店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2007.11





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11月2日(金) 曇時々雨

 大通公園が黄色く(臭く)なり、山が白くなり、そしてぼたんはごまだんご模様の耳つき瓢箪から暴れん坊の大猫(3.5kg)になった。まこと季節の移ろいとは早いものである。1年前にやろうとしてたことが棚上げのままという数年を過ごしている中年としては、このままうっかり年を重ねてゆかないよう、自戒すべき徴と言えようか。
 …3年越しで作ってるフィギュア、なんとかケリをつけんとな。<なにかちがう

 『千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選(シオドア・スタージョン他/著、中村融/編、創元推理文庫)』読了。温故知新というべきか、古典的な名作をメインにさまざまな異形を揃えてはある、ものの。
 残念ながらイマイチ。
 まず、語り口が幾分なりと似通ったものが並んでいる気がする。どれもこう、淡々と語るタイプでメリハリが無い。また肝心な怪物どもも、いまひとつインパクトに欠けるような。これは漠然と「怪物」をテーマに据えてしまって、採集範囲が広くなりすぎたんじゃないかな〜と愚考するが、いかがなものか。
 もっとも、最大の要因は読み手のこちとらが甲羅を重ねすぎて異形化してることかもしれぬ。数多の怪物の傍を駆け抜ける前の若人には、あるいは却って新鮮なのかな。


11月4日(日) 晴

 月初にぶちぶちと繰言したことを正すべく、変化を求めて魔窟の整頓。本の詰まったダン箱の山を脇へどけ、新しく導入した棚を組む。奥行き45cm、高さ170cmばかりのコレに、保存確定の本をプラケースに移し替えて詰め込んでいこうという計画だ。まずは時代小説から、ざっくりばっさり斬り捨て御免といくことに。とはいえ敵はかなりの多勢、味方は烏合の…どころか増援は全く望めない状況。
 半日ばかり闘って、とりあえずは引き揚げと相成った。捨て台詞は「このままでは済まさぬぞ」ということで再帰を誓ってみたりなんかして。どうみても悪役です、本当に以下略。

 夕方、コミックを2冊読む。世界観が180度ほども違うものなのに、いずれも読み出すと他者の記憶をすっぱり拭い去って作品世界へ引き込んでくれるのは流石。
 『扉をあける風(波津彬子/著、小学館)』
 「うるわしの英国」シリーズ最終巻、エヴァディーン子爵年貢の納め時の巻。ある程度予測の範疇ではあったとはいうものの、終幕近くのドタバタは結構美味しくいただけた。間を彩る物語群も味わい深く、ことにこの時代の物語のお約束「孤児・幽霊屋敷・陰気な保護者」で構成された出だしからミュージカル全盛期のようなロマンスに持ってゆく掌編が好ましい。
 さて、このシリーズは終わったとはいえ作者にはまだこの時代への扉をお持ちの様子。次はいかなる景色へいざなっていただけるのか、まだまだ後を追いますよナミガシラ先生。

 『ヴィンランド・サガ 5(幸村誠/著、講談社)』
 えーと、主人公はウサギのスープ食ってました。
 と言ってスルーしちまいそうなほど、今回のトルフィンは影が薄い。理由は簡単、オッサン達がカッコよすぎるのだ。古の王の帰還(というか、それに擬えた統一王朝なんだろうな)を期しその為にはいかなるものも省みないアシェラッド、仕えた主のため文字通り全てを擲ち最期に至ってなお心を残すラグナル、ヴァイキングの精神そのものの戦をのみ希求するトルケル、果てはアシェラッドの命にただ真っ直ぐに従うビョルンに至るまで、己の道を確立した漢たちの姿があまりにも鮮烈で、未だ迷いや悩みを捨てきれない少年はまるっきりお呼びじゃないのである。いと哀れ。
 血腥い時代を反映した印象的な台詞もまた多く、ことに序盤の神父の祈りと、捕虜尋問の折のアシェラッドの歴史語りは痛烈このうえない。この物語がやがては表題の地へ辿り着くとしたら、そこでまた遥かな未来に起こるであろうことを思わされる皮肉に胸痛むばかりに。


