店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2006.1

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2006 



1月1日(日) 

 あけましておめでとうございます。

 と、寝床から這い出す昼近く。しかし年越しの筋肉痛で身動きもままならず、軽食と飲み物をかき集めてまた布団へ。なにせ年末までトイレ以外は席から離れられぬハードワークの日々、だのに忘年会はいきなりボウリング大会、さらに翌朝は会社前の大雪をせっせと除ける羽目になったのだ、年寄りのたるんだ肉が耐えられるワケなかろうもん。もちろんのこと、初詣も行きません。行きたくたって行けませんともさ!
 いいんだ、ウチには貧乏神と物欲神がタッグ組んで常駐してるんだから。これ以上増えてたまるもんかい!

 年の初めの例とて外れた年末ジャンボで紙吹雪なぞしていたら、ネット本屋から荷物がやってきた。コミック、ミステリその他の書籍にDVD、自前のお年玉というところか。では、さっそく。
 『魔障ヶ岳(諸星大二郎/著、講談社)』
 って、年始一発目にコレか?と自己ツッコミを入れつつの「妖怪ハンター」新作。なにかもやもやと視界の端に蠢いていたものが俄かに形を成して人を呑み込む脅威と化す…という本シリーズいつもながらのパターンだが、今回は単発ではなくオムニバス長編、タイトルの山で出遭った「もの」に名をつけるという行為がみせる人間の浅はかな望みの連なりを描き出している。得体の知れぬものを恐れ、それに名をつけて理解したふりを決め込まずにいられぬヒトの性に、名に縛られたモノがその名をこそ逆手に迫ってくる2話目がことに面白かった。
 トリックスター的な新キャラクターも登場し、シリーズがまた先へ続いていく含みも嬉しいところ。とはいえ雑誌から雑誌へ彷徨すること「超人ロック」といい勝負の稗田礼二郎のことだから、次の遭遇をただ待たず、読者も未知の領域へ追いかけなくてはならんのかも。


1月4日(水) 晴

 未明にかけてしぶんぎ座流星群が極大になるとの情報を得、楽しみに待っていたのだが、夕方から夜半にかけて狙ったような雪雲がみっしり。しかも寂しく諦めて明けた今朝はからりと快晴ときたもんだ。嫌がらせかコンチクショー!
 と、天に怒りをぶつけてみても始まらん。万一にも逆鱗に触れて直撃弾など降らされてはツングース程度に近所迷惑でもある。今日はここいらで勘弁しといてやろう。

 とか何とか天にかこつけて今日も寝正月を決め込みたかったのだが、ねこまは既に仕事始め、ひとりグータラ寝ていると帰宅した時の落雷が恐ろしい。それに自分も明日から通常勤務なので、このまま寝たきり中年していると社会復帰が難しかろう。
 かくてもそもそ起き出して、掃除洗濯カレーの仕込みなどしつつ、古いビデオを整頓することに。本棚にみっしり詰まったやつを適当に抜いて、中身をチェックすべくデッキに投入。
 1本目『妖怪ハンター ヒルコ』
 2本目『七人のおたく』
 3本目『ネクロノミカン』
 4本目『ネメシス』
 …えーと、おみくじ引いたら「ハズレ」が出たようなこのラインナップは何でしょうか。おのれで集めたものとはいえ、他にもっと一般路線のがある筈なんだが。

 気を取り直して『広告批評』の「世界のCM」特集号を数冊並べておまけディスクを鑑賞。ネット上でも面白いのに出くわすとコレクションしているのだけど、捻りすぎてちょっと観では商品が分らないもの逆に直截すぎるもの、いろいろあって楽しい楽しい。お国柄も出るようで、セックスネタが露骨に出てるのがフランス、容赦のないブラックジョークはイギリス、金かけまくりのエンタテイメントはアメリカと、当てモノじみた眺め方もまた一興。
 意外だったのが、海外版の日本企業のCM。車のパーツで構成されたインクレイディブル・マシーン(いやピタゴラ装置か)だの、野生動物の情景としてありがちなヌーの群れとワニの激闘を人間が演じているとか、ヒネリが利いてて実に愉しくかつ見応えがある。こういうのを国内でもやってくれたらいいのにな。それともウケないお国柄なんでしょうか、ニッポン?


