店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2007.4

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4月1日(日) 晴時々雪

 寝ぼけ眼で『仮面ライダー電王』を観る。2体同時に出現したイマジン同士の契約者の望みを巡る対決、片方が種族(?)のお約束を踏み外していたゆえの思いがけぬシンパシー、重い運命を強いられていたヒロインの憎しみと優しさの葛藤…と、盛り沢山のファクターをすべて30分(CMタイム込み)に凝縮してのけた製作サイドの手腕おそるべし、実にいいドラマだった。
 しかし「拳で語る」ヒロインって、なかなか居ないよなあ。それも違和感不快感をもたせることなく、却っていじらしく見せてしまうというのは凄いかも。不幸慣れの賜物で、あくまで優しく冷静に状況を見定めようとできる主人公あっての結末も納得である。うん、面白かった!

 さて、午後からは休日ならではの映画タイム。
 「原作付き」映画を観る場合、たいてい先に原作を読んでいる。前宣伝に負けてる訳では無く、紙魚そこのけの本マニア(或いは活字中毒、或いは書痴)なもので、気がつくと「読んでしまっている」のだ。
 こういう人間が「原作付き」映画に当たると、往々にして辛い目を見る。「原作と違う」なぁんて無粋を言うわけでは、もちろん無い。ただ、その段階を踏み越え原作のイメージすらぶっ壊す、酷いシロモノがあるのは事実だろう。映画として面白くなく、ふたたび本を手にする気さえ失わせるようなモノが。
 しかも、結構あるんだよなこれが。
 一番コタえたのは、何といっても『ペット・セメタリー』。ラストシーンに関する事なので詳しくは書かないが、愛と恐怖、絶望と至福が一瞬に交錯するような、あの一刹那、最後の一言。そこにこもる感情全てを十分に表現しうる状況でありながら、映画はそれを捨ててしまったのだ。最後の1秒で台無しになった映画という点で、ある意味歴史に残るかもしれん。
 だからって、そういう不満をあげつらって罵ってみても、あまり益は無い。原作を離れてなお面白いものだって沢山ある。世間的な評価はどうか知らないけれど『レリック』なんざぁ、オリジナルとはしっかりはっきり袂を分かってしまってなお、実に面白かった。まあ、怪獣映画といわれるとそこまでなんだが。
 で、今日は何を観たかっつーと『デスノート』だったりする。
 これがもう、見事なまでに原作改変だった。
 後半部ぶった切り。前半部分も端折りまくり。ネタも切り貼り、キャラの設定や役柄もかなり入れ替えている。
 だというのにどうしたのこれ。ヘタすりゃ原作より面白いですよ。
 原作後半の流れが気に入らず、どうせ映画でさらに劣化させた話になるんだろうと憂えていたのだが、前半の頭脳戦で話は見事に完結させられている。また各エピソードを端折るにあたっても、原作の随所からネタをチョイスしての組み合わせが巧みで、全く気にならない。おそらくではあるが、予備知識の無い人にも通りやすくなっているのではないだろうか。そして最後のオチは秀逸の一言、こうでなくては拮抗した頭脳戦の幕引きとは言えまい。コミックもこのレベルで終わればよかったのになあ。
 残念ポイントとしては、映画とは思えないチャチな芝居がそこここに見られること。特にモブがとにかく酷い、いくら名無しのエキストラといっても、日曜朝の特撮に負けるレベルじゃダメだろう。せっかくメインキャラクターが頑張って作った空気を台無しにするんじゃ、CG&声優のほうがマシだわな。監督つながりで群体レギオンでも暴れさせておかれよ。<それは無茶すぎ


4月12日(木) 雪のち晴

 今週明け早々に自転車が届き、まさにシーズン到来!と張り切っていたら翌日から荒天続き。一昨日から昨日の朝にかけては霰が降り注ぎ、うんざりしていたら今朝は視界が真っ白だった。
 ふ。ふふふ。挑戦かねこれは。何を考えているのかな。責任者はどこだ。この司葉が天に背くことがあっても、天が司葉に背くことは許さうぶぶぶぶぶぶ吹き付けてくるんじゃねえ!

