店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2005.9

 

 

 

 

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

 

[ 以前の日記 ]
2000  9 / 10 / 11 / 12
2001  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2002  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2003  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2004  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2005  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8
[ 銀鰻亭店内へ ]



9月3日(土) 曇時々晴

 所用あってヨドバシへ。で、用が済むか済まぬかに、習慣で玩具売り場へと流れ着く。おお、いつの間にか改装したとみえ、低くなった棚ごとに品名が明示されて見やすくなっているのぉ。が、当然ながら通路の面積は狭まってるので、混んだ時を想像するとちとオソロシイ。クリスマスには早めに来ねばだな。
 改装時に出たらしい投売り品がワゴンに積まれているのを見つけて寄っていくと、12インチフィギュアがいくつか目に付いた。中でも大きな箱はメディコム・トイの『魔界転生』は柳生十兵衛&天草四郎、それぞれ\5,000。旧作版だったら迷ったかもしれんのだが、新作はな〜。追い剥ぎするにも衣装が特殊すぎ、欲しいものは刀ぐらいだ。こいつはパス…と行き過ぎかけて、陰に小さな箱があるのに気付く。モノはシド・ヴィシャス、言わずと知れた、音楽センスよりも奇矯な言動と麻薬中毒と殺人とで有名だった『セックス・ピストルズ』のメンバーだ。ピストルズっつーと最近はオヤツを要求するスタンドしか思い出さなかったしご本人にも興味は無いが、お値段\3,500也、衣装のデキと細身の男性素体はなかなかに魅力的。よっしゃ買った!
 草葉の陰のパンクロッカーに失敬なことを考えつつ、小物のコーナーへ。いわゆる食玩ではなく、ブラインドボックスのミニフィギュアも含めて、世の中にこんなに出回ってるのか〜と呆れるほど、かなりの面積を占めている。なんたって『怪奇大作戦』まであるんですぜお立会い。サイズのわりに出来は悪くなさそうだけど、キャラ単体ってのがちと淋しいですなこれ。タイムスリップグリコのケムール人みたいに、ちゃんと情景になってるほうが見栄えがすると思うっす。つか、キングアラジンは「あの」エビ反りポーズでないとイカンでしょう!つかアレ以外却下! <そこまで言うか
 まあ、文句があるなら背景を自作すりゃいいんだよな〜と、また無意味に思考が好転し始めたので、相方のためにメガハウスの『私のケーキ屋さん』をいくつか掴んでレジへ。先回の『あなたにギフト』に続いて細工が細かそうなのが楽しみだ。

 『ローマ人の物語 17(塩野七生/著、新潮文庫)』読了。シーザーとアウグストゥスの衣鉢を継いだティベリウスの治世、帝国を磐石のものとしながら孤独に生きたその生涯を辿る巻。筆者の筆もシーザー萌えようやく冷めてきた辺りで読みやすく、整理された文章と図版で同名入り乱れる厄介な系図が素直に頭に入ってくる。
 それにしてもティべリウスって性格も立場も徳川秀忠に似てる気がするなあ。天才入り乱れた時代の後、戦後処理と体制の確立に努めねばならぬ使命ありきの人生、家族にも世評にも歴史にも省みられない。実際は先人のアイディアを汲み取り、実情に即して進めていくってのは非常な才能と人並みはずれた努力の要ることなのだが。今まで読んだこのシリーズの中、それゆえ彼に等身大の人間らしさを色濃く感じるのは僕だけではないと思う。シリーズ、いよいよ奇矯かつ有名な愚帝の時代に入るところ、直前にはこういう人もいたと、歴史の授業じゃ知り得ない、まさに「生きた」過去を見せてもらった満足の1冊だった。


9月9日(金) 晴

 西日本に甚大な被害をもたらした台風が日本海を威勢良く遡って来るというから身構えていたのだが、さしたる風雨もなく駆け去っていってくれ、あとには涼風と妙にギラギラした陽射しが残った。暑くはないが、熱い。
 暦が秋になってから日焼けってのは切ないので、じっと石の下ならぬ会社に身を潜めるばかり。つか既に日焼けしてて、それが滑走路でのものだってことに些か寂しさを覚えないこともないではないような気がしないでもありませんと思われ。<どうなのよ

