店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2004.8

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8月1日(日) 曇時々雨

 30℃越えの3日間を経ていくぶん涼しくなった休日の朝、2週分の朝の特撮を眺め『ブレイド』が金色になっているのに爆笑する。カブラペンからオルファ(カッターね)のン10周年記念モデルに変身した〜!待てよ、刃(ブレイド)だからこれでいいのか?<たぶん違います

 例によって忙しく過ごした先週中に、読み散らした本を片付ける。中で面白かったのは2冊。
 『迷子のマーリーン(エヴァン・マーシャル/著、高橋恭美子/訳、ヴィレッジブックス)』は子持ちの未亡人が主人公。姿を消したベビーシッター(つーかハウスメイドですな)の謎と仕事上のトラブルに、同時に降りかかられた彼女の獅子奮迅っぷりがシリアスとコミカルをほどよくミックスさせて描かれている。著作権エージェントという(あまり本邦では目にしない)職業が緻密に、かつ退屈させぬよう描写されているし、謎もほどよい難易度、そしてご都合主義に流れずにテンポよく進行するストーリーの締めかたもナカナカ。上出来な短編TVドラマって感触であるな。
 ただ、シリーズ名として冠された「三毛猫ウィンキー&ジェーン」ってのは内容にそぐわない気がする。確かに猫は話の中をうろうろしてるが、あくまで猫らしく気まぐれに行き来して偶発的なヒントをもたらすだけなんだよね。つか、そもそも主人公の猫じゃないし。そこらへん、どうなのよ次回作?早く出せ。<を
 『珈琲相場師(デイヴィッド・リス/著、松下祥子/訳、ハヤカワ文庫)』は静かなる力作。宗教裁判まっさかりの時代の商業立国オランダに居る、戒律と閉鎖的(にならざるを得ない)社会の中で少し浮き気味のユダヤ人、しかも特殊業の相場師という複雑な人物を描いていながら、違和感なく物語世界に引き込む凄さ。派手な立ち回りも大殺戮も無いけれど、めぐらされた頭脳と心理の駆け引き、謎の深さは読み手を翻弄せずに置かない。また周囲の風景や人物のディテールもよく描けていて、下手な映画を観るよりも臨場感たっぷりであった。
 幕切れは哀しく沈鬱でありながら不思議な平穏さに満ちていて、レンブラントやヴァン・ダイクが描いた家族画(カンバセーション・ピース)の前でふと我に返った、そんな感覚がある。ちょうどさっきまで絵に見入り、その人物についてゆくりなく思いめぐらしていたような。目を逸らすことの難い思いを残しつつ、この主人公のようなオランダ在住のユダヤ人商人がやがて海の彼方の大国を買い取っていくことへの更なる空想に耽りながら、立ち去るとしようか。


8月7日(土) 晴時々曇

 先日オーダーした本だのDVDだのが一気に届く。こころなしか、最初に発注ボタン押した時より増えてる気がしないでもないでもないでもないよーな。この前ラインナップを書いてみた時に『R.O.D(Read Or Die)』のヒロインみたいだとチャット仲間に言われOVAを観たが、ジャンルも作家もお構いなしに掻き集め寄せ集めぎゅぎゅぎゅぎゅっと箱に詰め込んだあたり、果たしてあんな感じであった。請い願わくば僕にも、彼女の半分程度でいいから本置き場を与えたまえ!<って修正する気はないのか
 ま、部屋が狭くなるとか床が抜けるとか畳が腐るとか、さような些事にかかずらわってては本好きは務まらぬ。わっせわっせと開梱し畳の上に積み上げ、おもむろに枕をとりよせてその傍らに横になる。さーて読むぞ!

