店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2006.4

 

 

 

 

 

 

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4月1日(土) 

 チョコQの最新版、『日本の動物 11』を発見。公式サイトでは何の発表もなかったので面食らったが、フィギュア製作元海洋堂のサイトによると、先ごろのタカラとトミーの合併話が影響したものらしい。中身のフィギュアは最高のクオリティなのに、販売元に恵まれないシリーズだなあ。最初はフルタに協定違反され、次はこれかい。もう1回何かあったら「食玩界の超人ロック」と呼んでやろう。だからとりあえずシリーズ継続してくださいお願い。
 さて、そんな不安を抱えつつ10個入り箱でゲットし、なにげに開けたひとつがいきなりシークレットのオオアタマガメ。今はベトナムなどに生息しているが、大分県で化石が見つかったという、昔の日本の住人だったやつですな。名前のとおり大きくいかつい頭部、奇妙な形の甲羅、それに長い尾と、うっかりすると怪獣図鑑に載ってしまいそうな姿が面白い。口を大きく開けて身をよじった造形も躍動感があって素晴らしい。まあ、亀だから躍動つってもスローモーなんじゃないかとは思うけれど。
 その後も片端から開けていったが、今回も、というか回を重ねてますます、ディテールの細かさには舌を巻かされるものがある。本物と並べても遜色なさそうなクワガタ、カエルの膨らませた咽喉が半透明で柔らかそうだったりクジラの口の中にしっかり舌が見えたりと、造形師の執念めいたものを感じてしまった。
 ただ、そうしていっそ精妙といえるほど作りが繊細になっちまったもんだから、今回とにかく破損が多い。特に悔しかったのは、よりによってカエルの指が1本無かったこと。色違いのヤツと並べてみたら「お前だけ鳥に襲われたか?」みたいな不憫な印象だ。カエラー(カエル好き)として無念このうえなし、完品を求めてまた店に走るとするか。


4月3日(月) 雪のち曇

 昨日からの雨が夜の間に雪になり、見事なまでの銀世界。まあステキ、と言いたいところだが暦は既に4月、ふざけんな!
 撤退と見せかけてどこかに兵を伏せていたらしい冬将軍の謀略にハマった気がしてひたすら悔しいのであった。われ奇襲に成功されりコンチクショー。

 『スタイルズ荘の怪事件(アガサ・クリスティ/著、ハヤカワ文庫)』再読。
 実は、子供の時分に読んだとき、ポアロが大っ嫌いだった。オーバーアクションも気取った物言いも尊大さも、なにより稚気あふれる言動が、イヤでイヤでたまらなかった。60歳といえば分別ある大人どころか老人、なのにこんなことするなんてみっともない!と、大真面目に憤慨していた記憶がある。
 しかし、この年齢になってみれば「え?大人?どこにいるのそんなイキモノ」が現実なのであり、当時の自分の思い込みがおかしいやら可愛らしいやら。まして天才肌の人間の奇矯さに多々出遭った記憶をもってしまえば、ポアロのエキセントリックさなどいっそ常識の範疇にさえ入りそうなレベルで、ただ楽しいものだ。かくてすっかり宗旨変えして読むほどに、古きよき時代の謎解き物語は実に興趣深いのだった。今さらながらにミステリの女王を称え祭るばかりである。
 ただこの本、どうも昔の重みが無いなと思ったら、底本が違っているらしい。がっかりするほどのことはないけれど、どうせだったら同じものを読んでみたかったかな。


4月6日(木) 晴時々雪

 不時の休みがとれたので、ひとりぶらりと街へ出る。つか、このまま働き続けると今どき流行りの過労死なんぞしかねないんで強引にむしり取った振替休日なんだけど、そもそもいったい何時の分を振り替えたのか自分でもよー分からんあたり、かなり問題があるわな。

 街路樹の梢で、枝をくわえて捻くり回しているカラスを発見。小枝の多いプラタナスから1本むしって、どうやら巣材にしようとしてるらしい。おお、春だねえ。首をかしげてためつすがめつ、余分な部分を器用に折り取る仕草が可愛らしい。しばし眺めていると、ようやく気に入った形になったようで、くわえ易いところでバランスを取り、さっと飛び立って…2本隣の木へ。
 おい。
 そこも街路樹だよおいをいオイ。しかも思いっきり車道に張り出してるじゃん。人間たちに邪魔にされるよ撤去されちゃうよ!
 しかし警告したくても、こちとらドリトル先生ではないしソロモン王の指輪も持っちゃあいないのだった。ジェスチャーでもたぶん通じないし、おそらくは同胞たるそこらの市民に白い目で見られかねんので、いたしかたなく諦めることにした。許せカラス。

