは初めてだ。よし、ちょいとリサーチ!
 と、店に踏み込もうとしたら、身の丈2メートルの熊の縫いぐるみが立ちはだかっていた。うお!実物大ッスか?プロポーションはいわゆるテディベアだが、それゆえ圧倒的な質感重量感に満ちみちていて、そんな可愛い呼び方ができるような気がしない。なんというか、自分のほうが玩具にされそうというか、そのまま分解されそうというか。森の中で本物の熊とこいつのどっちに出会うか選ばされたら、かなり長時間迷ってしまいそうというか。
 いや、その、実を言えばちょっとだけ欲しいなと思ったんですけどね。神様、僕にこいつを置けるだけの住居をお与えくださいまし。

 深夜、相方とふたり口さみしくなって外へ出たら、霧がたちこめていて驚かされる。僕らの居住区画は内陸部だし、そういう地形で霧の原因となるような広大な空き地があるわけでもない。変だ妙だと言い交わしながら帰宅したが、時が経つにつれ街灯の明かりに流れが見えるほどになってきて、ワクワクするほど不気味な雰囲気を醸し出している。これで遠くから悲鳴でも聞こえてくれば申し分無いのだが…って、そうなるとホラー映画ファンとしては即座に調べに行って2人目の被害者にならねばならんのだよなあ。うむ、考え物であるのう。<考えるな

6月22日(日) 晴
 早めに起き出し、特撮タイム。今日は『555』がそこそこ面白い。とはいえ例によっての偶然まみれなイベントの連続、脚本家の住む世界を疑いたくなる展開であるが。なんといいますか、文学で申しますと『以尺報尺』『から騒ぎ』の世界でございますな。日本の演劇で申しますと『君の名は』。如何に昨今リメイクばやりとて、いささか古びすぎてはおりませんかのう。
 まぁともかく、今回は主人公と馬フェノク君以外が皆風邪で寝ていたので、人間性を疑うような子供の苛め話も、また身勝手馬鹿を極めんとするラブラブ男どもも見なくて済んだのが何よりであった。それにまぁ、何より鶴フェノクちゃんは可愛いですな奇妙愛博士。ちなみに彼女が「海堂さぁん」と抱え込んでたのは抱き枕だと思いますですよ。って他人の日記と会話するのはよせ>わし
 後は、地底に沈んだ学校に現れた、真理の養父らしいシルエットが良い感じに引いてくれる。パパフェノク(仮称)は何者なのか、自称上の上社長は何故彼を殺さなかったのか、オルフェノクの王とは何者なのか、謎てんこ盛りで先が楽しみである。ええ、まぁ、放っぽり出されて尻切れトンボに終わらなければですけどね。

 さて一歩外へ出ると、朝から強烈な日差しが照りつけている。家族連れにはさぞや素晴らしい休日になるであろうと思いつつ、日ごろは職場に篭っていて日陰暮らしの大人が2人、目をショボつかせながら外出。目的地が親の家なので、なおさら気が重い。
 で、通りすがった時計台前で、バスの窓から面白いものを見た。
 黒スーツにサングラスの集団が、通りに面したマクドナルドにひしめいている。男あり女あり、いずれも若いが髪の色や体格はさまざま。何かのチームなどではなさそうだが、はて?
 と思ったらねこまが解説、あれは2ちゃんねら〜のオフだとのこと。『マトリックス』の敵役エージェント・スミスのコスプレで、街中の「ごっこ遊び」をするんだとか。
 匿名掲示板、いわばアノニマスであることを売りにしているところで集まった人々が、同じ遊びをしようと顔をさらして集まるのがそもそも面白いし、そこで取った形がコンピュータの擬似人格ってのがさらに興味ぶかいなぁ…という浅薄な分析まがいはさておき、かれらも囲む人々も異質な空間を楽しんでいるようだ。僕にとって2ちゃんねる本体はウォッチ場所であって参加したくはない(荒らしの存在も許容されることがどうにも気に障る)のだが、こういう「おバカを愉しむ」イベントは好ましい。ぜひ楽しく盛り上がって欲しいものである。今度何かあるなら、見物に行くとしようか。

6月23日(月) 晴
 30度手前という、当地には珍しい猛暑の日。北国の冬生まれの僕としては、終日会社に立てこもってやり過ごすしかない。冬将軍とも友好関係には無いけれど、衣服の調節でどうにかならん暑さは交渉しようもない敵…というか猛獣じみた印象がある。喰われないために、今年も夏じゅう逃げ回るのみ。いや、実際に逃避行(避暑)しようとまでは思わないけどな。つかそんな余裕ありませんて(涙)

 帰途、ロフト地下でワゴンセールに出くわす。アクセサリや文具、台所用具なんぞの無縁な世界と行き過ぎようとして、洋書の山を発見した。どこの文字が書かれてようが本の形をしたものが投売りされてれば通過はできない。さっそく突進。写真集やガイドブックの類が多かったのだが、その中からフランク・フラゼッタの画集『ICON』を発見できた。ハードカバーの価1000円、素晴らしくお買い得である。他にも数冊、これは手工芸関係の手引書を見つけてほくほくと引き上げた。
 今日はまた『北野勇作どうぶつ図鑑 その5・ざりがに(北野勇作/著、ハヤカワ文庫JA)』『北野勇作どうぶつ図鑑 その6・いもり(北野勇作/著、ハヤカワ文庫JA)』『家栽の人(魚戸おさむ・毛利甚八/著)』の文庫版7と8をゲット。なかなか好成績であったといえよう。非常に重かったという一側面は、まぁ置くとして。