 といいつつコミックはそこそこに、今週の通勤の友だった『傷痕(アラン・ラッセル/著、匝瑳玲子/訳、ハヤカワ文庫)』を読了。殺人事件を捜査する刑事が現場に現れた多重人格者の女性画家に出会う冒頭から、イイ感じにテンションが高い。ギリシャ神話の神々を名乗る多様な貌の多様さ異質さ、その中にふと浮かんでは消える少女の声、それぞれに「傷痕」を抱えた人々が分裂した人格の謎と殺人犯をともども追いかける道筋の錯綜っぷりも読み手を逸らさない。
 難を言えばハナシが出来すぎだし、殺人犯についてはキャラも最期も分かりやすい上にステロという二重苦である。が、それゆえに場面がいずれも絵になるものがあり、ヒロインの創作を目にしているようでもあるのだから良しとすべきかな。


8月8日(日) 晴

 8月の第一日曜日。目覚めて青空を見たら、荷物を掴んで千歳へダッシュ。今日は航空祭だ!って、どっちかっつーと熱心なのはツレアイのほうであるし、それですら日頃の疲れで寝過ごして、入場前の渋滞にモロにぶつかってしまったのだけれど。いやはや、まだ薄暗い朝まだきに起き出していたのは昔のこったぁね。
 さて、今年は航空自衛隊も50周年とかで、間違っても戦場では使えないようなアニバーサリーカラーの飛行機がぞろぞろ並んでいた。これなんか、どー見てもウルトラマンである。うむ、めでたい。つか、おめでてーと言うべきか。
 
 今日はまた、5年ぶりにブルーインパルスが全機揃って演技を見せてくれた。T-4の旋回性能をフルに活かしたキレのある動き、極限まで接近してみせる迫力が、もう何とも言えず、届かないのを承知で拍手しまくる。風の加減も上々で、スモークが薄れて消えるタイミングすら心にくいほどであった。あ、下の写真は今年デビューの「ブルーインパルスJr.」ですけどね。
 
 しかしなんだかんだ言っても今の時局の暗い影はあり、千歳を母港とする政府専用機はイラク行きの兵員を輸送すべく時間半ばで飛び去って行った。振られた翼を見るさえ切ない。また当事者である米軍からの参加は、ほんの御印にホーネットとファルコンのみ数機。
 
 こんなふうに「のほーん」とハコ乗りしてる姿をもっと見たいよ「抜かずの剣こそ平和の誇り」だろ?なんぞと呟いてみる『ファントム無頼』世代であった。戦争なんざァお猿のジョージに任せておいて、みんなでヒコーキび遊しよーぜ!

 そんな思いで見上げた空のみ、ひたすらに青く。
 


 また来年。
 みんな、元気で。
 


8月12日(木) 晴

 今日から楽しい夏休み…ではあるのだが、日々激務に耐えてきた体がどーにも言うことをきかない。草臥れて動けないってんなら納得できるんだけど、リズムが身体に染み付いたのか分泌されたアドレナリンが溜まってたのか、動くのをやめてくれないんだよね。あたかも『赤い靴』のヒロインのごと…って、僕がやるのは舞踊じゃなくて、書庫でダンボール箱相手の立体倉庫番っすけど…って、汗っかきで上腕部だけマッチョなバレエダンサーを想像しちまったい。うひょーい。

 とか労働しつつ想像による自爆テロ(文字どおり)を仕掛けつつ、徐々に休日モードへ移行すべく『百器徒然袋 風(京極夏彦/著、講談社ノベルス)』を読む。京極堂シリーズ外伝の「探偵小説」、今回も史上例をみない(つーか本人に言わせるとこの世に只一人の)探偵・榎木津礼二郎が破壊の限りを尽くし悪党を可哀相な目に遭わせるという痛快な読み物になっている。例によっての薀蓄も読み易く、また今回、浮世離れした探偵の妙に可愛げな面も見えたりして楽しい愉しい。最近本編がどーもパッとしない分、こっちのほうが楽しみな気がしないでもないな。

 夕方になって、ようやく休日であることが納得できる気がしてきた。行水をつかって外へ出ると、そぞろ吹く風が秋めいてきている。まもなくボンダンスのシーズン、それを過ぎると本格的に涼風の候となるのだろうな。つか残暑は勘弁してください。今年の夏はあまりに本格的すぎて、たいがい疲弊しましたぜ。


8月13日(金) 晴

 夏休み2日目。ようやく「らしい」気分になってきたところで、真剣に本腰を入れ全力で前向きにダラけることにする。が、こういう覚悟を決めてる時点で、既に脱力に失敗してるワケであり、いつまで経ってもそれらしい気分にならない。
 これはもう、しばらくプールから遠ざかっていたのと同じように、徐々に慣らしていくしか無いだろう。「白いところが暖かい…」とか呟きつつ膝丈から入り、肩まで浸かって100カウント…いやもとい、顔をつけてまばたき、潜水、元のカンを取り戻したら水中を右往左往してみて、やがては海へ還ると。イア!クトゥルフ・フタグン!深みのものも大変だ!<嘘です

