店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2005.1

 

 

 

 

 

 

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1月1日(土) 

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしく。

 な〜んてことを日記の冒頭に書く、イコール年賀状ができてないんである。しかも昨夜はマシンの立ち上げもせんと早々にダウン、朝は寝過ごしてメールも発信してないときたもんだ。ついでに戸外を埋めた白一色におそれをなして外出も無し、どころか寝床でTVに落ちついたし。
 一年の計は元旦にありとかや。今年もぐーたらに成り行き任せで過ごすことになりそうだ。いや、流れで決めてはルーズに過ぎよう、ならば斯様に誓うということで。<余計に駄目やん

 朝食&昼食兼用のぜんざい食いつつ、念願の『METAL GEAR SORID 3 SNAKE EATER』プレイに突入!したかったんだが、ビジーの波を抜けてきた疲れがどうにも抜けぬため体力の要りそうな本編は保留。まずは訓練がてらオマケの「サル捕獲」を試してみることにした。
 しかし、これがなかなかに難しい。操作に慣れるまであっちへこっちへ盲滅法に走り、意味もなく前転し、無駄弾を撃ち、挙句サルに発見されドつかれるスネーク。うーん、カッコ悪い。つか取説読もうな僕。あと自分で操作するキャラを見失って「うーんカモフラって有効」とか呟くのもヤメレ。
 それでも、アンブッシュでごそごそ這い回ったり、樹に登ってみたりぶら下がってみたりしているうちに、昔取ったナントカでアクションの自在さを楽しめるようになってきた。さらに今回、そこから主観視点で見る風景が目に愉しい。かつて夏の日、藪の中を息を殺して這い進み、蜘蛛の巣に顔突っ込んだり青大将に出くわしたりしつつ敵の背中に狙いを定めた日が蘇る。さらに見上げる木漏れ日も美しく、タイムカウントそっちのけでぼや〜っと眺め回して過ごしたり。まあ、本編ではこんな余裕は持てないだろうし、大目に見てくれスネーク。つか蹴るなサル!
 とか遊び呆けることしばし、そろそろ本編に入ろうかと思ったら、肩がばりばりに張って眩暈がする。いたしかたなく寝床へ戻ることにした。ではまた明日、ゲッチュ!<それ違う


1月5日(水) 雪のち曇

 仕事始めとて、ぼへーと出社。山と詰まれたミッションの山にも動じない落ち着きっぷりに我ながら感動…て、実のところ怠惰にごろごろしまくって過ごした正月そのままのテンションを維持してるだけですな。要は正月ボケ。
 しかし、ボケなるままに夜半まで働いても、さのみ問題は無い様子。つまり社内一同、打ち揃ってボケボケなんじゃあるまいか。こんなんで今年を無事に過ごせるのか一抹の不安を覚えつつ、凍った路面をペンギン歩きで帰る身であった。

 ところでペンギンといえば南極である。ということで奇しくも今日は年末から読んでいた『面白南極料理人(西村淳/著、新潮文庫)』を読了。あ、全然奇しくないですかネタ振りが強引ですかごめんなさい。
 まあそれはさておき、以前、確か新聞でどっかの馬鹿が「閉鎖環境で無いので『物体X』が怖くない」とかのたもうていたことがあるが、一歩外へ出ればマイナス40℃というのは立派すぎる閉鎖環境、なまじ暫く歩けたりするから絶望度はより高いのではと思われる。なにせ犬の餌をやりに出て行方不明になり、数年経って発見される土地、なまじ同じ地上にあるだけ宇宙よりも始末が悪い。それが、さらに極寒のマイナス60℃、ウイルスさえも生きられない環境といえば、その深刻さ緊張感は只事ではなかろう。
 ない。筈。で、ある。
 が、しかし、筆者とその目に映る「大雪原の小さな家」ドーム基地の一同にはそんな気負いはまるで見られない。バナナで釘を打ち放題、みたいな肩の力の抜けた自然体のオヤジ集団が、凍てつく世界でドラム缶風呂に入りジンギスカンを楽しみ、採算度外視のものすごい豪華食材による家庭料理をぱくつく。そんな日々の風景が闊達な口調で語られていて楽しい楽しい。ついでに大雑把料理のススメなんかもあったりして、実用書としてもちょっぴり嬉しかったりして。あ、もちろんマイナス60℃の世界を活写した極地調査隊の活動も記録されてて読み応えあり。
 せいぜいマイナス10℃前後の世界で暮らす身として、座右に置きたい良書であった。チャット仲間に薦めてくれたTAKO'Sさん、ありがとう!