11月9日(金) 晴

 枯れ残った草の葉が白く霜を置く朝。通勤チャリからカバーを外したら、小さな氷がぱらぱらと散った。いよいよ冬将軍の先遣部隊がやって来たということか。とりあえず防戦一方とはいえ、装備の類を整えなくては。えーと、まずは風邪薬から。<弱気にもほどがあり

 『KATANA 2 虎落(かまたきみこ/著、ぶんか社)』を読む。
 当方、物神付喪神系の話は大好きで、著者かまーさんの『深海蒐集人』もまた然り、である。で、このシリーズの1冊目をもちろん楽しく読んだのだが…今回、残念ながら今ひとつ。
 なんというか全体に、尺が足りない窮屈さと語り不足な空白が合い混じった印象がある。たとえば表題作、展開は正直ありがちなとこへもってきて、巻末に突然登場する学者さんで強引に決着をつけているのも座りが悪い。最初っから「空気の読めないヲタ系キャラ」とでもして闖入させていれば、もっと話に弾みがついたのではなかろうか。
 物神たちが「刀」である特性を活かしきれていないし、全体に同工異曲が目立つ感も否めない。特殊な職業についての下調べもみっちりされているようなのだから、刀に付随する道具やパーツをお題に捻ってみてはいただけないものか。期待してお待ち申し上げており候。


11月11日(日) 曇のち雨

 今日は来客があるので、早めに起き出して部屋の掃除。箒と小型掃除機の二刀流で綿埃と戦っていた筈が、はっと気付くとその中で転げまわる3.5kgの黒い塊を相手にしていたりするのはご愛嬌…と言いたいが、手間が倍増するので正直勘弁して欲しい。もっとこう、動きが鈍くてモノグサな生き物になってくれんかな。たぶんあと10年は無理だと思うけど。

 昼食がてら録画の『仮面ライダー電王』鑑賞。まず主題歌が変わっていたのに驚く。通年ものの特撮では恒例のことだけど、曲は同じで歌い手だけが変わるというのは珍しい。つか、4タロスにこの歌って…決して上手いとは言えないんだけど、こんなの彼らと確実に別れる最終回で聴かされたら号泣しそうな気がするぞ。なにせ「最終回手前で主人公死亡」なんて凄い話を書く脚本家氏のことだから、どんな大技を決めるか分かったものではないしなあ。
 で、今回。
 悲壮としか言いようのない「未来を巡る戦い」の本質に踏み込んでゆく主人公たち、その過程で己の現在をも切り捨ててゆく侑斗と、たとえそれが誰より大事な姉を泣かせることであろうと「時間=人を消すことを許さない」良太郎。ともに悩みを振り切って最善を選ぼうとするその姿はキンタロスならずとも泣けまくり。
 が、そのシリアス話の真っ最中にもボケが散りばめられ、涙腺にアタックくらってる最中にうっかり吹き出すことしばしば。ネタの軽重を見事に使い分けて観客を手玉に取ってくれる上出来ぶりは素晴らしい。このまま調子を落とさずに終点めがけて突っ走って欲しいな。

 午後、柚さん来臨。相方と年末に氷上我慢大会(尻を凍らせつつ、タイツみたいな姿で跳んだりはねたりするスケーターを見物する)に行く打合せがてら、久々に我が家の猫をこねていただく。もっとも、愛想良くすり寄ったのはチーズだけで、黒い内弁慶は天岩戸(別名:押入れ)に逃げ込んで隙間から目だけギロつかせていたのだが。
 朝の傍若無人っぷりはどこへ行ったのやら。そんな姿でも可愛いカワイイとカメラを向けまくるお客様のため、せめて挨拶ぐらいは仕込めないもんかいな。