 てなことで、リハビリがてらゲーム。ものは例によって『サイレントヒル4』、全てのエンディングを目指してレッツゴー暗黒世界!
 …なんだけど、どうも盛り上がりに欠ける。ステージが何処も覚えやすいせいで、シンプルな「憶えゲー」になっちゃってるきらいがあるのだよな。綺麗に(かつオゾマシク)作られた風景をのんびり楽しむには空間の広がりがイマイチ狭いってのも痛いところだ。おまけにゴーストが出ると面倒だし。
 で、辿り着くエンディングも、どれも悪くは無いんだけれどびみょ〜に地味である。バッドエンドの最たる「21の秘蹟」なんぞ、ヤバげなシーンを一瞬入れるだけでずいぶん味が出たと思うのだけど。あとやはり、突飛なモノも用意しておいてほしかったな。シリーズのファンとしては、かなり期するところがあったので。
 雰囲気よし、構成よし、シリーズ中のエピソードとしての仕掛けよしの良品だけに、小粒感が惜しまれる、というのが総評かな。


8月16日(月) 晴

 盆栽が嫌いだった。
 本来自然で勝手に伸びる植物を狭い鉢へ押し込め、あまつさえ針金で括りつけ捻じ曲げなどして、いわば強引に畸形化するものとしか思えなかった。植物の纏足みたいなモンであろ〜と。だから子供の頃に婆さんに貰った銀杏は、その日のうちに庭に下ろしてしまった。ごめん婆ちゃん。
 それが変わったのは、やはり「マン盆栽」との遭遇あたりからだったろうか。ふと気付くと小鉢を求め実生の紅葉なんかを活けこんで、早う育てと日々睨んでいたりする。もっとも、その祖たるところの「お家元」は、既に違う境地に入ってる気がしないでもないし、鋏を入れるのは未だに潔しとしない。ここらは「ベランダー(c)いとうせいこう」の教化あってか。
 とまあ、そんなこんなで、まだ盆栽どころか木の形も成していないものを眺め暮らして日を送る。うむ、やっと休日らしくなってきたな!
 って今日で休みは終りなんだけど…なんかこう、海へ還り損ねたインスマウスの気分ですねえ。<どんなや!

 で、午後はねこまとふたりゴロゴロと、溜まったビデオ鑑賞に明け暮れる。とどめにDVD『王の帰還』で夜更かしし、劇場で萌えもとい燃えまくったセオデン王の勇姿に血を滾らせ、寝つかれないまま日記を書いている。ああ、この調子だと明日はボケボケだろうなあ。夏休みの延長戦はナシですか?


8月18日(水) 晴

 ネットで「吸血鬼ドラキュラ」の12インチフィギュアの予告をを発見。プロダクトエンタープライズ社によるハマー・プロ版、すなわちクリストファー・リー演じるところの似姿である。吸血鬼映画の初体験だったせいもあるが、優雅にして威圧的な姿、高雅な仕草が瞬時に獣性へすりかわる表情、ドラキュラ伯爵といえばかの人しか思い浮かばない僕としては寒いフトコロ顧みず迷わず予約、ぽちっとな。おお物欲神よ嘉したまえってんでぃべらぼうめぇ!<ヤケ
 しかしその後、誰のドラキュラを見ても彼以上には見えなかったんだよな。これはもう刷り込み効果だけじゃなく愛であろう。草分けたるベラ・ルゴシも、フランク・ランジェラもゲイリー・オールドマンもジョージ・ハミルトンも(って最後のはギャグだが)遠く及ばない気がするまでに、このイメージは変えられない。尊像を入手したら棚の一番高いところに祀りあげるべきかなとか、今からかなりワクワクしている。
 いや、まあ、実際にはたぶんバカなギャグにご登場いただくことになるのだろうけれど。それこそが僕の愛なので、もって瞑すべし伯爵。<不死者に言うべき台詞だろうか