1月7日(金) 曇時々雪

 今日から何を読もうかと積読棚に手を伸ばし、『死神とニ剣士(フリッツ・ライバー/著、浅倉久志/訳、創元推理文庫)』を取る。懐かしき物語を読み易い新訳で賞味できるのは殊のほか楽しみであるのう。ただ、難を言えばこの表紙はどーにかならんべか。まるっきりイメージ合いませんよ末弥純氏。
 1巻目はまだ青少年時代の話だから良しとしても、この巻以降のニ剣士は中年にさしかかり、怠けてるうちに太っちまって船酔いゲロゲロ、とかそういう話も出てくるんですぜ。つーかそもそも二人とも美形キャラじゃないし。編集者にキーワードだけ聞いてちゃっちゃとヤッツケました、みたいな構図とタッチは賎しくもプロの仕事には思えない。デビュー当時「モノクロ描けば天野調、色を塗らせりゃ生頼ぶりっこ」だった人が天晴れ己の画風を確立したと思ったらコレてぇのは情けなくありませんか。画集1冊持ってるレベルのファンでさえ、しっかりじっとり泣けますけど?

 昼食を調達に出て、ユージンのコンビニガシャ2種類を見つけて購入。まずは「セブン-イレブンのお弁当&おにぎり Part2」。ほぼ1/6スケールの弁当(ちなみにゲットしたのは豚丼とソース焼きソバ)とお茶のミニフィギュア、前シリーズ同様に出来は上々である。人形に持たせると顔ほどあって使えないオニギリも、今回は1種類だけだし。あ、でも納豆巻もちょっとアレだな。もし当たったら恵方巻に改造するべか。
 もう一種は「世界のお守り動物園」。動物をモチーフにしたお守りを、結構忠実にレプリカしている。手にした「ジューベック(ポーランドのイースターエッグ)」は塗りも細かく実に美しく、非常に気に入った。だけどアレだよな、卵って動物なんだべか?あとシークレットは人間、しかも物欲神のような…ま、本能ならぬ煩悩優先ってことで動物仲間に入れてもらっていいのかな?

 というようなモノを買った後で、実はよさげな耳掻きを見つけたのだけれど、商品名を見て愕然「いや〜快適!」オヤジだ、オヤジギャグここに極まれり、よしんば開発者が社会に出たてのうら若い娘さんだとしてもその魂はオヤジだ…と脱力しつつ、相方に見せびらかす誘惑に負けて購入。ちなみにオヤジの魂が呼び合ったとか言われました。なして?

 夜、『ヘルシング 7(平野耕太/著、少年画報社)』を読む。追い詰められ殺戮される傭兵たちのドラマは戦争映画などではありがちのパターンなのだけれど、死とそれを越えるものを前にして描かれると一種独特な悲哀を帯びる。上手いな〜。あと吸血鬼なる存在について、古今のそれをつき混ぜているらしい設定の片鱗が見えてきたのも興味ぶかい。与えられた血の意味あいは『吸血鬼幻想』のアレですかね、キュウキツキ…なヤツ(コーンブルースの『心中の虫』)。今後どんな存在がそこに立ち混じるのか、また半年ばかり待ってみようか。