 少し前に読んだ本。
 『アイルランド幻想―ゴシック・ホラー傑作集 (ピーター・トレメイン/著、甲斐万里江/訳、光文社文庫)』
 ホラー小説としては、楽しめない。理由は簡単、そういうカテゴリーに置くには怖くないのだ。ネタもストーリーも語り口も、昔話お伽噺の類に近く、いささか古さびたイメージがある。丁寧な用語解説をつけられた伝承知識がみっしり盛り込まれているせいもあろう、こちらのほうは斯界のファンには嬉しいものではあるけれど。
 しかし「生きてる人間が一番怖い」というお約束な言葉をもってみると、この本は実に、実に怖い代物だった。
 ある民族が他民族を侵略しようとする、理不尽な論理。己が欲を満たすために一方的に相手を劣ったものと決め付け「〜してやる」と己の価値観を押し付け、拒まれれば殺す。そんなことを幾世代にも亘って繰り返されてきた歴史が、連綿と語られている。
 岩がちな平原の国というイメージの定着したアイルランドが、実はそういう国土ではなかったこととその理由を提示され、愕然とした瞬間の寒気ったらなかった。考えてみればかのシーザーの時代以前からケルト人が住まい、ドルイドを奉じる者たちがいたというのに森が無いわけなかろう、という話なのだが。IRAがなにをもって起つに至ったか、心底理解できた気がする。
 がしかし、他山の石とするには我が母国も同じことをしてきたんだよな。今まさに進行中のことを拱手して見るのみという状況も考え合わせると、いかほどの怨念がこの地上に渦巻き、かつは生まれ続けているのやら。そしてこの先、それらもこうして昔がたりとして伝えられていくのだろうかと思わずにはいられない。友よ、答えは風の中。荒び吹き過ぎる風の中…と、Blowin' In The Windの歌詞を今さら賢人の言葉のように思い出すしかない、そういう問いなのだけど、たぶんその風の中には幾千年かけて変わってゆけないヒトに向けたバンシーの叫びが織り交ぜられているんだろうな。


9月10日(土) 晴

 出社すると、机の上にキャラメルが一個。通りかかった後輩に聞くと、にこやかに「ジンギスカンキャラメルです!すっげーマズいっすよ!」とのこと。さらに聞くと、同僚がネタで買ったものの、あまりのマズさに1個すら食べられず、残る17個の処理に困って適当にバラまいたものらしい。えーと、社内でトラップ敷設ですか?
 その破壊力はつとに耳にしていたし、箱を開けてるところへ出くわして臭いを嗅いだこともある。君子危うきに近寄らず、と摘んで別な同僚の席へシフトしようとしたのだが、例の若人が「食べないんスか?」と、ちょっと脂汗の浮いた笑顔で誘いかけてくる。う、そ、そうか君は食ったのだな。死地をともにしてこそ戦友だ。一応、食品として売ってるものなんだし、以前のような臭いも無い。やっぱ挑戦されたら受けないとな。ひょいぱく。
 ………「こんなものが喰えるか〜!(CV:大塚明夫@『メタルギアソリッド3』)」
 食べる大量殺戮兵器って感じです。
 口に入れた時は、普通にキャラメル。わりと甘いかな?がしかし、ひとくち噛みしめたとたん、そこにタレを絡めた羊肉の脂の味がじゅわっと広がってくる。両者一歩も譲らず、がっぷり四つに組んで暴れまわる、筆舌に尽くし難いっつーか名状し難いミスマッチ。いや〜すげぇ。これ作った人、何を考えてたんだろう。
 当地には他にビールとか北の誉(日本酒)とかラベンダーとかガラナとか焼とうきびとか、ネタのためだけに開発されたキャラメルが山ほどあるけど、ここまでダメージがでかいものは無いだろう。ほんと、どこかのテロ組織に売り込むべきかもしれん。