8月19日(木) 曇のち雨

 仕事の用で某ヨドバシカメラへ。しかしふと気付くと、求めた部材類を抱えて玩具売り場に立っている。しかもレジ前で、手には『あっちこっちピンキーストリート(ホビージャパンMOOK)』があったり。うーん謎だ。たぶん岩手のほうから電波が飛んでたに違いない。
 とはいうものの、僕の好みは「アヒル口」ことPK001のみなんで、ついてるドール(というかヘッド)にはイマイチ関心がもてない。さくっと整理箱に放り込み、001を着替えさせてみる。いわゆる「追い剥ぎ」ってヤツっすね。
 で、本のほうはどうかっつーと…模型に詳しい人にはイマサラかな、って技術が紹介されている。しかし塗装・改造・パーツ製作に写真術までひとあたり齧ってあって、模型ビギナー向けとしても良書ではある。あと、ことにも溶剤臭い世界に縁の無かった女性には取っ付きやすい入門書であろう。いや待てよ、ネイルアートってぇ死ぬほど臭くてヲタ御用達ツール満載な世界もあるのだから、決め付けはイカンか?<それも決め付けだろがよ


8月21日(土) 晴時々雨

 長らく運営…つーか雨だれ更新を続けてきたFOXHOUND IRREGULARSを、しばし休業することにした。理由はいろいろあるけれど、一番は「更新できないこと」と「それを気に病んでしまうこと」。ファンとして看板を掲げてるのにゲームが遊べない状態で、ゆえにサイトの手入れもしねぇのは原作者さんに申し訳ない。とはいえそれを思い悩んで、楽しかるべき活動が苦行になっちまっては元も子もあったもんじゃない、ということだ。他の理由については…まあ、いろいろ想像してもらうとして。例えばキノコ型宇宙人にとりつかれて、胞子の発送業務が忙しくてたまらないとか。<なんだそりゃ
 それにしても、思い起こせば1996年、まだパソコン通信(ニフティサーブ)の時代にホームパーティとして発足して以来、約8年にわたってやってきたのだと思うと感慨深いものがある。幼少時から通知表に「落ち着きがない」「集中力が乏しい」「協調性に欠ける」「興味本位」などと書かれてきた僕が、最も長続きできた趣味といえよう。これはひとえに、一緒に遊んでくださった同好の皆さんのおかげになるものである。サイトのほうでも書いたけど、とにかく感謝しています。>ALL
 とりあえずコンテンツには少しずつ手を入れて、いずれここの地下室にでも再アップしようと思っている。とりあえず、床板を剥がして穴を掘るところから始めるとしようか。

 とこう言いつつ、現実の部屋のほうをせっせと掃除。かねて溜まりまくっていたSD仮面ライダーソフビを整理し、専用棚に収める。といえば聞こえはいいが、実はCDのスピンドルケースだったりする辺り、業の深いことである。これで空いたスペースに12インチフィギュアをならべるんだ ♥ などといったひにゃあマリアナ海溝並みの業ということになりますでしょうか素直に海に還るべきでしょうかくとぅるふふたぐん。