1月8日(土) 雪のち晴

 奇妙愛博士ほか秘密結社ゴルコムの皆さんの北海道侵略ツアー第3弾を迎撃すべく、札幌駅へお出迎え。お昼のラーメンを済ませた後はJRタワーのホテル35Fのカフェでお茶。おりしも、降り続いていた雪の晴れ間にあたり、差し初めた陽光にキラキラと光りながら街へと降りしきるさまが何とも美しい。いや〜、地元民にも眼福であるのう。
 ホテルへ移動し、皆さんお揃いになったところで酒席へご案内、しかるのち街中にある某温泉へお連れして旅の疲れを癒していただくという流れで今日は幕。明日は寒風吹きすさぶ山に出かけるので血行を良くして備えようという思惑もあったりするが、まぁそこらは腹のうち脂肪の中である。
 というか、明日から気温が下がるようです。皆さん、お覚悟を。


1月9日(日) 晴

 長期予報を見事に覆す快晴。アリアドネ総司令閣下のおうちの某たれの超能力だろうかと思いつつ、ゴルコムの皆さんと大倉山へ。おりしもジャンプ競技会の中日だったそうで、もうちょっと早ければテストジャンパーの勇姿が拝めたのだが、惜しいタイミングで間に合わず、残っていたのはマーキング用?の笹の葉が散らばる30度の雪面にスパーダーマンのように張り付く整備の方やTVクルーばかりであった。

 まずはジャンプ台の麓に建つ『ウインタースポーツミュージアム』へ。読んで名の如く、冬期スポーツの歴史を展示する博物館であるが、面白いのは代表的な競技のシミュレータを用意しているところ。スピードスケート、ボブスレー、クロスカントリースキーなど体力消耗というよりは酷使型のものに次々とチャレンジ、足取りが危うくなったところでここのウリであるジャンプシミュレータへ。巨大な筐体に入り、ハーネスで身体を固定、ヘッドセットを装着するという、一昔前のヴァーチャルリアリティ映画みたいな代物なのだが、さすがにプロも使用するというだけあって作り込みは半端ではない。頂上から見渡す風景、えいやっとジャンプした瞬間重みを増す足元、顔にあたる風、それらがあいまって非常にスリリングかつ爽快である。疑似体験に過ぎないのは分かっているけれど、本物にハマってしまう人の気持ちが十二分に想像できるものであった。いずれまたチャレンジしたいものである、いや本物はパスですが。

 その後、リフトに乗ってさっきの風景をリアルで楽しむ。先生に引率されて訪れた子供の頃はこんなもん無かったので、わっせわっせと徒歩で登ったもんだがなぁ…と相方ともども回想しつつ揺られていたら、斜面の中頃にある踊り場状の台の横手に、こんな標識が貼られていた。
      Oノ
      ノ\
       |\
 「落下注意」って、どう見ても踊る人形か某ちゃんねるの棒人間である。妙に楽しげでさえあるそのポーズに揃ってツボを押され、周囲に轟く馬鹿笑いをしてしまった。雪崩が起きたら僕らのせいだよなあ、雪解け時期には来るまいぞ。とか言いつつ、スーベニアショップで似たようなデザインのTシャツを見出してまた大笑いしつつ購入する原住民なのであった。うう、次はカメラ持ってこよっと。<どこを見てる

 夜はお約束にジンギスカン。羊の油に被爆しまくったところで今日も風呂。いい頃合に茹であがって夜半に帰宅し、心地よく熟睡した。うーん、ガイドばかりが楽しんでいるような気がせんでもないのう。いいんですかねこれで?


1月10日(月) 雪時々晴

 ペコポン…もとい北海道侵略ツアーも最終日。皆さん楽しんでいただけたのかなあと案じつつも、つい気に入りの店へお連れしてしまう自分。今日もスープカレーならここだ!と思い決めてる某店へご案内、かなりボリュームのあるヤツをご賞味いただいた。素揚げしてる野菜がね!スパイシーなスープがね!と要らぬ弁舌を振りまきつつ、重いオナカを抱えて駅へ。ここでも時間つぶしについつい美味い喫茶店をご紹介しちまい、入店するのに待ちをくらうという本末転倒な結果になったりなんかして。うーん、駄目だ、僕ぁガイド業に向いてない。<いや仕事じゃないし
 とまれかくまれ、雑踏の中に笑顔で去ってゆかれる皆さんを見送って、しみじみと「ああ、楽しかったなあ」とねこまと二人頷きあったのでありました。また会う日まで、お元気で!

