店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2007.5

 

 

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5月9日(水) 晴

 日照時間が平年の半分以下という4月が過ぎ、GWに突入してからこっち快晴続き。花という花はいっぺんに咲き、鳥は騒ぎ出し、街路を走るチャリンコの子供らが倍増し、土埃に霞んでさえ陽光が熱い。実に爽快である。
 で、そんな中当方はというと、せっせと巣のメンテナンスをしていた。なにせ冬の間は窓を開けて掃除ができん(開ける気になっても凍ってて無理だ)し、季節モノの衣類や布団や靴を片付けるにも暖房器具の要らない時期にならんと手が出せない。室内の鉢物も植え替えて日に当ててやらねばだし猫の額菜園も肥料を鋤き込むに時期をずらせない、水槽の大掃除も必要だ。だのに相方ねこまはノンストップで仕事ときた。かくてまずは猫用ピッチングマシンとしての過酷な業務からスタートし、休みが明けてもなおその仕事だけは続いているのであった。やんぬるかな。<どこらへんが

 そんなこんなであまり本も読んでいないのだが、とりあえず印象に残ったものを。

 『蝉時雨のやむ頃 海街diary1(吉田秋生/著、小学館)』
 それぞれに個性的な三姉妹に届いた父の訃報。浮気の挙句離婚し娘たちから去ったことを許せない長女、曖昧な記憶に戸惑う次女、全く実感の湧かない三女。そんな彼女たちが葬儀を経て見出す新たな視点。もう子供ではなく靭い、けれどまだ繊細さを残した若い心の動きがやさしい筆致で描かれていて、こころ惹かれる作品だった。またこれに続く物語群も、たとえば子供の視点で見た友人の不幸などという日常の中の特殊を静かに丁寧に描いていて、ふと来し方を振り返らされたり。もちろん、僕ぁこんなに真っ直ぐに向き合えませんでしたけどね。
 本作はまた高校生の恋愛を生々しくかつ爽やかという離れ業で描いた旧作『ラヴァーズ・キス』と、人間関係が微妙に重なっていて面白い。ただ、絵柄がだいぶ変わってきていて、こちらから読み始めた人には戸惑うものがあるかも。

 『盗賊の水さし(今市子/著、集英社)』
 シルクロードを思わせる架空の国々を、そこに住むものすべての命の糧である水を主軸に描くシリーズ。今回はことにも、水の無いことが人をどのように追い詰めてゆくかを哀しく記した作品が印象に残る。中でも水を求めて彷徨う祭主の物語「苦い水」のクライマックスは重苦しいほど。少しく説明不足というか端折ってしまった描写がいくばくかあるものの、素直に「読まされる」物語と思う。

 『徳川将軍家十五代のカルテ(篠田達明/著、新潮社)』
 約300年の太平を保った江戸時代。その始祖から末代に至るまでの記録を紐解いて、彼らの健康状態の推移から当時の医療技術まで検証するという興味深い読み物。いささか牽強付会というか決め付けめいた箇所も見受けられるけれど、証拠を集めてさてと言う名刑事を見るような愉しみが先に立って気にならない。巻末には彼らの家族構成や夫人についての推論もあって、さらに往時の著名人や市政の人々についても傾聴したくなってきた。近刊では天皇家についてものされているようだが、ぜひコッチもお願いしたく。


5月11日(金) 晴

 出勤前のひととき、窓下を流れる川に浮かぶ花びらを眺めつつ寝ぼけ面で行く春を惜しんでいたら、背後で怪しい動きが始まった。相方が部屋の中央に仁王立ちになってTV画面を睨みつつ腕をぶんぶん振り回しており、その周囲ではすっかり狂乱お遊びモード(猫発作ともいう)に突入したぼたんが目をまん丸にして飛び跳ねている。はい、巷で話題の『ビリーズ・ブートキャンプ』ですね。
 51歳の元軍人さんと腹筋めざましく割れ割れなお姉さんたちがおっそろしくハイテンションに体を動かしている映像は、観ているだけでなかなか楽しい。つかこのノリ、ちょっと麻薬的ですな。ヘタすると運動もしてないのに一緒になって「ワンモアセッ!」とか叫びだしそうだ。
 ひとつひとつの動きを見ていると、確かにうまいこと要所の筋肉を使ってる気がする。ビギナーへのフォローも結構あるし、右と左と規定数ずつとか言わない大雑把ぶりも気楽でいい。なにより他人に見られず運動できるってのは悪くない。まあ、チェック機能が無いっつーデメリットもあるけれど、流行るのも分かる気がする。