 今日はまた、例によってamazonから大量の書籍が届く。開いて最初に手にしたのは『コミックマスターJ 11(田畑由秋&余湖裕輝/著、少年画報社)』。今回は2作で展開される、ちょっと前の時事ネタが重い。が、手段はともあれ、考え方については僕には好ましい描き方オチのつけ方だ。ええと、ショットガンまで含めて。<手段コミじゃん
 まず新古本による著作権被害。これはもちろん憂慮すべきことではあるけれど、一度売れたら名前だけで書き飛ばす一発屋作家、コマーシャリズムだけで中身の無い紙の束を売りまくる出版社、旧態然とした運営で買い手のニーズを考えない問屋、かれらにはしっかりと考え直して欲しいものがある。まあ、もちろん、そういうモノを買わないだけの分別が読み手に求められるワケではあるけど…これは教育の問題かもね。少なくとも、分かりやすいキャッチコピーに引き寄せられて、古くは「マルチメディア」から「マイナスイオン」果ては「癒し」に群がる体質はどーにかせんと。
 続いて万引ネタ。電車に轢かれてペッチャンコになった万引小僧のせいで廃業に追い込まれた書店の実話が下敷きになってるが、よくぞ商業誌でこれを描いてくれましたという痛快さ。世界の中心で(笑)快哉を叫びたい。
 そもそも「万引」って名称はどーゆーモンかと。窃盗ですよカッパライですよ盗人ですよ?「たかが万引」として軽く扱うから、「今なら少年Aで済む」とガキが盗みをしでかすんじゃねーでしょうかね?即通報&逮捕&前科ベットリのコンボでOKでしょうが。
 ところで犯罪としては扱われないけど、昨今の本屋にはびこる立ち読み族にも、万引と大同小異に思えるようなヤツが多いよなぁ。床に座ってるサル、平積みされた本の上に荷物を置くクズ、もしくはそこへケツを乗せるゴミ。で、丸ごと読み終えるまで動きやしないんだコレが。これは立派な情報泥棒だろう。ものの分かった人間様なら必要な部分をさっと見て買うか買わないかの判断をし、他人の邪魔にならんよーに速やかに退くものだが、そんなことは脳の何処にも彫り込まれてないナマモノが多すぎる。貴様ら、脳みそあるのかよ?ってぐらいなモンですハイ。
 もういっそ、本屋はぜんぶ会員制にしたらどうかね。初期の会費を思いっきり高く設定すりゃ、脳みそレスな連中は門前払いできるでしょ。なに不平等?そもそも商行為ってことを忘れてないか公平馬鹿。情報の対価に払う金が惜しいなら、それこそ新古本屋か図書館へ行くか、口開けてTVでも観てやがれ。
 とまあ、怒り任せに書いてみた「会員制本屋」だけど、そこそこイケそうな気はするな。一定額以上購入したら割り引くとか、ポイントで還元するとかってことで、コアユーザーには受けそうだ。あとはそう、代わりに無料配送サービス完備、店内には安楽椅子を用意、あと喫茶コーナーを作って可愛いメイドさんにお茶を…は。なんかちょっと脱線したような。
 しかし、真面目な話、本屋の荒廃はひところの映画館を思わせるものがある。映像メディア同様、コピーがはびこる今日この頃(少々畑違いではあるけど、コミケで売られた同人誌がその日のうちにスキャニングされてネットに流れるご時世ですぜ?)このままだと本好きはネット書店に移住しちまう…って、元ネタの本をどこで買ったんだっけ僕?<おいっ

 とエキサイトしたまま掃除洗濯を終えたところでねこまが帰宅。なんとなーく勢いがついたままカラオケに行くことにする。とうに夜半を過ぎて、これはひょっとしてナチュラルハイってヤツっすかね?


8月22日(日) 晴

 例によって寝過ごす休日。つーか日付が変わってから特撮ソング連続熱唱は流石にコタエますわ。なに、熱を入れなきゃいいだろう?それじゃ特撮の魂が伝わらないじゃん!
 とこうバカを言いつつ、のたのた起きだして水槽のメンテ。近い内に移動を考えているので、そこらの部材や棚を物色すべく、街へと出かける。まあ、例によって某クスとかに寄り道して(主に連れが)散財してますが。

 で、ようやっと目標の店へ向かったところで、濃密な人垣に出くわした。歩行者天国になってるメインストリートを塞ぎ、幾重にも人の波が連なっている。何事かと思ったら、街頭の大スクリーンで中継されている高校野球の見物だった。そういえば史上初の決勝進出だったなぁ。みんなキラキラの目をしてスクリーンに見入り、さしも人込み嫌いの僕も、これに文句をつける気にはならん。ただ、互いに触れずにいるのが無理なほどの混雑中に煙草吸ってる馬鹿がいたのだけは赦せんが。キサマのようなヤツがいるから煙草のみの肩身が狭くなるんじゃあッ!と心中ひそかに百裂拳くらわしたもんである。
 ちなみに後で知った結果では、接線の末に勝ちをおさめ、優勝旗に津軽海峡を渡らせたとか。ひさかたぶりの暑い夏の締めくくりに相応しい大イベントになったねぇ。

 が、しかし、野球はおろかオリンピックにすら関心の薄いスポーツ音痴には無縁のこと。1丁ばかり迂回し、ハンズへ。60cm水槽を載せるに頃合の棚と、現在45cmに棲息している生体を移すのに頃合の水槽にめぼしをつけ、今日は底砂のみ購入して撤収。なにせ老猫用のミルクとかエサとか買い込んだので、他に持てないんですわ。次の機会まで安価なセット水槽が売れ残ってるといいのだが。