 帰途『鉄腕バーディー 10(ゆうきまさみ/著、小学館)』をゲット。また怪しいネタがざわざわ出てきて、読み手は驚きつつ前のほうの巻を読み直してみたり。そうか〜、意味深に傍点なんか振ってるから何かと思えば氷川さん、そういうことだったんですか。いやだねこの人ぁどうも。よっ、和製『ドリアン・グレイ』…ってのもちょっと違いますが。見えないお友達と話してるあたりが、脳だけ相応なのかなとか思え、かつ能力と相まってヤバさ炸裂だったりしますな。
 しかし、話の進行はさておき、個々のキャラクターとその背景にこんなに力を入れてて大丈夫なのかな。他にも宇宙人サイドでいろいろ出てきそうだし。どんどんずんずん膨らませたのを纏めてラストへ持っていくのは作家の腕の見せ所ではあるから、それも込みで楽しみに追っかけさせてもらうのみだが。
 絵のほうも、連載開始頃のバーディーは、従来の作品群にもいたパキッと直線系の「元気な女の子」タイプだったのが、最近とみにグラマラスで柔らかくかつ強靭な「綺麗なお姉さん」になりつつあって嬉しい変化。えーと、ゴメス夫人の再登場も切に期待しております、何卒よろしく作者様。


9月11日(日) 晴

 今日は投票日。近在の小学校へ、相方と二人てくてく坂を登る。が、道は小学校に隣接する神社の縁日屋台で埋まっていた。うはは、ビール呑んでいい?
 ねこま「ダメです。帰りにしなさい」
 とりあえずアメリカンドックとクレープとカステラとカルメ焼買っていい?
 ねこま「どこがとりあえずなの!投票してからにしなさい!」
 と、現役生徒のようにじたじたしながら校門を潜り、体育館へ。お、掲示板に「造形集団 海洋堂の軌跡」展のポスターがあるじゃないか。むちぷり姉ちゃんのフィギュアが目立って小学校向きの図案じゃない気もするけど、こういう精緻な立体造形を子供の頃から目にしておくのはいいことだよねえ。そういえば水戸芸術館のこの企画のページの一番下に載ってたパスの告知がイイ感じだったんだよな。いまいち不振な道立近代美術館にも、ああいうセンスが欲しいもんだ。
 ねこま「早く来んか〜!」
 とまあ、いろいろあったものの、恙無く投票は終了。義務を果たした以上、次は権利の行使とばかり、屋台を冷やかしては呑みかつ食らう。うーん、青空の下のビールは美味い!おでんも旨い!と、帰り道を辿るにつれ中年へと逆戻りし、家に着く頃には立派な茹蛸になっていましたとさ、どっとはらい。

 『仮面ライダー響鬼』を2週分チェック。中学生日記(いや、高校生だってばよ!)に転入生が登場し、のっけから妙な電波を撒き散らしている。どうでもいいけど脚本家氏、金持ちとか才能天狗小僧とかに妙な思い込みがありませんか。ステロタイプ以前、小中学生の妄想をそのまま形にしたみたいなキャラクターって、この展開で出すには無理があると思うんだけど。
 なんでもプロデューサーと脚本家が一度に交代したそうだけど、前半で作ってきたトーンを潰して再構成するには残り時間が少ないんじゃないか。つーか前半の「のほほん魔物退治」が好きな人がここまでついてきてるんだから、『クウガ』最終回とか『アギト』アナザー以後とかみたいな意図のみえない展開だけはどうぞ勘弁つかまつりたく。


9月12日(月) 晴のち曇

 所用あって書店へでかけ『宗像教授異考録 巻之一(星野之宣/著、小学館)』を発見。瞬間、頭の中から他の捜索物が全て消え去り、本を抱いて踊りながらレジへ突っ走りそうに。幸い相方が止めてくれたからいいようなものの、そのままだと脳に何か沸いてる人か、はたまた名状し難きものの下僕と思われて通報されたかもしれん。いや後者のように思う店員さんがいたら、それはそれで嫌ですが。つか何処に通報するねんその場合。
 さて、内容はというと、前シリーズに劣らぬ面白さ、満足このうえなし。歴史の裏読み深読み超解釈、時にはほとんどSFじみていてさえ頷かされてしまうその説得力。『神南火』の主人公も登場し、好敵手というより狂言回しだった旧・忌部君(まだ居るのに旧いうな)の代わりに教授と論戦を繰り広げたりというのも著者ファンには嬉しいサービスだ。同工ながらいまひとつツッコミ不足で燃えるもののなかった作品だが、気の強いヒロインは結構気に入っていたもんで。