 …って、ネットではいつでもお会いできるんですけどね。

 相方と2人、その足でハンズへ。ここしばらく不調だった水槽のメンテ用品や細々した文具を整えるだけのハズが、両腕に重荷をぶら下げて玄関を出るハメに。何故だ。何が悪いんだ。ああ、そうか、ゴルコム名物「衝動買いの女神様」が僕らの頭上にも降臨したもうたのだな。ということで更に深く頷きあいつつ帰宅し今日は幕。明日からまたビジー漬けだ!


1月14日(金) 晴

 『東京物語(ふくやまけいこ/著、早川書房)』読了。当時大好きだった絵描きさんの、既に入手できなくなった作品を届けてくれた出版社には感謝あるのみだ。
 どのぐらい好きだったかっつーと、畑違いにもほどがあるJUNEを購読してる友人から毟り取って4コママンガ読んでたくらい。あと、某メージュの付録の「となりのトトロ」トランプをまだ持ってたり。しかも未開封!もったいなくて開けられない!<おいおい
 まあ、そんなこんなゆえ話もほとんど記憶していたんだけれど、読み返すと往事よりもしみじみと気持ちが和らぎ、思わずほろり。なんつーか、本当に精神の底までねじれちまったような悪人がいないという有り得なさなのに、此処から行けそうなほど近く思える世界なんだよね。空気の匂いを確認しなくても深ぶかと呼吸できそうな安心感にひたされる、この読後感はやはりいいなあ。
 しかし、最終巻に入っていた番外編には違う意味で驚かされた。ストーリーはよしとして、絵柄がまるで違う。柔らかで、かつ弾むような強さのある、あの線はどこへ行ってしまったのか。描き下ろしのほうではほぼ復活しておられたようだが、いったい何があったのだろうか。もしかして腱鞘炎とかそういう方向?ご本復あったのなら、また描いてほしいなあ、特に4コマ!<何か間違ってる


1月17日(月) 曇

 めでたくもありめでたくも無し、40と1回目の誕生日。境界線を一歩踏み出してみても何も変わらぬ風景ではあるが、年々歳々何とやら、我が身世に経る眺めせしまにというところであろう。いやホント、最近めっきり疲れ易いですわ。

 ということで、ひとつスポーツでも!というのが健全な中年なのであろうが、僕ぁ生まれてこのかた41年を通じ不健全なる文弱児である。とりあえず指先とアタマだけ運動させるべ、と『METALGEAR SOLID 3 Snake Eater』本編に突入。発売日からまるっと1ヶ月経過してようやくマトモにプレイだなんてファンサイトまで持ってた身にあるまじき怠慢ぶりだが、ま、その間せっせせっせとサルゲッチュして腕を磨いていたということで。ちなみにモードはVERY EASY。<磨けてないやん

 さて序盤。いきなり3回死にました。
 まずは沼地で「おお、ワニだワニがいる、どーれ観察でも」と双眼鏡持ってたら…沈みましたねあらビックリ。よりによって沼のど真ん中でウォッチングに励んではいけませんな。ではと気を取り直しゆるゆる歩き出したら、うっかり長距離コースを取ってしまい、また途中でぶくぶく。へっぽこ過ぎるぜ、ジャック。<お前だ!
 3回目は、吊り橋を強行突破中、群がる敵にローリングアタックしていたら弾みで外へ飛び出した。すばやくエルードし(ぶら下がっ)て事無きを得たと思ったら、ボタンを押し間違えて手を放しまして。ええ、こう、キングスフィールドばりに(プレイヤーが)叫びつつ落下。
 ええと…転職してもいいかな、ゼロ少佐?