 帰宅後は猫をミルクで黙らせて『ケロロ軍曹』総集編。なにせ僕が観始めたのがアンゴルモア登場あたりなんで、相方ともども序盤の知識がまるっと欠如してる。そこらを補完すべく、気合を入れて1話からマラソン上映というワケである。
 しかしまあ、観るほどに濃いアニメですな。ガンダムネタはもちろん、他にも細かいところで広範なネタのパロディが詰め込まれ、また作画でのギャグも多く、作り手が楽しんでるオーラがひしひしと伝わってくる。近来稀なる上作であるな。まぁ、最も強力なのは、一種洗脳ソングの趣さえある主題歌だけど。あ、雷鳴っても隠すヘソが無いっ♪<洗脳完了


8月24日(火) 晴

 例によって遅い帰宅後、晩飯の下ごしらえ(昨日のカレーを温めるだけ)しつつヒロツさんちのチャットに潜ったりしていたら、電話が鳴った。カレーの製作者当人からで、交通事故に遭ったという。場所を聞けばすぐ近所、自分で電話がかけられるなら頭が割れていることもあるまい、待てと言い置いて自転車に飛び乗る。
 現場に着いてみると、通勤鞄であるところのリュックを背負って、運転手氏とふたり道端にぽつんと立っているねこま。まず状態を聞くと「足が痛い」という。なんで立ちっぱなしになっとるんじゃ〜!鞄も下ろせ馬鹿者〜!
 およそ緊急事態には、その人間の最悪の面が表れるものである。よってもってパニック映画が面白くなるワケだが、そういうわけで僕はそれから数分間、2人を相手にとにかく怒った。最初に会社に連絡したという相方に怒り、救急も警察も手配してない事故相手に怒り、かつは2人の反応の鈍さに怒りまくったのである。つまるところ、この鈍さがかれら共通の緊急事態への反応だったワケで、それを妙に冷静に面白がっている観客も自分の中に居たのだけれど。
 かくて人生3度目の救急車に乗り、病院へ。ちなみに前2回は、それぞれ胃痙攣とバイク事故で、自分がストレッチャーに載っていたのだが。今回は座っていられたので、揺れる車中でクリップボードにせっせとペンを走らせる救急隊員氏の妙技をはじめ、中の設備をじっくりと拝むことができた。それにしても10数年前と同じく揺れますねコレ。患者が乗り物酔いしそうになってますが。
 で、状況を鑑みるにさのみ案じる必要も無く、相方は多数の打ち身のみで異常なしとのお墨付を戴いて病院を後にすることができた。どだい、幼少時にトラックとダンプに各1度ずつ撥ね飛ばされたような女が、よしランクルとはいえ乗用車如きに負けるワケが無いのである。それにやはりアレだな、クッションになる部材があっちこっちについていうわなにをするやめgskdgdwkq

 と、クトゥルフものだか2ちゃんねらーだか分からん終わり方をするのも一興なのだけれど、ちょっと気になっているので、書きとめておく。
 近年、この街の交通マナーは悪化の一途を辿っている。右左折するのに一時停止せず車の流れ(つまり右側)だけを見ながらずるずる〜っと側道から出てくる車の多いこと。また発進時に碌に確認しないものもよく見かける。現に今回の運転手氏も、友人とやらに手を振っていて前を見ずにアクセルを踏んだらしい。
 こうなると、相方のように自動点灯ライトやフラッシュタイプのLEDを装備していてもほとんど役に立たない。まして無灯火で夜道を走る馬鹿者は…とまあ、かれらは覚悟のうえだから良いとして、覚悟が無い人間が身を守ろうと思うと、あとは反射神経を鍛えるしか無いワケである。ポーズのためにお付きを従えてチャリ通ごっこしてみせるような行政が屁のツッパリにもならんことは目に見えてる、あとはもう、轢いた側がダメージを食うように武装または地雷でも抱えて走るのか?
 アルキ族とクルマ族の不毛な戦いを描いたキングの短編が思い起こされてならん夜更けである。まあ、我らチャリンコ族がそのどちらに属するものなのか、かのホラー作家は何も示唆してないけれどね。