 『ローマ人の物語 20 悪名高き皇帝たち』読了。カエサル、アウグストゥスに始まった「ユリウス・クラウディウス朝」がティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロと続いて終焉を迎えるまでを描いた全4巻の終りである。いや〜、読み応えありました。
 己の受け継いだものに誠実にして英明ながらそれゆえの孤独を深め、元老院はじめ市民から倦まれるにいたったティベリウス。幼少時から衆目の中、愛されて育った若者カリグラが、巨大すぎる権力に溺れ終には誰より彼を愛したであろう兵士たちの刃を浴びるに至った顛末。その甥の光輝の陰でひっそり人生を送れた筈が、不意に表舞台に引き出されそれでも真摯に使命を果たしたクラウディウスの、淋しい死。史上最悪の皇帝と後世に謗られるネロの、意外な小心さといっそほほえましい一面。人間的な側面を浮き彫りにしつつ、しかし冷静に事象を追う筆者の筆運びは見事の一言としか。
 皇帝たちの浮沈に影響し、或いはされた同時代人の物語もまた興趣深いものが多かった。アルメニア=パルティア王権問題と、それを武勇知略ともにめぐらせて解決した武将コルブロのくだりなんかは、どっかのファンタジー小説にでもありそうでワクワクするものがあった。いや、解決方法自体は大人の手法、いかにも老獪このうえないんだけどね。
 おまけというと何だが、最終巻末で「そんなこと言ったって、タキトゥス」と、かの史家に寄せた一文が、なんだか女扱いの下手な青二才へ姐御からのお小言のよう、妙にくすぐったく笑えるものがあった。内容は後知恵で感想文なんぞ書き散らしている身には、ちょっと耳に痛いものもあったけれど。


9月17日(土) 曇時々雨

 『ラスト・コヨーテ 上・下(マイクル・コナリー/著、古沢嘉通/訳)』読了。
 陰鬱極まりない絵画の作者と同じ名の刑事、ヒエロニムス・ボッシュ。常につきまとう暗い過去とそれゆえの狷介固陋といってもいい性向、にもかかわらず抱きつづける信念のゆえ他者と相容れること難しく、ひたすらに孤独を募らせる。そんな彼が、常に反目を続けてきた上司を殴って強制休職処分をくらい、復職の条件として精神分析医のカウンセリングを受けているところからストーリーは始まる。しかも戻るべき家は大地震で崩壊、また前巻で安定していた恋人との間もそれと時期を同じくして終わっているという惨憺たる状況だ。
 苛立ちと虚無感に追われるように、彼は人生をそのように形作った最初の事件、母の死を調査し始める。だが、手がかりは既に風化して久しく、証人もその多くが手の届かないところに居る。常にも増して殺伐と、心中の苛立ちと焦燥をそのまま周囲とぶつかりながらの捜査行に少年時代の思いが重なり、胸苦しくなるような物語が展開する。
 八方塞りの状態からあの手この手で調査を続けてゆく過程には強力に引き込まれるものがあるし、何より下巻に至って発生する事件は驚愕もの。そのためにボッシュが負う重荷はさらに増すことになり、読み手は謎が解けてそいつが倍増しやしないかと痛々しい思いにまみれつつ見守らずにはいられない。うう、胃に悪いミステリだぜ。
 二転三転の果てに訪れる終幕は、真犯人の意外性こそ乏しいものの、人の狡知と邪悪に底が無いことを見せて寂しさに似た情景を描く。そして旅立つボッシュの姿に、もしかしたら、今度こそ彼の人生に安らげる場所が?…と期待したいところなんだが、なにせこちとら先に『シティ・オブ・ボーンズ』を読んでしまってるのでそれが無いのは分かってるときたもんだ。それでも先が読みたくなるのは、作品とキャラクターが尽きせぬ魅力をもっているからか、現実社会に重ねること多く憂いを共感できるからなのか、はたまた僕がマゾなのか。
 とまれシリーズはこの先も『トランク・ミュージック(扶桑社ミステリー)』『天使は地獄へ飛ぶ(扶桑社)』『夜より暗き闇(講談社文庫)』を間に挟み、最新刊『暗く聖なる夜(講談社文庫)』へと続いていくことになる。胃薬飲みながら追跡するしかあるまいなぁ。コナリーの他作品『ザ・ポエット(扶桑社ミステリー)』のジャック・マカヴォイ、それに『わが心臓の痛み(扶桑社)』のテリー・マッケイレブとの共演話もあるこったから、そっちも読んでおかないと。
 しかし、今はT・H・クックが1冊とマイケル・スレイドが3冊、積読棚で待っている。しかも胃の調子は最悪ときてる、しばしボッシュとは別れて休暇を決め込むとしよう。