 しかしアレですな、ブートキャンプっつーとヲタの脳裏にはまずフルメタルなアレのほうが浮かんでしまうワケで。ニコヤカ爽やかマッチョなビリーおじさんに油断していると、後半からハートマン軍曹が出てきてゴミとかクソとか罵られたりはせんだろうかと…いや、それはそれでちょっと観てみたい気もするが。

 まあ、近年めっきり運動不足なコチトラ、早起きしてちょっとやってみてもいいかもしれない。
 とりあえず、猫の来ない書斎物置で。
 …まずは床面積を確保せんとならんワケだけど。

 そんな「本で出来た賽の河原」に、このごろまた山がひとつ増えた。何かっつーと「ジョジョ」の第6シリーズ『ストーン・オーシャン(荒木飛呂彦/著、集英社)』だったりする。なかなか文庫化されないので痺れを切らして一気買いし一気読みしてしまった。いや〜、やっぱ面白いわこれ。少年漫画のオヤクソク的なものを歯牙にもかけず突き進んだ波乱動乱の果ての思わぬ安息とこみあげる切なさったらただ事ではない。失われたものは永遠に戻らず、人は先の見えない生を独り行くしかないとしらじらとした現実を突きつけられるにもかかわらず、キャラクターたちへの思い入れを切らせない描写の巧み。この作者の常でそこここに矛盾がチラチラしてても気にする暇も無く物語へ引きずられていってしまうのは、どこから来てる力なんだろう。
 ちなみに僕のイチオシは、やっぱりF・Fだろうか。SF者なら彼女の「存在」への想いの強さ、にもかかわらずそれを賭けて戦う情の深さに涙せずにはおけまい。いやそれ以前に、経験値の無さからくるピュアな行動が萌えとしか言いようがないですけどね。

 そういえば、このシリーズも4部辺りまでは独特なアップテンポのノリがあったな〜。アクションも独特だし、いっそこれでブートキャンプばりの体操とか作ってみてはどうだろうか。立ちポーズを集団で楽しんでる人もいたようだから、結構ウケるのでは?と思ったら。
 既にいらっしゃいました。
 さすが熱意あふれるファンは違うッ!俺には今頃思いついたことを平然とやってのけてるッ!そこに痺れるッ!憧れ…はしませんごめんなさいッ!


5月15日(火) 晴

 日が長くなってきたなぁと窓外を眺めつつ、今日は早仕舞いできそうだと思っていた夕方、いきなりメールが取れなくなった。すわサーバトラブルかとネットワーク担当者を召還するも、不具合の箇所がイマイチ特定できない。あれ?あれれ?と鳩首協議するうち、あろいうことかNTTフレッツの問題と判明した。うーむ。「予想外デース」などと一同CMの真似をしてボケてみるも、それでは手の施しようも無い。しかも発生1時間を経て原因の特定もできてない状態では、回復にどれほどかかるかも分からない。
 とりあえず早く帰れるわラッキーなのよ!と、ポリアンナごっこをして一同帰宅を決め込んだ。中年集団のそれは外でやったら犯罪レベルの眺めではあったが。

 で、同じく仕事にならなかった相方と合流して帰宅。暗い部屋に灯りをつけつつ奥まで辿り着くと、カーテンが半分かかっている。だらしないなあ。しかも斜めだ。
 ……斜め?
 カーテンレールそのものが半分外れて、窓を横切ってぶら下がってるではないか。えーと隊長、これは何でしょうね?
 ねこま「見たまんまでしょう」
 ええ、そりゃ見たまんまにゃ違いないですけどね。やっぱり直さないとダメですか?
 二度目の質問は犯猫も含めての沈黙をもって迎えられた。ついでに言うと、誰ひとり猫の手いっぽん貸さなかった。いや、貸して貰っても困るけどさ!