 とか言いつつも(さすがにレベルの低さに助けられ)さくさくと先へ。話は今のところ騙し騙されなエスピオナージのお約束を踏みつつ、裏の裏に裏を求めたくなる謎めかしが心地よい。いや、主人公にしたらそれどころじゃ無いんだけど…と、ふと気付くと、『スナッチャー』『ポリスノーツ』『メタルギア(1&2)』と遊んできた小島監督作品において、最も主人公に気持ちが添うものを覚えている。オヤジキャラとの齢の近さはさておいて、己のものでない世界に主観で立ち入るに際し、既存の背景が必要最小限であるのがまず大きいのだろうな。過去の作品においては、人生まるごとが失われたギリアン・シードはさておき、ほかの主人公の多くは付随する設定や周囲のキャラクターとの会話に、時々馴染めないものを感じて冷めることもあったのだ。
 また今回は、話が進むにつれ周囲のキャラクターに結構魅力を覚えているのもポイントが高い。特にパラメディックとの食糧談義?が実に愉快。先回の通信担当・ローズ女史との会話がいっそ鬱陶しかったのに比して「通信漫才」聞きたさに何度でもコールしてしまう。装備担当氏の(どっか間違った)思い入れっぷり、ことにこのレベル専用武器についてのコメントも笑える。少佐はつまんないからパス。<おいっ
 ゲーム性はというとソリトンレーダーの無い時代なもんで、敵の存在を視認しつつひたすらアンブッシュする、本来の「リアルかくれんぼ」。ヌルゲーマーには酷な筈…というか1や2で試しにやってみてにっちもさっちも行かなくなった方法なのだけど、これが意外なほど楽しめる。狭いゴーグルの視野の中、最少の動きで敵を補足しようと息を殺したサバゲーの感覚が甦って嬉しいのなんの。あと、新年早々のサル捕獲の時も書いたけれど、景色が綺麗なのもツボだ。
 そんなこんなで寄り道しまくり、妙なモノ拾い食いしまくりな鈍足スネークなのであった。最後に貰えるであろう称号はナマケモノかオオアリクイか、はたまたパンダか。まあ、一番の問題は「いつクリアできるのか」ってことですな。

 夕刊でシャーロット・マクラウド氏の訃報に遭う。シャンディ教授、ディタニー・ヘンビット、ジェネット&マドック等のシリーズいずれも楽しく読みかつ続きを待っていただけに、ただただ残念。年を取るということは、こうして大事な先達たちに次々と別れを告げられることでもあるのだろう。露の世は露の世ながらさりながら、と憂いつつ、せめて悔いなく生き過ごすべく再読のために書庫を発掘する決意を固めた。これを1年の誓いとし、よって件のごとし。


1月19日(水) 晴

 物語の翼に意識を預ける旅人(本の虫ともいう)にとって最も困るのは、着陸しないことだろう。いや、作者の身に不測の事態がとて中断するなら涙を飲んで諦めいでもない。だが進行方向を見失って「あれ?どこへ降りるんでしたっけね?」とふらふら低空飛行を続けられるのはいっそ迷惑ですらある。
 さらに、いずれ付き合いきれなくなって途なかばでパラシュート降下を決め込めるならまだしも、それでも先が気になったり過去の素晴らしい風景を思い出して「もう少しあと少し」とついて行ってしまうのは悔しさ半ば、なんともやりきれないモンだ。ええ、アレとかアレとかアレのことですが。もう読むのやめようかなあ、ホントに。<まだ迷っている