9月18日(日) 雨のち曇

 布団を投げ飛ばしてぐーすか寝ている相方をそのままに、物置・書斎・作業場所兼用部屋の順序を逆転させるべく肉体労働に勤しむ。棚と机の位置を入れ替え、中央部にスペースをとる冬配置にして、床を埋めた本と小物類はとにかく収納…というプランなのだが、これがなかなかの難物。特に後者の量と散らかり具合が半端じゃないのだよな〜。放っておいたらどんどん乱雑かつ無秩序になってったという、エントロピー増大の法則の3Dモデルみたいな状況だ。つか既に最終段階、混ぜ合わされ均質化し混沌へ帰しつつあるかもしれん。さらにうっちゃっておくとビッグバンも観測できるかもしれないが、たぶん大家さんには喜ばれまい。せいぜい頑張って、弥勒の来迎を防ぐとしよう。今後僕のことは修羅場王と呼ぶように。
 ねこま「…光瀬龍に謝れ」
 え?いつ起きたんだ貴様。つかネタなんだからほっといてくれんか。
 ねこま「…つまり朝ご飯は要らないと?」
 すいません、ついッ!

 本日の『仮面ライダー響鬼』は、テーマソングを歌っている布施明が装備開発チームのトップ・小暮耕之助役として登場。しかし名前といい鬼たちを軽々と手玉にとり警策でもって一発くらわせる技量といい、ひょっとして彼も以前は鬼だったのか?作中でも音頭朗々と歌いまくっていましたが、武器は歌声?生きた音撃兵器?お、男ミンメ(略
 それはそうと、先々回から登場の脇役くんがますます不快、というよりキモチワルイ系になっているのは何だか。本人なりの理由があって突っかかってきている困ったちゃんというより、精神的におかしいんじゃないかっつー演出になってるんだが。「明日夢、構うなよ」ではなく「全力で逃げろ!」と言いたくなってしまう人間ってぇのは、ここまでの「人間対魔物」の話から考えていかがなものか。どういう落としどころを用意してるか分からないけど、観てるのが嫌になるような描写はそろそろ勘弁してほしいな。


9月20日(火) 晴のち曇

 『真説ルパン対ホームズ 名探偵博覧会』読了。
 ホームズもののパロディ&パスティーシュは国をまたいで広く書かれ、本邦に於いても山田風太郎から西村京太郎、都筑道夫に高橋克彦と様々な作家がものしている。いずれも楽しく読んできたが、これに新たなページを付け加えた本作は他とは違った意味合いで非常に愉しめるというか、いっそ喜ばしいものだった。というのも僕、オリジナルの『ルパン対ホームズ』が、どーにもこーにも納得いかない…つーか、それを手にした小学生のみぎり、かの怪盗紳士と訣別させたほどに大っっっっ嫌いだったのだよな。
 流石にこの年齢になると、あれが「エルロック・ショルメス」なるキャラクターで行われた、一種のパロディだったのは理解している。日本に入った時点でそれをホームズにしてしまった売り手のスタンスも分らないではない。がしかし、少年探偵団やホームズもの、それにルパン・シリーズのある棚の最上段に踏み台無しに近づけなかった小学校1年生のチビっこいオツムには、そんな大人の事情まで読み解けよう筈も無い。もとよりホームズのほうを愛好していたこともあるが、『紅はこべ』『三銃士』のような騎士道精神をもつルパンの作者が、こんな卑怯な書き方であの名探偵を侮辱するなんて!と悲憤慷慨、以後ボイコットに走ったという次第だ。
 で、そのチビすけは、どうやらまだ人生の半ばを過ぎたこの脳の片隅で不平を鳴らしていたらしく、本作で描かれた彼らの邂逅に、あの時期待していた両雄の姿をみてやっと溜飲が下がったのである。うむ、こんなのが読みたかったんだよ!
 惜しむらくは「対決」というほど丁々発止の大勝負が行われるワケではない。アメコミにありがちなクロスオーバーもの、と言ってしまえばそこまでだ。しかし当時の風俗や人物を織り込みつつ、壮大なレベルでの「ペテン」を皮肉に描き出してもいるあたり、かなりの巧者と見上げるものがある。他作品もオールドミステリ・ファンにはくすぐったい笑いを齎してくれて、ちょいとオイシイ拾い物であった。


9月21日(木) 晴

 所用あってデパートへ。文具売り場にとりどりのカレンダーが並べられて、季節の変化を語っている。そうか、もう今年も終わるのか…って、ちょっと待て。
 なんぼなんでも早くないか?まだハロウィーンも来てないぞ、おい?