 トーベ・ヤンソンの描く『不思議の国のアリス(ルイス・キャロル/著、村山由佳/訳)』を読む。『ムーミン』の作者が描いた線の細いアリスはテニエル版のやんちゃ娘に対し、ひどく儚げで寂しそうだ。夢の中の光景というより、深い深い洞窟の中に差した光の腺をちらりと横切った何かを、ささっと一刹那に描きとめたような軽妙なペン運びは、けれど暗いイメージはもたらさない。重みなくさらさらと流れ躍りだしそうで、ふと微笑まされているのに気付くことしばし。めいっぱい性格の悪そうなチェシャ猫においては、おんなじ笑みを浮かべていたような気がしないでもないが。
 訳文も軽やかで読みやすく、絵柄にはなかなかマッチしていたといえよう。ただ、関西弁は勘弁して欲しい。方言ってやつぁ、それが何処のものだろうと、そこで突然、現実に引き戻されてしまう類の言葉だと思うのだよ。


4月9日(日) 曇時々晴

 文庫化を待っていた『ダ・ヴィンチ・コード(ダン・ブラウン/著、越前敏弥/訳)上・中・下』読了。う〜ん、面白い!ベストセラーになるべくしてなった本だな、これは!
 様々なロゴやマークにアレンジされることの多い「ウィトルウィウス的人体図」を模して横たわる死体。場所はこともあろうにルーヴル美術館、しかもそれが本人によって為されたものだとは?…とショッキングな導入部で読み手をがっちり掴んでおいて、あとはトリビア系薀蓄の綴れ織に巧みにフェイクを潜ませつつ謎と危機とを丹念に重ねて組み上げた迷宮へ、ジェットコースターの勢いで引っ張ってゆく。
 イメージとシンボル、歴史と文学、スタックされた情報量は徒事ではなく、またとりどりのそれが予備知識の多寡に関わらず興味を引き、かつは世界を広げまくる。最初は「ふふん、ヲタの好きそうなネタばっかりだな」とかシニカル決め込んでみたけれど、バックウォルドから死海文書を経てディズニーへ、なんて旅はそうそう出来るものじゃない、根っからの本読みに抵抗しようがあろうか。読みたい本読み返したい本が一気に増えちまったじゃないか、どうしてくれる!
 ストーリー部分の中心を成す敵味方の区別がつかない命懸けのコン・ゲームも、子供の宝捜しゲームに模した謎解きと散りばめられた小道具のおかげで、ありがちなサスペンスに留まらない面白さがある。迫る敵の正体を思い巡らせながら解くパズルは、本の外にいる自分まで時間に追われている心地にさせられ、いつしか必死の形相でうんうん考え込んでいたり。いや、敵は分かったんだ、だけど2つ目のパズルの答えは緑色でEから始まるヤツじゃないのか?ほんとに?
 さまざまな形の「情」も絡んで泣かせる部分も多い本作、映画もまもなく公開とか、また角川書房サイトの特設ページも関係図版がふんだんで非常に愉しい。なんでも本作のコースを辿るツアーまで企画されてるとか、いつか歩いてみたい巡礼路になったかもしれない。もちろん、バックウォルド流のアレは無しで、だけど。

 ただ、個人的にはマイ・フェイバリッツ・アーティストの西の横綱レオナルド爺様その人にまつわる秘密を濃い目に期待していたので、そこらはちょっともの足りなかった。その生涯に多くの芸術家のみならずチェーザレ・ボルジアとかフランソワ1世とかって当代随一の奇人変人を集めた人物の謎にも、もっとディープに迫って欲しかったな。
 またそういう「レオ(爺)様崇拝派」からすると、端緒になったあのモブシーンの解釈はどうも釈然としない。だってやたらめったら婀娜っぽいというかいっそエロい目つきの人物がどっさり居るのが作風なのに、あの程度でジェンダーを考え直すのはちと強引ですぜ。まあ、当方が『珍説世界史』の例のシーンとか思い出してたせいもあるのは大いに認めるところではありますが。<ダメじゃん