 とか文句たれつつ出社。例によってだりだりと仕事しつつニュースサイトなど見ていたら、カート・ヴォネガットの訃報に出会う。思えばはるか昔の学生時代に手にした本では名前に「Jr.」がついていて、それが取れたのも見てきたのだから時は経つ筈、もう結構なお年だったのだな。

 帰宅すると、最近めっきり暴れん坊カラー120%化している子猫が両前肢をひろげて飛び掛ってきた。こいつのゆりかごは僕の腹〜などとゆくりなく思いつつこねまわしつ、なにはともあれ合掌。


4月15日(日) 曇

 「ぼ」は暴力の「ぼ」〜♪とかトーン低く口ずさみながら、布団の上の子猫ぼたんの暴れっぷりに耐えかねて寝床を抜け出す寒い朝。4月も半ばというのにストーブ焚くのは業腹ながら、遊んでやらないと彼女がますますエキサイトするのは自明の理、まずは人間が動けるレベルまで部屋を暖めないとならん。
 で、老猫チーズに餌をやって、あとはひたすらボールを投げて狭い室内でチビを走らせる。ウサギの毛らしいふかふかボール(振るとカラコロ鳴る)が好みで、投げると銜えてくる、銜えてくると投げる、投げると銜えてくる…の繰り返し。なんだな、猫用ピッチングマシンになるために40余年を生きてきたワケではないと思いたいのだが。

 ねこま(布団の中)「今にゆったりとして落ち着いた静かな猫になってくれるかなあ」
 まあ、なるだろう。どっしりとして横柄でぐーたらな猫に。それが現状よりマシかどうかは、判断の難しいところだけれど。

 ところでぼたんの最近の興味の対象はTV。こんなふうに伸び上がって、画面で動くものを追っている。

今日の1枚


 イコールTVを観るときは必ず猫の後頭部がセットということになるワケで、先週分からの『仮面ライダー電王』を眺め始めた時も黒いシルエット入りだった。
 …それでもいいや、というほどじゃないけど、なんか違和感まみれの話だったな。
 こう、粗いつーか薄っぺらいっつーか雑つーか。親子の情愛を描くには無理のあるネタはともあれ、キャラクターの性格や行動がこれまで蓄積したものからずるずる〜と踏み外してる気が。
 そもそも冒頭、寝ぼけてた?にしてもキンタロスの行動はどうかと。他人に無意味な暴力ふるうようなキャラじゃないっしょ?前半のマネージャーぶん投げは後でフォローしてるけど、2話目では乗員の確認も無しに車を海に放ってるし。あれ、運転手がいた筈だよね?
 そしてトラブルを起こしまくるキンタロスにいくらイラつかされたとはいえ、モモタロスが彼の追放を手放しで喜ぶってのはさらにイヤだなあ。口は悪くて粗暴だけど、ウラタロスにコロッと騙されるぐらい素直で優しいヤツってのがモモタロスのキャラクターでしょうに。
 あと、当たり前みたいに一般人に(しかもまだ出現してない)怪物の話をしたり、取り憑かれた人の口から事情説明が「契約完了後」に「語られる」ってのも今までと違うような。そもそも、タイムパラドックスネタでOKとするなら、これまでのエピソードは何だったのよってことにならないか。良太郎たちだって微妙に時間を改変しつつミッションこなしてきたのだし、そうでなかったら番組開始からこっちのあの世界の皆さんは、みんな怪物の記憶を持って暮らしてるってことにならないか?
 とこう文句を垂れてはきたものの、そんな話をしっかりかっちり演じきって最後まで見せてくれた役者陣には惜しみなく拍手したい。特に主役、上手い!新たなパーソナリティのしぐさや表情をしっかり身につけて演じ分けてる、若いのにたいしたもんだなあ。もちろん、声優やスーツアクターのバックアップも強力で、イマジンたちの個性をしっかりと際立たせている。これで話さえしっかりしてたら、さぞや面白かったろうなあ。
 と、後でサイトを見たら、今日は今までのメインライターとは脚本が違ったそうな。小林さん、早く帰ってきてください。さびしいよう。<最近「ディアボロの大冒険」にハマってます


4月18日(水) 晴

 数年ぶりに自転車で出勤し、通りすがる街の景色が変わっているのに驚かされる。古い店が無くなりでっけーマンションになってたり賃貸ビルのテナントが入れ替わって胡散臭げな物件になってたりして、ああ、街ってイキモノだなあ、と妙にポエジーな気分になってみる。いつかヒトに飽きてどっか行っちゃわないといいけどね。

 さて、時が経てば誰しも変わるが世の常、架空世界の創り手とて例外ではないなと『瞬き(まばたき)よりも速く(レイ・ブラッドベリ/著)』を閉じて思う。読み手のこちらが甲羅を重ね鈍ってしまったせいもあるけれど、語り口も話の筋も、なにか輪郭が曖昧になってしまっている印象だ。(それでも建築家ギルドの陰謀はにんまり笑わせてもらったが)こうしてもやもやと淡く薄くなってって、ある日本当に消えてしまうんだろうなあ…と、リアルで爺様と対面してるような心持になるのは、それもやはり描写の妙あってかもしれないけれど。
 ただ、それでも書き続ける、物語を記し続ける強烈な意思を鮮明に記したあとがきには、やはり伏し拝みたくなるほどの敬意を覚える。何かを創ろう形に成そうという衝動がある限り、迷わずそれに従い走れるだけのエネルギーは維持し続けていたいものだ。