 というような嘆きをヨソに、旅の途中で「なんだかエンジンの調子が悪そう」「先が見えないなあ」「ちゃんと着陸できるのかいな」と思わせておいて、見事に目を瞠る風景へ読み手を導き歓喜させてくれる作者がいる。『王国の鍵(紫堂恭子/著、角川書店)』全巻を読了。いや〜面白かったぜすげーぜブラボー!
 主人公の行く末は、ある意味お約束として予測の範疇ではあったけれど、その周囲に繰り伸べられた様々な糸の端が描き出した絵模様の見事さ。うっかり気を抜いてダラ読みしていた辺りで精妙巧緻に張られてた伏線に気付いた時の驚きといったら無い。ほとんど罠ですよこれ。さらに幕切れ後、いずれかの日に出逢うであろうその場面まで想像させる余韻も極上。また「戦い」の惨さ切なさ、取り返しのつかなさを、どちらかというと「綺麗」より「可愛らしい」絵柄で仮借なく描いて違和感を与えないのも凄いなと唸るばかりだ。
 ひさびさに大満足の旅だった。気になるのは作者の次のフライトプランぐらいかな。いやいや、プランだけ教えてもらえたとしても、きっと4次元構造で僕にゃ理解はできまいけれど。


1月21日(金) 曇

 『時間のかかる彫刻(シオドア・スタージョン/著、大村美根子/訳)』読了。実は絶版になったサンリオ文庫の再読だったんだけど、表題作の半ばに達するまで思い出せずにいたという…つまり僕の脳に時間をかけると刻まれたモノが揮発してくんですな。ああ情けない。
 という愚痴はさておき、読み口軽やかにして味わい深い作品揃いの一冊、通勤の友としてじっくり楽しませてもらった。複数の作品に登場する、文明を一新するほどの発明という形での希望、それが世に出ることを阻む諸々に潜む不安の双方に瑞々しいばかりの感情がこもり、また訳文の口調の若々しさもそれを引き立てて、懐かしい時代の「これぞSF」を堪能した気がする。10ン年前に読んだ時、これらの作品に思い入れしたものだったなぁ、とノスタルジーもひとつまみ。
 とか言いつつ、今の僕が最も好みに思うのは『フレミス伯父さん』。モチーフは新発明と似通っているけれど、「ジジイのホラ話」風のオチが実に愉快。ラファティとかアシュトン・スミスとかクラークとかに通じるこのテイストはいいなあ。いつか僕も、こんなふうに飄々とホラの吹ける爺さんになりたいもんだ。フレミス伯父さん本人みたいになりたい夢も無いワケではありませんが。

 夜、いささか時間ができたので『METALGEAR SOLID 3 Snake Eater』再開。水に潜って魚が捕れないかと無駄な努力&寄り道を延々とした挙句、研究所へ。先人(主にヒロツさん)の轍を避け、白衣とマスクを身につけて敷地内へ。おお、眼鏡が似合うぞライデン!メンクイだったらしいパラメディックにもウケてるし!とか言ってたら即座に敵兵に発見され、連行されて監房へ。潜入成功とはいうものの、ちょっと微妙な気分になって所内へ足を踏み出した。
 で、中庭に珍しいキノコを見つけたのが運の尽き。さっそく変装を解いてキャプチャーしたら、窓から外を見ていた研究者に見つかってしまった。鳴り渡る非常ベル。慌ててダクトへ逃げ込んで息を潜め、変装しなおして戻る。と、今度は白衣が泥まみれになっていたらしく、またもや警報。兵士と目が合うと殴り飛ばされ、研究者と目が合うと通報されるということに気付かず、さらにさらにベルを聞きまくる。
 う〜ん。すげえぞ僕。これはある種の才能ではなかろうか。
 つか、研究所の外へ出ると、同じぐらい狭いところでも(白衣姿で)敵兵を避けてスムーズに移動できるんだが。やっぱこれはアレか、ガキの時分からお外大好き、山へ行くといきなり先祖帰りして道を外れる性質が反映されたのか。最近のゲームってスゲェな〜。<ゲームのせいかよ