1月9日(月) 晴時々雪

 一昨日、昨日と降り続いて列島を大混乱に陥れた白い悪魔(ガンダムではありません)が少数ながら降下してくる昼下がり。伝統的な武器(スコップね)片手に闘って灯油の買出しに行って戦に勝ったものの勝負に敗れ、筋肉痛に寝そべりつつ録画しといたあれこれを消化。『古畑任三郎』は良かったな、わけてもイチロー役の演技が見事で。本物そっくりだったけど特殊メイクかしらん。
 とか無理やりにボケてるうちようやく昨日に追いつき「日曜洋画劇場」の特別企画『川中島』へ到る。どこらへんが洋画かってツッコミはひとまず脇へ置くとして、ちょいと面白かった。
 絵面のほうはそこそこ。信玄&謙信の若手役者はそれなりだが、主人公である山本勘助役の北大路欣也、それに板垣信方役の夏八木勲が実に渋い。特に後者、立ってるだけでサマになります。熱演名演技の類を見せられたことはないけれど、画面に出てくると視線を引き寄せる、いわゆる「華」のある役者さんだねこの人ぁ。
 で、井上靖の原作を思い出しつつ話を追っていたのだが、勘助の由布姫に対する情の方向性を見ていてふと引っ掛かりを覚えた。
 亡国の姫、しかも未だ子供といってもいい若さ。その美しさを仰ぎ見つつふれることなく、力を持たないその後ろ盾として無償の援助を惜しまない。これって…。
 ねこま「萌え、だよねえ」
 そう、恋愛感情でも友情でも忠誠心でもない(主君である信玄の都合が第一)これって、まさに萌えじゃなかろうか。稀代の名軍師、老境の萌え。謀略萌え戦国時代萌え下克上萌え。うーん、原作もこんなんだったろうか?ここはやはり読み返して、文芸萌えがあるかどうか確かめてみないとな。


1月11日(水) 晴のち雪

 久しぶりの上天気。おかげで日中は雪が解ける溶ける。交通量の多いところでは路面も見え、吹雪だの鹿が紛れ込んだので不通になってた近郊の高速道路も順調に流れているらしい。
 それにしても鹿とは何事かね。仮にも冗談にも200万都市と隣の市(有名観光地)を結ぶ高速、しかもほぼ全線が高架なんだけど。本当に生態系が崩壊してんだなぁ、やっぱり蝦夷狼再生プロジェクトは必要だわな。
 とか職場の窓外を眺めて呟くうち日が傾き、みるまに気温が下がり始める。路肩に並んだ雪山(ちょっと横穴を掘ればかまくらになりそうなシロモノ)の表面がテカテカ光りだしたところへまた雪がチラつきだし、いい感じにトラップ化してきた。せいぜい滑落しないように気をつけねば。
 (注:いい大人は普通そんなところへ登りません)

 そんな道をつるつる帰宅がてら、ヨドバシカメラへ。PCの切替器を購入し、ついでに玩具売り場を巡回していたら、コナミ製の『ガメラ』の食玩が投売りされてるのを発見。この類、中身の比率がどうあろうが一応は「お菓子とオマケ」の位置付けなんで、消費期限が来ちゃうと売っちゃまずいブツになっちゃうんだよな。
 もとより平成ガメラ好き、特に2は地元&自衛隊萌えいや燃えもあってイチオシの身である。これが買わずにいらりょうか。ええ買いました、箱でいっこ。よしやヲタクと呼べば呼べ。
 文語調の開き直りはさておき、箱は10個入り、アソートが気になっていたのだが、これが意外と親切だ。ガメラ・イリス・ギャオス・ソルジャーレギオンが各2個、巨大レギオンとガメラ飛行形態(レアアイテム)が各1個と、きちんとコンプできる。おまけに造形も塗装もいい。ことにイリスの出来栄えは出色、触手のくねり具合がなんともいえない。京都駅のジオラマを作って、ガメラと対峙させたくなる。
 またソルジャーレギオンも、妙につぶらな瞳がブキミ可愛い出来栄え。できればもっと大量に集めて、ありし日のススキノ交差点を再現したいのだが…って、箱どころかグロス買いしたって無理ですなそりゃ。