 で、帰って筋肉痛の脚に飛び乗ろうとする猫を遠ざけつつ、ここしばらくハマっているレザークラフトの続きをちまちま縫う。ううむ、スピード感が無いうえに後で肩凝りも来そうだな。レイ爺様の境地を想うには、もっと別のジャンルで精進するべきか。


4月22日(日) 曇のち晴

 起き抜けに目が合ったとたん、黒い子猫が熱烈に甘えだした。オヤスミを言うのは少しの間死ぬことニャ、とか考えてるにちがいない。うんうん、ハードボイルドであるな。しかしトイレまでついてきて膝に乗るのは勘弁して欲しい。冷たい。つかこのニンゲンはソレを我慢するほどタフでも優しくもないぞ。出てけ!

 さて、強引なネタ振りをしてみたが、オリジナルの台詞を吐いた名探偵のパスティーシュ・アンソロジー『フィリップ・マーロウの事件(レイモンド・チャンドラー  他/著、稲葉明雄 他/訳)』を昨夜読み了えた。
 実を言うと幼少期にこのキャラクターと出会ったとき、今ひとつ共感できなかった。まず気障にすぎる気がしたし、当時の僕にとっては訳が既に古びていた。しかし何より、読み手の世界が非常に限られていたおかげで、孤高の探偵の往く卑しい街とそこに蠢く人々が理解しきれなかったのだ。思えば不思議なこった、小学生の僕が最も好んだ読み物は古典落語だったというのに。
 しかし、彼に魅せられ、同じように人の間を彷徨う探偵たちを世に送り出した人々が本書で描き出したマーロウ像は、かつてないほど魅力的だった。当時の世相や実際の出来事を織り交ぜつつ、より鮮やかに描かれた物語群の興趣は深く、飽かず読みこまされるものがある。
 えーと、残念ながら、オリジナルの手になる1編を除いては。
 たぶん、チャンドラーとは何か相容れないものがあるんだろうと思う。アレだ、きっと原作を好きじゃないのに同人誌で萌えちゃうようなモンなんだよ!<違うと思う

 ときにこの本、初訳時に2分冊だったものを文庫化にあたってざっくり半分切り捨てたというモノ。どうしてそういうことをするのかなあ、ポケミスが簡単に手に入らないことを思うといささか腹立たしい。いや、読めないこともさりながら、それはアンソロジーの編者に対して失礼なことじゃないのだろうか。フルコースを用意してコースのところどころをつまみ食いされるようなもの、シェフ殿いかに思し召す。編集者を料理する気になったらぜひ手伝わせていただきますぜ、デザートはボンブ・なんちゃらで。


4月30日(日) 晴

 例によって2週分の『仮面ライダー電王』を鑑賞。今回はメイン脚本家の手になるものということで、ちょいと期待してたのだが…うむ、何事によらず過ぎたるは宜しゅうないかな。新たな謎が次々覗く話の筋はいいのだけど、細部にちょっと気になる点が残った。
 例えば新登場のリュウタロス憑きの主人公が敵と対峙する時ですらダンサーがデフォでついてくるとか、そもそも公園で何で動物に餌やってんの小僧たちゃバカだけど悪くねーじゃんとか、最後に子犬が助かっていいのかこれもタイムパラドックスだろがよとか、どうも違和感が拭えない。まあ、これはホンの問題というより、演出や下準備の問題なのかもしれないが。たとえば動物の話なんざぁ、どっかのミニ動物園(子供がウサギ抱っこしてるような)ででもロケしてればよかったのじゃなかろうか。これはプロデューサーさんの仕事かな、もちっと気を配っていただきたいものだ。

 と、本編とは違うところでいろいろ考えてしまうのは大きなお友達の性ではあるが、幾分は昨日読み了えたこの本のゆえんもあるかも知れぬ。
 『仮面ライダーをつくった男たち(小田克己・村枝賢一/著、講談社)』。初代ライダーを原作者とともに作り出したプロデューサーの悲壮な戦時体験、バラックのような施設にスタジオを立ち上げたスタッフ、顔の出ない芝居に文字通り体当たりで挑んだスーツアクターたち。もちろんコミックならではの脚色もあるだろうけれど、ヒーローとその物語を作り上げようと熱意を燃やした人々の記録は強烈に胸に迫る。もちろん他の関係者や役者諸氏もさまざまに思うことあったろうと地獄大使こと故・潮健児氏の『星を喰った男』も重ねて追想にふけり、うっかり涙ぐんでしまったり。
 えーと、その、なんだ。現役の皆さんも子供や大きなお友達へ感動を運ぶべく、ぜひ頑張ってください。ずびーっ!<洟をかんでいる





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