 9月17日に「しばらくお別れしましょう」宣言した筈のハリー・ボッシュ・シリーズ『トランク・ミュージック(マイクル・コナリー/著、古沢嘉通/訳)』に手をつける。最新刊『暗く聖なる夜』をゲットしちまったもんだから、つい先へ進みたくなって探しあててしまったヤツだ。
 珍しく(というか初めて?)ボッシュの過去が絡まず普通の警察小説ノリでストーリーが展開している。しかも、新しい上司のもとチーム編成が変わり、組織内の軋轢なしで気分良く仕事ができる環境ときた。う、羨まし…いやいやいやいや、良かったじゃないかハリー!
 とはいうものの、死体がマフィア絡みの様相を呈しているのに担当部署が乗り出してこないわ、かつての恋人が奇妙な状況下で現れるわ、胡散臭さ紛々たる展開。かてて加えて、これまでの話で過去の重荷をどうやら一段落させたらしいボッシュがまた、彼女を無条件で信頼し守ろうとするスタンスで、ひどく危なっかしい。このままうまく行きっこない、何らかの陥穽が迫ってるに決まっている、早く気付け!とか主人公に降りかかるであろうトラップを予測しては焦ってしまうあたり、別な意味で胃に悪い小説ですな。


9月23日(金) 曇のち晴

 猫の砂と餌をまとめ買いすべく、近在のホームセンターへ。どうせ配達を頼むのだからガンガン行こうぜ〜!とカートに積めるだけ積んだら、レジへの道が果てしなく辛くなってしまった。んで午後に届いた荷物を解いて収納したらエネルギーを使い果たしてグッタリ。げに考えなしというのは恐ろしいものである。

 帰路、建物の取り壊し現場を見かける。もう原型を留めない「おや、ここは何だったかな?」な状態だったのだけど、かつて私鉄の駅舎であったのをそのまま利用していた所だと気付く。昭和レトロなエントランスと、もう列車の来ないプラットフォームが味わい深い建物だったのだが…まあ、古さがテイストってことは居住性がよろしくないってことだろうから、止むを得ないのだろうなあ。
 しかし、再現するのが難しいものを無碍に壊してしまうのもどんなもんかと、惜別の情もて日盛りに立ち尽くすこと数分、なんだかぐらぐら眩暈がしてきた。げに考えなしというのは以下略。

 かくて、でろ〜んと伸びた状態で『トランク・ミュージック(マイクル・コナリー/著、古沢嘉通/訳)』読了。
 おいおい、それアリなの?というものから「うーむ」と唸らされるものまで、どんでん返しが続々。前半が実直な刑事ものであったのに比して、後半はかっ飛んだ探偵小説の空気を含んでいるといえなくもない。が、それで面白さが削がれるということはなく、横溝みたいな因縁話にふと涙腺を刺激されつつもいっそ爽快にエンディングへ突き進めるという、本シリーズには珍しい展開。つか、主人公の精神状態真っ暗けな展開ばかりじゃなく、こういうのも悪くないと思うなぁ。
 しかし、もうちょっとこのままの空気が続いてくれないか…との期待が満たされそうな『天使は地獄へ飛ぶ(扶桑社)』は絶版状態、残念ながらその先の見るからにダークそうなタイトルめがけて突き進むしかない。とりあえずスプラッタまみれのスレイドは『カットスロート』に飛び込んで、ショック慣れしておくことにしよう。