11月18日(日) 曇時々雪

 どんより薄暗い休日。太陽エネルギーが補充できないので出掛けるどころか寝床から出るのも大儀になり、ひねもすゴロゴロ寝て暮らすことにした。猫を行火に、さて読書。

 『鉄腕バーディー 17(ゆうきまさみ/著、小学館)』
 本筋をちょっと外れて主人公の日常生活…「だけ」な〜んて無駄をこの作者がする筈もなく、アルタ人がこの地に残した血脈を辿るミステリー・ツアーがアクション満載で展開する。さてこの旅はどこに行き着くのやら、なんだかゴメスさんの回想?シーンあたりに衝突しそうな予感もありますが。

 『HELLSING 9(平野耕太/著、少年画報社)』
 すいません。間が空きすぎて記憶がぼやけてます。なモンだからアンデルセンと由美江の最期とハインケルの状況が切ないばっかりで、肝心な主人公たちの激闘にさっぱりのめり込めない体たらく。だって皆変貌しちゃってるし、件の三人(特に後者コンビ)が好きだったんだよう。まあ本編に登場した時点でこうなるだろうとは思ってたけどさ。ぐっすし。

 さて今日の本命。ひさびさの当たり。
 『殺しが二人を別つまで (ハヤカワ・ミステリ文庫 コ 12-1) (ハヤカワ・ミステリ文庫 コ 12-1)(ローラ・リップマン他/著、ハーラン・コーベン/編、山本やよい他/訳、ハヤカワ文庫)』
 徒に年齢を重ねてしまうと、様々なものに新味が無くなりがちなものだ。ことにアイディア命といってもいいミステリ(SFもそうか)読みには。「このネタは何処かで見た」と気付いた瞬間に、結末まで行くのが大儀でならなくなってしまう。
 書き手が凡庸だったり、訳者にセンスが無い場合には。
 本書においてはその欠点は無い。どころかさまざまな愛の形とその終焉を「ブラッドベリっぽいな」「ダールみたいだ」「こいつはグリーン風味」などなど偉大な短編書きたちを想起しながら劣らぬものとして楽しく味わえるのだ。しかも、ラインナップがまた気が利いていて、苦笑から虚無感、悲哀から爽やかな感動まで佳味香味のフルコース。量から言うとランチかなとも思うが、さらに馬齢を重ねて全部忘れた頃にまた読み通したいものだ。
 なんだか軽めのロマンスものみたいな表紙も、読後に見れば皮肉な印象があって悪くない。ぜひこのグレードで、今度は満貫全席をよろしく。


11月23日(金) 曇のち晴

 『仮面ライダー電王 超バトルDVD』が届く。お子様向け雑誌『てれびくん』の全員プレゼント(つーか頒布品)だが、子供の居ないファンとしても押えておきたいコレクション、早々に申し込んでおいたのだ。
 で、本編の上出来ぶりにかーなーり、番外編としての展開を期待していたのだけれど。
 残念ながらドラマとしては全く体をなしていない。この点『龍騎』に遠く及ばず、どころか間の悪さ(というか観てるこっちの所在無さ)は『555』にすら劣る。なにせ『うたっておどって大とっくん!』というタイトル通り、画面に合わせて踊るしかない特訓ビデオだからである。ビリー軍曹のブートキャンプと一緒…つーかパロディみたいなシロモノだ。強いて見所というなら、スーツアクターと声優の演技の見事なコンビネーションか。
 これは画面と一緒にアクションし叫べるようなちびっ子たちのためのものだと、大きいお友達は改めて認識するしかあるまい。でなければ開き直って一緒に踊るか。さあ、いくぜいくぜいくぜクライマックスだぜ!<床が抜けます