1月14日(土) 曇時々雪

 『よい子はみんな天国へ(ジェシー・ハンター/著、青木悦子/訳)』読了。
 連続殺人犯が子供を誘拐、いつ命が断たれるか、救出は間に合うかの2日間を分刻みで追う作品…なんだが、惜しむらくは、どうも緊迫感が薄い。
 少年専門だった犯人が間違って女の子を連れ去ったという、状況だけだとギャグかと思うような話。また表紙絵の可愛らしさに重なる序盤の被害者母娘の情景がほほえましく、直後の犯人の狼狽ぶりも相まって、事件発生後の展開もシリアスなものに感じづらい。さらに時系列に沿って関係者それぞれの心中を描写するスタイルにもその内容にも、さのみ新味も強いインパクトも感じられない。誘拐ネタとなればオチは幾つかの選択肢に決まっているし…という、これは読み手の慣れめいたものが邪魔なのだけど、とにかく全体にヒキが弱いのだ。
 それでも後半になって、ボディブローのようにじわじわと苦味が効いてくる。どうやら人格の分裂を引き起こしている犯人の、その異常な部分や哀れっぽさを強調されていないこと、それに少女の視点のいとけなさ愛らしさが丁寧に描き重ねられて、犯人が何をするか、自身にも分らないという状況の不安定さが感じとれるようになるのだ。さあ焦れ!とばかり煽り立てるような押し付けがましさが無い分、この危うげな感覚は非常にリアルなものがある。こうした盛り上げどころをもうちょっと前にも設定していれば、かなりの佳品だったと思うのだが。


1月17日(火) 雪

 『宇宙家族カールビンソン 4』を読む。「少年キャプテン」版(SC完全版ってやつね)のコミックスで全て持っているけれど、文庫が出たのをさいわい、容積を圧縮すべく買い直しているヤツだ。が、全部揃うまではと大判のも同じ棚に置き、あまつさえ文庫を手にするたびにその後の部分を読み返してしまってるので、却って膨張してる気がしないでもないが。
 同人誌時代からのシュールかつ辛口(おまけに地方色豊か)なギャグは、今読んでも色褪せぬ面白さ。ヤバいネタや毒気も結構あるのに、苦味を感じさせずからっと笑わせる間の取り方がことにも絶妙で、何度繰り返しても飽きないのだよな。
 しかし、思えばこのシリーズの最後半あたりから作風も絵柄も徐々に変わっていって、いまや完全にかけ離れてしまったのが惜しまれる。もちろん、そちらをこそ愛する人も多くいるのであろうけれど。

 とまあ、遠く過ぎ去った日々を思い起こしてはノスタル爺もといノスタルジーに浸る誕生日であった。またひとつ老いたことだし、大手を振ってますます盛んにイロイロやり放題で今年を過ごしたいと思う。よってくだんのごとし。