6月25日(水) 晴
 昼飯を求めてコンビニへ行き、食玩の新ラインナップに出会う。北陸製菓の「アルプスの少女ハイジ とろけるチーズのプチパン」とフルタの「スタートレックフィギュア」。ついでにユージンのコンビニガシャ「たのしい、飼育当番。その2」もひとつ買って、意気揚揚と引き上げる。
 「ハイジ」では”アルムおんじ”ことハイジのおじいさん。慈愛に満ちた表情、炉辺に座り手をのべるポーズ、それに背景や周囲の小物のたたずまいもあいまって実に素晴らしい出来栄えである。実は菓子の味を試してみたくて買った(ハイジに限らず、日アニ系フィギュアは集めてない)のだが、これにはちょっと食指を動かされたな。とりあえず、炉の反対側にいるハイジは欲しい。
 かたや「スタトレ」は宇宙船コレクション。とはいえ、オールド第一世代の僕としては、欲しいのはせいぜい映画3作目『故郷への長い道』の時のエンタープライズぐらいだ。あれに瘻(英語読みのこと)を詰め込んでだな…とか思ってたら、1箱目でゲット。残るはネクストジェネレーション以降の異星人の艦であった。ついでのことに菓子は懐かしい風味のラムネ。ケミカルな味わいがなんともいえませんな。<誉めてない
 最後に「飼育当番」だが、青いバケツに貝が入ったものだった。説明書によるとアサリ。
 って…アレって学校やご家庭で当番決めて飼うようなモンなんすか?

 とかとか唖然と眺めていたら、相方からメッセンジャーのコール。彼女も「ハイジ」を買い、見事に”おんじ”をゲットしたとのこと。ううむ、以心伝心不義密通、息の合ったところをダブルおんじで世に示してなんとするやら。こうなれば、明日は何が何でもハイジをゲットしなくては、沽券にかかわるというものであろう。どんな沽券かは知りませんが。

6月26日(木) 曇時々雨
 今日も「アルプスの少女ハイジ とろけるチーズのプチパン」を購入。首尾よくハイジ&ペーターをゲットしたものの、3つ目がまたまた”おんじ”。トリオで頑固だトリプルおんじ。おんじストリームアタック。いやはや。
 と思っていたら相方から「また”おんじ”だった(>_<)」のメッセージ。ええと、つまり”おんじ”4人。おんじカルテットである。こうなりゃヤケだ、5人集めておんじ戦隊でも作るか?いや、いっそおんじ野球チーム(以下略)

 『猫は火事場にかけつける(リリアン・J・ブラウン/著、羽田詩津子/訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)』を読了。長く続いているシリーズとて過去には中だるみもあったが、今回はスムーズに読め、かつ面白かった。
 ただ、ミステリとしてではなく、小さな町の生活記としての面のほうが、ますます引き立っていたような印象はある。幾つかの事件を織り交ぜて描かれる地域の変遷、人々の交流、さまざまな催しなどを見ていると、移住して一員に加わりたい気すらしてくるな。謎解き?猫への主人公・クィラランの思い入れも過剰にならず、また親しみが湧いてきたし。しかしまぁ、新登場の脇役は特にポロッと殺されるのがシリーズのお約束なので、あまり心を寄せないほうがいいかもしれないが。
 さて本編、肝心な筋のほうはというと、最初からキナ臭い(いや洒落じゃなく)火事騒動。炭鉱後の遺構「シャフトハウス」を消したいらしい何者かの意図が見え隠れする中、シリーズ読者には馴染みとなった書店主の死とその後に焼失する彼の店。さらに事故に見せかけた殺人と思しきものが発生する中、常ならぬ行動をする名家の老婦人の真意は?と、これらが先に書いたようなイベントの数々、例によっての猫の奇妙な行動を織り交ぜて描かれる。
 按配良く落ちているヒントを拾いつつ主人公の後を追ってたどり着く真相は、かなり分かり易い部類ではある。が、先にも書いたように住民が互いをよく知り多くの行動をともにする地域社会が密に描かれているために、その中で起きる事件への痛みが眼前にあるかのような情感が伝わる。また「小さな町の腐敗を告発するには特別な勇気がいる」と述懐されることへの哀しみもしかりで、次作への期待も十分であった。次はどんな季節のムースヴィルに足を踏み入れることになるのやら、と呟いて、空想世界の旅人は数百年前の日本(『考証 江戸町めぐり(稲垣史生/著、河出文庫)』)へ向かうのであった。
 安住の地を得ようとは思ってませんけど、ちょいとめまぐるしいっすかね。

6月29日(日) 曇時々雨
 完結したのに買い置いたまま手をつけられずにいた『週刊 日本の天然記念物』を整理。冊子をバインダーに全て綴じ込み、フィギュアも組み立ててケースに収め、出来栄えの見事さにしばし眺め入る。もとよりシリーズ序盤から造形師・松村しのぶ氏の眼と手の産物には格段の冴えがあったが、後半になるともう神がかりめいたものさえ感じるなぁ。飛び立つ一瞬を切り取られたホタル、足取りかるく岩場を駆けてくる甲斐犬、背伸び立ちして鼻をうごめかせるカワウソ。さながら生きて在るかのようなその姿かたちは、幾度眺め返しても見飽きない。
 とはいえ貴重な休日にぼへぇと口を開けて時間を過ごすわけにも行かない。続いてチョコQの整理…て、やってるこたぁ同じですか?
 ちなみにチョコQも、チョコエッグとして初めて世に出た頃とは桁外れのリアリティで驚かされる。タコなんざぁ今にもふいっと泳ぎだしそうだ。グレードアップと共に分割が工夫され組み立てが難しくなってきているが、そこは流石の経験値であろう、ダボの形も実に判りやすく作り分けされている。しょせん手すさびモデラーの身でも、ここらの工夫は見習わなくてはならんなぁ。


翌月へ




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