9月28日(水) 晴

 『ヘッド・ハンター(マイケル・スレイド/著、大島豊/訳、創元推理文庫)』読了。
 跳梁する殺人鬼とカナダ騎馬警察隊との対決を描いた『グール』『カットスロート』『髑髏島の惨劇』『暗黒大陸の悪霊』に先立つ物語。よくもまぁこんなに続々と頭のイカれたスプラッタ野郎が発生したもんだ。とか言ってる4作のリンク先はそれぞれの感想、我ながらよくもまぁしっかり読んじまってるもんです、はい。
 さて本作、後発作品に負けず劣らず目くるめく悪夢のカレイドスコープ…というと格好つけすぎのきらいあり。あえて言うなら血糊したたり腐臭漂い素材はビニールから得体の知れない皮まで、おまけにあちこちに妙な毛が生えてたりする悪魔のパッチワーク(もちろん糸は生干しのガットだ、オエッ)というところか。ついでに言うと縫い目が非常に雑だったりもして、据わり心地もよろしくない。開拓時代の雪の中、謝肉祭の狂乱を遠く聞く10余年前の地下室、いつとも分らない南米の沼地、そして現代の波止場やスラムと捜査本部、時間空間を飛び越えた情景が無造作に繰り出されてくるうえに登場人物も雑多このうえなく、その物量に負けてつい流れを見失ってしまいがちになるのだ。
 が、その悪酔いしそうな感覚が、ふと気付くと楽しくなっている。ぐらんぐらんと蛇行運転する魔法のジュータンに乗って何処とも知れぬ陥穽に堕ちてゆくジェットコースターの面白さ、普通に物語を読み解く楽しみとは違っているけれど、病み付きになるものがある。
 そしてノリが最高潮になったところで急転直下のラスト。ホラー映画のありがちシチュエーションに至って読み手は呆然と取り残され、こんなんアリかよ!と叫びながら酔いにむかつく腹を抱えて続編『斬首人の復讐(夏来健次/訳、文春文庫)』へと走るハメになるのであった。うーん、マズい!もう一杯!


9月30日(金) 晴のち曇

 タイガース優勝を受けて相方ねこまが買い集めてきた雑誌やスポーツ紙が床に散り敷く秋の日。黄色と黒の落ち葉模様は不可思議かつ怪奇な眺めである。ま、とりあえず大目に見ておいてやろう、次はいつ見られるか分らなあいや痛い痛いいたたたたた

 と急襲される恐怖をリアルに味わいつつ『斬首人の復讐(マイケル・スレイド/著、夏来健次/訳、文春文庫)』読了。
 従来作品に見受けられた、胃のでんぐり返るような「読み物酔い」を味わわせるシーン展開の荒っぽさがほとんど無い。というか、作品を追うごとに継ぎ合わせ方がスムーズになって一種持ち味が失われ、普通のクライム・ミステリー&警察小説になってきちゃったかな?という気がしないでも。
 しかし、それはそれとして面白く読めるし、シリーズのファンにとっては、ここまで綴られてきた作品群の記録と雑多なモチーフとを繋ぎ合わせ剥ぎ合わせ、最後にぎゅぎゅっと収斂させるという本筋だけで充分に満足。ついでに今まで気付かなかった細部の書き込みなんかに気付かされる愉しみもあり。つか僕、あのばーちゃんが例の人だと気付いてませんでした。こういう記憶漏れを防ぐべく、ぜひ話の展開順に再読をお勧めしたいっす。しんどいですけど。
 このままシリーズ最終回であってもおかしくない展開だが、キャラクターたちの人間模様や組織に変化もあったことだし、また新たな殺人鬼、いやさ事件の登場を期待したいところだ。

 夜『バルバラ異界 4(萩尾望都/著、小学館)』を読む。
 脳・思考、時間・空間、生命・寿命、科学・感情といった不可知領域をSF設定で語りながら理屈に走らずトンデモに落ちず、精緻に構築されかつ詩情あふれる物語へと編み上げる手腕はさすが。長らく筆者の作品にモチーフとして用いられてきた赤い星への憧憬も麗しく、さりとて夢に留まらないリアリティを感じさせるものがある。ただ深い祷りにも似たラストシーンに不覚にも涙を誘われつつ、もう一度全巻読み直してやろうと書庫へダイブ。たぶん『銀の三角』『スター・レッド』あたりまで戻ってしまうと思うが、止めてくれるな。


翌月へ





[ 銀鰻亭店内へ ]


サーチ:
キーワード:
Amazon.co.jp のロゴ