1月23日(日) 雪

 昨夜来の雪がひたすら降りしきる休日。轟然とか猛然とか沛然(…は雨か?)とかって表現が似合うような荒れ狂う風を伴ったものではなく、ただ淡々と真っ直ぐに落ちてくるだけなので日記のネタにもならんな〜とそっぽを向いていたのだが、ふとニュースを見ると1mを越えたとのこと。うわ!と思って戸外に目をやると外階段も通路も全て埋め尽くされ、我が家は雪の密室と化していた。ここはやはり、ダイイングメッセージつきの変死体が欲しいところだのう…とかバカな考えを燻らせつつ布団に逆戻り。しばし冬眠の真似事としゃれ込んでみる。

 で、目覚めるとすっかり日が傾いてて、丸一日を無駄遣いしちゃったなあと反省しきり。とりあえず溜まりビデオの処理とて『ケロロ軍曹』『デカレンジャー』『仮面ライダーブレイド』を流し見。ふはは、時間の無駄遣いを重ねちまったぜ、最後のヤツについては。まあ、1年がかりでムダを撒き散らしたものが感動のラストになるワケも無いけれど、ここへ来てまた唐突なキャラの復活とか登場とかで、もう笑うしか。きっちり真っ直ぐ作っていれば面白かっただろう作品と、そんなモンでも一生懸命やってた役者達に、合掌…するのも時間の以下略な気がしないでもないけれど。

 『侍はこわい(司馬遼太郎/著、光文社文庫)』読了。雑誌掲載のみだった初期短編を集めたもの。後年の重み厚みを求める人には向かないかもしれないが、既に文体は整っているのでさっくり軽く読めるのが好ましい。できればもうちょっと、数が欲しかったかな。書庫の暗がりへ潜り込んで、発掘物でスキマを埋めるか。


1月30日(日) 晴

 季節外れにもほどがある雨が降りつのった昨日から一夜、至るところが鏡面と化した中を買い物に。そこそこ強い風もあって歩きにくいなか、嵩張るマットレスを2枚買って帰宅。何もこんな日に行かなくてもよさそーなモンではある。
 ときにパッケージングされたそれがスティンガーミサイルのケースみたいなサイズ&形状なのを見たら『METALGEAR SOLID 2』のワンシーン、主人公ライデンにヘリから援護用に投げ与えられる場面を思い出してしまった。アレ、マットレスと違って30kg強あるんだよな。直撃したらどうするつもりだったんだ、おっさん?<ソリッド・スネークは年下ですが

 と、ゆくりなく過去の作品へツッコミつつ、最新作『METALGEAR SOLID 3 Snake Eater』の続きをプレイ。コブラ部隊の愉快なオジサン方を下しつつ、えっちらおっちらボスを目指す。ちなみに個別の撃破方法は以下のとおり。
 ○ ザ・ペイン…狙撃&グレネード投げ&ダイビングの繰り返し。
 ○ ザ・フィアー…てきとーな場所にケツを据え、ひたすら狙撃。相手が接近したらグレネード。
 ○ ジ・エンド…同じく狙撃。相手が動くまで動かないのはスナイパーの基本でしょとじっくり時間をかけるうち背後で観戦していた相方がジイサマの睡魔に取り憑かれ、さらに狙撃ポイント間をじりじり匍匐で這いまわっていたら移動してきたジイサマ(しかも普通に徒歩)と鉢合わせするというオマケつき。
 ○ ザ・フューリー…同上。
 …なんつーかその、僕のスネークはかなり嫌なヤツである。少なくとも、戦場でヒーローと称えられることは無さそうだよなあ。


1月31日(月) 晴

 いい感じのノリが来てる&肩凝りが出ないので、本日もゲーム。野越え山越え谷越えて(文字どおりやってるとこが凄いよなスネーク)ついにエンディングを迎えた。ちなみにラストバトルの勝利方法は、自陣の周囲にクレイモア仕掛けまくってから狙撃…不肖の弟子でごめんボス。