5月20日(日) 晴

 起き抜け、いつものように『仮面ライダー電王』を眺める。先週・先々週は小さなお友達向けのコメディになってて少々残念だった(とはいえエキストラ総出のダンス?シーンには笑ってしまった)けれど、今週はまた大きいお友達に嬉しい手の込んだドラマが展開している。
 主人公の高校時代(しかも何かあって中退したらしい)のクラスメートが味わった挫折が絡んでちょっぴり青春モノがかった今回のエピソード。その裏で、憑依したイマジン集団の暴れっぷりに体がついていかない主人公を見かねて取り憑き連中に「リストラ」宣言するヒロイン、これに思うところあるような主人公自身に不安にかられたイマジンたちが自己アピールするものの空回るばかりのギャグパートが展開。さらに毎回ちらちらと姿を見せていた謎の男(姉の婚約者…なんだろうなあ)がいよいよ表舞台に出てくる予兆もあって、大いに盛り上がった。うーん、いいなあ上手いなあ今回の脚本家さん。

 ライダーといえば、今年の映画版では渡辺裕之氏が敵?ライダーとして登場だとか。平成『ガメラ』シリーズで、陽に焼けた精悍な顔立ちが「うわ、訓練やり込んでそう」と思わされた自衛官役が思い出される人である。
 しかし、これを報じたニュースサイトで「史上最年長のライダー」と書かれていていささかビックリ。それはてっきり『アギト』の木野さんかと思ってました。よくあることなんだけど、役者さんのイメージって、ハマり役の時に脳裏に焼き付けられるものなんだな〜。


5月27日(日) 晴

 ここしばらくの雨模様(つか一部すんげー荒れ模様)が去って、爽やかな日曜日。とはいうものの地面はまだ濡れたまま、市内の小学校の運動会は軒並み中止だそうな。早起きしてお弁当を作ったであろうお母さん方にはご苦労様としか言いようがないな。ま、こちとら子供の頃から(勝手に野山へ分け入る以外は)スポーツ大嫌い、運動会に雨が降れば天の恵みと本を掴んで押入れに隠遁したクチ。おそらく今の子供たちの中にも同志は大いに違いない、さあみんな、布団の中からグダグダとTVを観ようぜ!

 とまあ、ダメな大人の規範たるべく眺め始めた『仮面ライダー電王』だが、これがうっかり身を乗り出してしまうほど面白かった。錯綜するネタを上手に組み合わせ、その陰で新たな事実をチラチラと展開する(例えばイマジン達は過去で明確な攻撃目標を指示されるらしいことなど)なんざぁ、話の拵えが上手いやね。またいつもに増してキャラの描写が秀逸。何だかんだ言いながら良太郎の身を案じて自ら去ろうとするタロスたちと、実は(まあベタではあるけれど)彼らのためにも強くなろうと特訓していた良太郎。で、その状況が見えずにやきもきしまくったばかりに「どうして相談してくれないんだよ」と不貞腐れてみせるモモタロス、かつて「ごめんなさい」させられた彼に今度は良太郎が素直に謝罪と感謝を口にする。友達とか友情とか定義せずにしっかり結ばれた絆が素直に描かれて、実に実にほほえましい。
 しかし、終幕で出てきた同姓同名君は何だか心配だ。『響鬼』の時の傲慢少年演ってた役者なものだから、そういう表情や台詞がチラつくとそれだけでイメージが甦ってしまう。ちゃんと違う個性として立ってくれますように、ご本人のためにも期待している。