1月20日(金) 曇時々晴

 『黒い夏(ジャック・ケッチャム/著、金子浩/訳、扶桑社)』を読む。
 人は己の脳の虜囚である、と誰かが言っていた。けだし至言である。そこから狭い窓を通じて外界を見、他者の存在を知り、やがて向こうにも窓がありその中にも思考や感情があることを知るのは人の成長過程のひとつだろう。
 が、それが簡単にできれば苦労は無いワケで、完全に自己中心性を捨てることなんざぁ出来はしない。だからといって、一生そのままで居て、かつ己の欲するままに窓の外を牛耳ろうとしたら、そいつが世間にとってどういう存在になるかは自明だ。
 この話は、そういう青年を軸に、小さなコミュニティに暮らす人々のさまざまな「窓」を渡り歩いて展開していく。
 舞台はヴェトナム戦争とドラッグ、フラワーチルドレン、そしてシャロン・テート事件によって生臭い極彩色に塗りたくられた1969年の夏。件の青年によって冒頭でなされた犯罪を、なんとか暴こうとする刑事、かつての同僚とその恋人、都会から来た少女、青年の手下と情婦になり下がった友人、かれらを通じて語られる情景は加速度的に不安定になってゆき、やがて最悪の結果がもたらされる。
 驚いた。タイトルに偽りなし、ほんとに黒い。真っくろ黒。このテに不慣れな人なら具合が悪くなるんじゃなかろうか、それほど暗澹たる物語が綴られている。実にもう、これ以上無いほど黒ぐろと。
 ぶっちゃけ、二度と読みたくねえ。
 しかし、立場どころか性別も年齢も、いやそれ以前に時代背景も大幅に異なる作中人物の、その「窓」の中に居るがごとく感じさせ、あろうことか殺人犯をさえ深く理解させる作者の手腕には脱帽せざるを得ない。また、ジェットコースターめいた展開をみせるカタストロフのさなかに、ささやかな希望をちらつかせて手に汗握らせ先へと読み手を駆り立て、しかしむざんに踏み躙り摘み取ってゆくその筆の冴えも賞賛せずにいられない。腹の中まで真っ黒けに染まってみたい悪食に、ぜひお勧めしたい一冊であった。


1月24日(火) 曇時々雪

 ナイトキャップに1編ずつ読んできた短編集『クリスマス・プレゼント(ジェフリー・ディーヴァー/著、池田真紀子/訳、文春文庫)』読了。書き下ろしが「ボーン・コレクター」のリンカーン・ライムものとあって、ファンには嬉しいサービスだろう。
 ショッキングな描写は少ないし、書き方もごくごくソフト。総じて品良く綺麗に落としてあって口当たりがヨロシイ。テーブルマジックめいたコンパクトな技を少し引いた視点で眺めて、ほほう、とニヤニヤするのが愉しみ方かもしれぬ。
 ただ、ダールやグリーンやハイスミス、ブラウンやブラッドベリで育った短編マニアな手合いにはオチの透けてしまうものも少々。ま、そこはご愛嬌、手品は論わないが粋ということで。


1月29日(日) 曇時々雪

 友人の厚意で「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」を観る。同タイトルのゲームソフトの後日を語る映像作品、我が家では2人して本編好き(というかテキが主に本筋を遊び、こちとら経験値稼ぎ担当)だったので、些か戦々恐々である。なにせスクウェアの映像作品つーと、大ゴケした映画がまず念頭に来ちまうんだよなぁ。あと、ゲーム中ではピンキーストリートみたいなチビキャラだったのが、いきなりリアル系にってのはギャップがありすぎじゃ〜ないのかな、と。
 結果は案ずるよりなんとか。素直に楽しめるエンタテイメント作品だった。
 本編(とその後の続編)の落穂を拾う形で組み立てられたストーリーも、意外性は無いもののきちんと構築され、さりとて説明的になっていない。キャラクター群も、元の絵を踏み外さずブラッシュアップしてあって、素直に往時の思い入れを呼び覚ましてくれる。まあ、主人公が「ひとりタンビー」なのがちょっと某女子の皆さんを狙いすぎな気もしないではないが、相変わらずのウジウジ野郎っぷりがそのギャップを相殺してて、普通のファンにも違和感無いのでは。
 スピード感過剰なバトルシーンは年寄りの目にはキツいけれど、ゲームシステムをそこここに残していて、これまた懐かしくまた面白い。
 まあ、いずれのファクターをもっても一見さん向けではなく、そこらへんが昨今のゲーム市場の狭まり具合を見せている気もして、ジャンルのファンとしては一抹の憂愁も覚えないではないけれど。


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