 さて感想。ストーリーは文句なし。いくさ場を彷徨する蛇の系譜の始まりを描いてシリーズのファンには納得の物語ではなかろうか。この後、彼は「戦場を駆ける人攫いおじさん」と化してグレイ・フォックスとかそのオマケとか、スナイパー・ウルフとかを拾いあるくワケですな。いや、ギャグにして目を逸らすしかない、国境に引き裂かれた恋人同士や政に利用される親子、よるべないまま育つ子供達の悲劇が繰り返される、哀しい伝説の幕が開くのだけど。ソリッドが最後の世代である雷電に、その外へ出て行く道を示すまでは。
 小島監督作品に常に流れる憂愁、儚い希望を紡いだ作りが冴えている。ハッピーエンド至上主義の僕が不思議とこのシリーズには魅せられる。やはり、主軸を成す強烈なメッセージ性があり、かつはそれに同感できるということなのだろう。賛意をこめてジェネシスの「Land of Confusion」をがなってみたりするほどに。

 ただ、語り口が(いつもながらと言うべきか)時折妙に冗長になっちまうのが残念なところではある。特に物語のシメたるエンディング、EVAのモノローグはもちっと引き締めてもよかったのではなかろうか。
 あと、コブラ部隊の面々の背景を少し作ってやってもよかったのではと。前作の中ボス君たちのように場違いなほど延々喋って欲しいワケではないけれど、1作目のマンティスやレイヴンのキャラ立ての巧みさを知ってるだけに「捨て駒」の哀しさが見えず、どうもバランスの悪さを感じる。彼らがザ・ボスにとってどんな存在だったか、それをしもああいう使い方を…という点が強調され損ねたかなと。

 キャラクターでは、やはりオセロットだろう。後年の歪んだジジイが形成された過程ながら、どんな痛い目に遭おうが懲りず凹まず趣味全開で向かってくる稚気まみれっぷりが実に楽しい。むきつけの感情を抜けば『ポリスノーツ』のトニー・レッドウッドに通じるものがあるな。それかあらぬか、塩沢兼人氏を彷彿とさせる声質の役者さんがCVを務められていたが…。
 次点はザ・ソロー。妙に気に入ってしまった。ザ・ボスの背後にゆらり漂う姿を最初に見たときは「伏兵?」と思ってたんだが、まさかああいうキャラだとは。パスコー君(『ペット・セメタリー』映画版参照)ですかアンタは。まあ、彼女への愛ゆえに留まった魂魄なのか、はたまた彼女の真意が想う相手の姿をとって現れたか、ってなロマンチック風味の解釈をしておくことにしよう。
 逆に、どうにも馴染めなかったのがEVA。ザ・ボスとパラメディックの二極の間でヒロインやるには選ばざるを得ない形だったのかも知れないけれど、初手からチチ見せびらかして「おんな」全開で迫ってくるのには正直辟易させられた。もっとストイックに、しかしザ・ボスの「静」に対する「動」でキャラ立てしたほうが良かったんじゃないかなあ。で、チチのほうはチラリですよチラリ。これ見よと丸出しにされるんじゃ色気もヘチマも無いっす。見えそうで見えない、これがセオリーってもんでしょう!…って何を熱弁振るってるのかな僕は。
 あ、彼女の「例の」シーンは不覚にも笑わされましたけどね。色気まみれをアピールしてたのは、アレの伏線だったのかな?って、ネタのために本編作るようなこと…やりかねないかも。<失敬な

 で、へっぽこゲーマーとしては最後に回しちまうゲーム性。これは再々書いてきたけど、文句なし。操作性、アクション、風景、バランス、どこを取っても遊んで楽しく後を引く。いや、まぁ、VeryEasyレベルで偉そうに言えるこっちゃないけれど、久々に全精力を傾け集中し気合を入れ遊んだ気がする。ああ、面白かった!

 なお、さっそく突入したセカンドプレイ、暗くて湿った通路で敵兵を殺しまくり自らも血だるまになって『サイレントヒル』ごっこしてたのは秘密である。いや、ホントに雰囲気出るんだって!<大馬鹿



翌月へ






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