4月13日(木) 曇時々雨

 今日は先週と同じく代休で、家でのたくっている。とはいえ、ただのたくって日を終えると、ご帰還あそばした相方・ねこまが逆鱗まみれでマツボックリみたいになってブチ当たってくる可能性があるワケで、まずはコミック読みつつ洗濯と掃除。
 『PLUTO 3(浦沢直樹/著、小学館)』
 ヨハンだ、ヨハンが来た!…じゃなくて、オリジナルのスマートなラインを人間に置き換えてエプシロン登場。一般児童の保父さんではなく、戦災孤児を世話しているというところで、ますます物語の暗さが加速しそうだ。さらにウランとプルートゥの邂逅エピソードが濃厚にアレンジされて語られるくだり、詰め込まれた情報量もさりながらキャラクター描写に胸を衝かれた。ヒトとロボットの間が狭まることを素直に夢見るアシモフ信者の僕だけど、心をもった物を造るということは、それだけ哀しみの数が増えることなのかも知れないとも思う。
 『ベルセルク 30(三浦建太郎/著、白泉社)』
 前巻で突き抜けたオトナっぷりを拝ませてくれたファルネーゼ嬢のお母様に引き続き、今度はお父様が強面ぶりを見せつける。事勿れな浮き草どもの中にあってこそとはいえ、我田引水と牽強付会を足して割らないその挙動や見事。こんな両親の中でよく無事に(でもないか)成長できたもんだお嬢。
 クシャーン側の魔物が跋扈し酸鼻な情景が繰り広げられる中、力押しで駆け抜ける主人公たちの動きは非常にスピーディで、ひさびさに爽快。面白げなキャラクターも謎も増えたし、また先行きが楽しみになってきた。特に、人ならざる力を持つ者が何故人界に、ことにもその権力に拘り続けるのかが非常に謎。かつての妄執から抜けられないのか、はたまた彼らなりのゲームなのか?
 『鉄腕バーディー 12(ゆうきまさみ/著、小学館)』
 元気いっぱいな少女時代のバーディが表紙。なんだが、語られ始めた幼少期の行く先が「あの」映像に繋がるかと思うと非常に気が重い。素直で伸びやかで真っ直ぐという、好ましい子供の見本みたいなのが元気に遊んでる(いや、訓練だっつの)のが妙に切なかったりして。これはアレかね、そっち萌えの作者が同好の士を増やそうという陰謀だったりしますかね?放っといてもそんなんだったりしますから、何卒お手柔らかに。
 という本筋はさておき、いろんな種族がわらわら登場する「すぺおぺ」な世界描写もSF者の端くれとして嬉しい1巻でもある。メギウスさんちのベッドルームなんかまで考えられてて、マニアックな拘りがすごいっす。
 『ベルリンの豹〜W.W.2ドイツ装甲部隊戦記〜(たがみよしひさ/著、学習研究社)』
 二次戦末期、アフリカまでその威を揮いながら、やがて祖国へ逐い詰められてゆくドイツ軍の戦車乗りの物語。『GRAY』や『メタルハンターズD』に類する虚無感こもる話はシンプルな小品ながら好きな系統だ。
 しかし絵が、なあ。キャラは妙に下膨れだし線にはメリハリが無いし、どうしちゃったんだろう。漫画家につきまとう手の故障なのだろうか。ミステリものとしてはイチオシの『なぁばすぶれいくだうん』後期からこんな感じになっていった記憶があるけれど。
 『フラワー・オブ・ライフ 3(よしながふみ/著、新書館)』
 買い物とか仲間同士でのイベントとか、高校生がドタバタしそうなことが等身大に描かれていてうっかり懐かしい部分も。まあ、実際の高校生ってのはもっともっと子供で、世間知らずのバカで、かつそれを自覚してないモンですが。思い出すと恥ずかしくて、ちょっとアルゼンチンあたりまでトンネル掘りたくなりますね。
 ところで作中作「ルイジアナにひな菊咲いて」を別冊につけた限定版とか出さないんですかね?期待してる人は多いと思うのだけど、こういうのは何処かでアピールできないモンだろか?復刊ドットコム…は駄目だよな、やっぱ。