 『猫パンチをうけとめて(南里秀子/著、幻冬舎文庫)』読了。
 年季の入った猫飼いとして、また猫シッター業を営むプロとしての視点から、この動物と飼い主(著者によれば同居人だが、往々にして奴隷)の在り様を読みやすくまとめた一冊。餌のこと寝床のこと病気のこと遊び道具のこと、とにかく多岐に渡って記されており、四半世紀ばかり猫と付き合っている身にも新たな知識を与えてくれるものがあった。斯道に踏み込もうと心に決めた明日の犠牲者に、ぜひ餞として送りたい。
 とはいえ良書だけにただ1点、どうにも不愉快な記述があるのはいただけない。ペット禁止マンションにおける猫飼いを、ご近所に愛想を振りまくことでなし崩しにせよと勧めるような記述はいかがなものか。猫が生理的に大嫌いで声を聴くさえ嫌な人だって世の中には居る。「冷たい」の「こんなに可愛いのに」などと言う愚は筆者には無いとは思うが、逆にお隣さんが「ウチでwetaのブリーディングやってるんですよ〜」とニコヤカに話しかけてこられたらどうよ、という話なのだ、そういう面をこそもっとしっかり記し、ペット禁止マンションに住まない選択をこそ声を大きくしてされるべきではなかったか。
 もちろん好き嫌いだけではない、アレルギーで呼吸困難になる人、嗅覚が鋭敏で動物の臭いに耐えられない、さまざまな理由で動物が居ない環境というサービスをあえて買っている人たちと思い、そうした相手に我慢を強いて飼うような真似を断じてしない。それもまた猫飼いがわきまえるべきことであり、それでこそ他者の理解を得てペットと幸せに暮らせるのではないかと思う。今も最前線でキャットシッター業を営まれている中、ぜひそうした啓蒙活動もよろしくお願いいたします。


11月30日(金) 晴

 危機にさらされ続けると、人の知覚はその状況に対し研ぎ澄まされてゆく。例えば剣客や歴戦の兵士が、かすかな物音にさえ敵の気配を読み取るように。
 そして猫飼いにも、下僕生活のキャリアによってこの種の知覚が備わるようになる。ヤバいことをやらかした猫がこそこそ歩く仕草、あきらかに目が泳いでいる胡乱な表情、そして室内に漂ういや〜な空気…と読み取りレベルが上がってゆく。ちなみに空気に臭いつきの場合は初歩レベル。
 さて前置きが長くなったが、そんな気配にはっと目覚めた早朝。ぼたんがしっかりやってくれた。小型水槽の棚のあたりに漂う妙な空気に引かれて行くと、広〜い水溜りが。フィルタのチューブに針で突いたような穴があり、細い水流がぴゅー♪と吹き出していた。
 最近妙にこのへんをうろつくとは思っていたが、手を入れるとかじゃなくてコレですかい。痛いところを確実に攻撃してくるなあと、冷たい床板を踏みつつ瞬着とサランラップとビニールテープとワイヤーで応急処置。さらにフィルタ自体をプラ水槽に入れて、万一に備えた。ついでに室内の植木鉢を集めて、水槽周辺をガード。我ながら事後の対応は実に素早くかつ適切だったと思う。
 惜しむらくは剣客や歴戦の兵士と違い、猫飼いには事態を未然に防ぐ能力は備わらないのだった。いや、備わってたらそもそも猫なんか飼わないと思いますが。

 それにしてもこのテトラのパワーフィルターAX-30、もともと脆弱そうなパイプだとは思っていたが脆すぎる。フィルタ本体の使い勝手がいいだけに非常に惜しい。アメリカメーカーと中国工場の限界なのか、と意地悪なことを言いたくなってしまう。科学力は世界一ィィィ!な国のエーハイムを見習っていただきたい。つかアメリカ人にだって機能性の極みのエレクター・シェルフが作れたのだ、出来ないことは無いはずだ!
 ・・・とりあえず交換部材を買いますから、頼みますぜホントに。


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