8月28日(土) 晴

 相方に付き合って病院へ。形としてのダメージ(つまり打ち身青アザの類)はほとんど消えつつあるのだが、腰がだんだん痛くなってきたらしい。負傷箇所をかばって妙な歩き癖がついたせいだと思うけど、このテのトラブルは分からんからねぇ。と、渋るヤツをレントゲン室へ押し込み、X線をどかどか浴びせて貰った。悔しかったら緑色になって巨大化でもしてみやが…いや、なんでもありません。ありませんってばよ!
 ところで病院にいると、あたりの風景についつい錆まみれのテクスチャーを重ねて見ている自分がいる。うーむ、どーしたもんだか。『サイレントヒル』やりこみまくったおかげで、あのゲームの情景に現実で最も近い施設がスムーズに脳内変換できちまうんだよな。あ、あそこにバブルヘッドナースが!
 ねこま「失礼なことを言うなっ!」
 す、すいません看護婦さん…女ハルクに苛められてるんですが助けてもらえないでしょうか?

 帰宅後、録画しておいた『ケロロ軍曹』を観る。例によって2人あははと大口開けて笑った後エンディングを横目にしていたら、我が家の一押しキャラ、シブキメなのにハードボイルド・ラヴで「俺の知ってる夏美はそんなダジャレを言うような女じゃな〜いッ!」で甘酸っぱい青春で「修正してやるッ!」と叫んでもまとめて黙示録撃…なギロロ伍長の声を中田譲治氏がアテていることを(いまさら!)発見。
 中田譲治氏といえば、サー・カウラーである。いや、本人どう思っておられるか知らないし役者に固定イメージを持つのは失礼と承知してはいるが、こころ正しい特撮モノにおいてこの印象は覆るまい。少なくとも僕にとっては、ハカイダーと死神博士に次ぐカッコいい悪役として記憶に残ってるんである。フラッシュマン自体はさっぱり残ってねぇんですけどね。それがくつがえ…カエ…カエル。さ、サー・カウラーが…カエル?赤ダルマさん?わはははははは。ひーっ。
 これまでも声と状況のギャップでさんざん笑っていたものが、この知識のおかげで更に増幅されることになりそうだ。いっそ危険な気すらしてきたのだが…。そもそも、知人からコミック2巻借りてきて、はっと気付くと全9巻を買ってしまっている辺りが最も危険だっつー説はありますが。

 『蛇の形(ミネット・ウォルターズ/著、成川裕子/訳、創元推理文庫)』読了。1作ごとに綾なす謎もて幻惑してくれる作者であるが、今回も期待は裏切られない。も、ヒキが強いのなんの、先が気にかかるあまり終業時間前に会社を飛び出したくなったことが何度あったか。<電車専用かヨ
 謎の中心は、精神に病を抱えた孤独な女性の死にある。が、現在進行形の物語と数多の書簡で形作られる20年前の事件は既に事故として処理され、物理的な証拠を手にするすべもない。動機をもつ者は掃いて棄てるほど居るけれど、かれらを問い詰めるほどに現れるのはアリバイばかり。さらに、この絶望的な状況で、けれど最も深い謎は事件を追う主人公の動機そのものにあるというのが読者をリアルな疑いの淵へと引き込まずにおかない。怨嗟?嫉妬?憎悪?それとも己を立て直すよすがとして?でなければ…貴女が殺したのか?
 と、ふと「女性」ゆえの動機を探している自分に気付いて愕然とする。これこそ物語の中に歴然と立ち塞がる差別の忌まわしい影ではないかと己に問いつつ、辿り着く結末…は、ある意味卑怯な隠し球、小細工的な技である。なんつーかその、浅田次郎的狡猾といいますか。しかし疑問が一気に氷解する衝撃とあいまって、これには素直に泣かされちまいました。
 ただ、そうして心動かされる物語にあって、なお差別に近い「区別」を必要悪として是認する僕がいることに、一抹の寂しさをもおぼえるのだけれどね。脳を病んでしまった者や心根賎しく育ってしまった者に哀れを感じるには、たぶん僕は偏狭になるべく時を重ねてしまったのだろうな。




翌月へ






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