 今週読んだ本2冊。

 『明治大正 翻訳ワンダーランド(鴻巣友季子/著、新潮社)』
 語学能力の乏しい身ながら海外小説が好きなもので、イコール翻訳者の皆様にはいつもお世話になっている。これは、その道の嚆矢となった人々の、血の滲むような苦労と努力のプロジェクトX…では生憎ない。どっちかというと、現在でもこの職業につきまとう瑣末な諸問題が先達の時代から既にあったんだな〜という読み物だ。おかげで、著者から見れば翻訳の偉い人!なのかも知れないが、どうもピンと来ない部分もチラホラ。たとえば原語の感触を重要視した森田思軒の主張するところは理解できるのだけど、読み手が求めるものとそれが果たして一致してるのか、今もその方向でチャレンジしている訳者諸氏を含めて伺ってみたいところだ(ほんとにさぁ、困るんだよストーリーを追うのにつまづかされるような自己満足訳は)。
 閨秀翻訳家の血縁関係とか、アマデウス』初訳者の素顔とかの意外な話題も(ことにも前者は「天才を身内にもつことは一種”生き延びる”べき災厄である」という切り口が衝撃的ですら)あるけれど、おしなべて薄味。一般読者にアピールする要素は少ないかな。もうちょっと尺があれば濃くて面白くなった気はするけれど。

 と言ってるそばから翻訳物ミステリ『水底の骨(アーロン・エルキンズ/著、嵯峨静江/訳、ハヤカワ文庫)』。
 前作『骨の島』がさんざんな出来で、これがダメならもうさよならだぜスケルトン探偵!と一種悲壮な覚悟で手にしたのだが、めでたく面白かった。まばゆいハワイの陽光と風光明媚な景色の中、息詰まるようなサスペンスも『暗い森』の胸引き絞る哀感も無いけれど、最小限の死者からの謎かけの巧みが活きて楽しく謎に引き込んでくれる。わずかな骨から引き出された事実を軸に、死んだのは?殺されたのは?殺したのは?という、いわば多層構造のフーダニットが二転三転頭をぐらつかせてくれるのが、実にもって心地よい。
 一定のところまで来るとオチが見えるうらみはあるけれど、それでも終幕まで美味しく骨をしゃぶりつくせたと言えよう。次回も大口開けてお待ちしてます。


5月30日(水) 晴

 帰宅途上にハンズへ立ち寄り、マグライトのコーナーへ。2AAの電球部分を他メーカー品のLEDに換装して使ってたのだけど、先日アシ部分がぽっきり逝ってしまわれたヤツだ。ちょっと高価い(いや本来の電球の10倍ぐらいする)けど、チャリのメインライトとしてはこっちのほうが対向車にアピールできていいんだよね。
 と、売り場できょろきょろするものの、モノがさっぱり見つからない。不本意ながら店員さんに尋ねると、取り寄せになるという。マグライトが自社でLEDバージョンを出したから、もう需要は無くなったと思われてるのかな。
 実のところ、LEDバージョンにはあまり魅力を覚えない。まずサイズが、旧来のAAより電池いっこ分長い。これは腰ホルスターに常備してる人間にはかなり迷惑である。つか、カバンに入れて持ち歩く人にはもっと迷惑だと思うが。
 また、電池蓋にあたるケツ部分にあった紐通しの穴が無いのも痛い。屋外で使うに「あって便利」なモノを、なんでカットしちまったかねえ。いや、この場合は金属をカットしなくなっちゃったんだろうけど。

 ぶつくさ言いつつ売り場を徘徊していたら、折り畳み式のハンモックを発見した。昔ながらの竹のオシボリ入れを巨大化させたような舟型の枠に涼しげなネットをかけて、どこでもユラユラできちゃおうというスグレモノだ。しかも値段が7千円強と、微妙にリーズナブル。うーん、欲しい、欲しいぞ。物欲神今まさに降臨せり。さあ者ども踊れ、奉納舞に「買うたやめた音頭」を!
 とはいうものの、我が家に置けば早晩ぼたんの餌食になるのは目に見えている。最近とみに乱暴の方向性が微妙になり、布や紙を分解することに血道を挙げている彼女が、これを見逃すとは思えない。だからといって奥の書斎物置はいまだに混迷の地であり、あそこに物を増やせばねこまの鉄拳制裁が待っている。
 すみません物欲神様。シモベはまだ死にたくありません。
 かくて根性無しは帰宅し、ひそかに奥の間の片付けに取り掛かったのであった。そうさ、スペースがあれば文句もあるまい!<諦めないあたり死亡フラグかも。


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