 夕方、チャットに上がったら、今までビジーの波に流されていたヒロツさんが、ようやっと時間を得て『ワンダと巨像』プレイスタートの模様。友人が同じものを楽しんでいると妙に幸せだよね〜と眺めていたら、なにか様子がおかしい。小爆発→中爆発→噴火、みたいにエキサイトしてる。ついにはブログで殺伐系ワンダのすさみ日記とでもいうべきレポが始まった。
 ヤバい。面白すぎ。
 巨像探しよりはもっぱら風景だのそこらの小動物だのに気を散らしつつ物語に惑溺した、いわば道草主体な僕とは違って、ごく真っ向からミッションに取り組んだヒロツ・ワンダのマジギレっぷりがすっげー愉しい読み物になってる。クリアした人はぜひ一度読んで、一緒に腸をよじってみてほしい。

 で、再プレイしようかなという気になってプレステを起動したのだが、何故か『トルネコの大冒険3 〜不思議のダンジョン〜』を遊んでいたりする。いや、何故もヘチマも、肩凝りがキツくてアクションゲームが出来ないだけなんですけどね。後半が面倒で完全クリアはしてないけれど、集中を必要とせずいつでもちょっと遊べるこういう作品もまた好きだな。


4月20日(水) 雨

 『闇を見つめて(ジル・チャーチル/著、戸田早紀/訳)』読了。
 上流の生まれながら没落し、遺産を受け取る条件として田舎町の屋敷で暮らすことになった兄妹の、グレイス&フェイヴァーシリーズ6作目。
 18、9世紀の英国にありそうな設定だが、時は大恐慌まっさかり、ところはアメリカとあって、今回はそれに絡んだ一大事件が物語の半ばを占める。一次戦の兵士たちが恩賜金の早期支払を求めて首都に集結しボーナス行軍(アーミー)と呼ばれたこの事件、実のところ歴史でちらと習ったような気がしないでもない…程度にしか知らなかった。しかし、その渦中を通り抜けた地方紙編集長の目を通して活写されると、非常に生々しくかつ重苦しく迫ってくる。民主主義を標榜するこの国は、昔も国民を蔑ろにしてたんだなぁ。
 とはいえ主人公兄妹は相変わらず、奇妙な暮らしに馴染もうと努力しつつ、微妙に浮世離れした暮らしを送っている。そんな中、ふたつの死体が発見され、例によって成り行きで探偵役に乗り出す2人。あやふやな立場の暮らしはどうなるのか、地元に解け込むことはできるのか、そんな日常的な問題もはらみつつの展開はドラマとして非常に面白かった。
 が、あちら立てればなんとやらで、謎解きのほうはいまひとつ。というか、ヒントの出し方を見ていると「読み手に謎を解かせる」ことにはあまり熱心でないようだ。読者への挑戦大好き派には、あまり向かないかもしれないな。


4月21日(金) 晴

 ネットをウロウロしていたら「サントリー烏龍茶:満漢全席 中国宮廷料理フィギュアコレクション」なるものを発見。去年の飲茶に引き続き…って、ええええっ?海洋堂サイトはマメにチェックしていた筈が、うっかり読み飛ばしていたらしい。
 ねこまが欲しがるに決まっているので、慌てて近在のコンビニへ。幸い、まだ大量にあったので、とりあえず10本ほど買う。
 …………重い。
 うっかりしていたが、1本500mlのペットボトルは結構な重さである。食玩のつもりでほいほい買っていいものではなかった。つか、どうやって片付けるべぇ。いやはや大人というのは大変なもんだ。
 いや、大人買いの正しい意味は知ってます。お願いだからツッコまないでください。

 『牧師館の殺人(アガサ・クリスティ/著、田村隆一/訳、ハヤカワ文庫)』を読み、冒頭で違和感を覚える。ミス・マープルって、こんな押しの強い金棒引き婆さんだっけ?記憶の中では、いま少しおとなしやかで物柔らかな印象だったのだが。もちろん、1人称で書かれてて語り手が最初に感じた印象がそうだというのもあるけれど、何か違う。僕のイメージでは、もっとこう…と言いかけて、はたと気づいた。アニメの、あの八千草薫さんの声を聞いてしまったゆえに「上品で物静かな老レディ」に激しくシフトされちまってるんじゃないか?
 声優として、口パクに合わせるという技術だけをみるなら決して「上手」じゃなかったけれど、おっとりした口調と耳に心地よい声だけでキャラを立てていたからなあ。あの声と、まだ習作段階でこなれてない設定とは合わないわな。いや、後者こそがオリジナルなのだけど。
 しかし話も終盤に至る頃には語り部どのの視点も変わり、脳内の像にきちんとマッチングしたのであった。めでたし、めでたし。ときにメイベルは出てこないんですか?<こねぇよ!



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