店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2008.1



1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

31



[ 銀鰻亭店内へ ]

[ 以前の日記 ]
2000  9 / 10 / 11 / 12
2001  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2002  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2003  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2004  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2005  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2006  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2007  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12



1月3日(木) 曇時々雪

 寝正月の2日が過ぎ、ねこまは今日から仕事始め。ぼーっとTVを観るのも独りだと却ってつまらぬもの、相変わらず魔窟状態の奥の間へネタ探しいやいやいや、整理整頓事始とて潜入。しばらく触っていなかったプラカラーが干上がっていたり積み上げた本の下のほうがカビてたりとさっぶい事態に出くわすが、こんなものは序の口である。なにせ、20年近く置きっぱなしのアクリル絵の具なんてのも抽斗の底に眠っているのだから。まあ、昨年偽装問題で沸いた消費期限が明記されてないので、思い切って使うだけだけどな。

 『変な学術研究 2(エドゥアール・ロネ/著、柴田淑子/訳、ハヤカワ文庫)』
 ヒトたるものがいかに多様な…というかアホな方法で死に至れるかということを楽しくカロヤカに書き綴ったショートコラム集。フランスは鉄道自殺に向かないとか首吊りロープの長さと高さの選び方によっては違う結果になってしまうとか、非常に参考になる。ま、自分で試そうとすると結果の確認ができないのが難点ではあるが。日本でもぜひ補遺として「公園の遊具を誤用する」とか「修学旅行先の宿の窓から出ようとする」とかのダーウィン・アワードな事例をまとめてはいかがか…って自殺じゃないかそのへんは。つか年頭からナニを読んでますかねワシは。


1月8日(火) 曇時々雪

 仕事始めから2日、いまいち気勢が上がらない。年末に手をつけたレザークラフトだのプラスチックの人形だの何故か発生してるフェルト細工だのを途中にしてるせいだろう、とっとと家に帰りたいもんだと思いつつ溜まった仕事の山に追いこくられていたら、年末にご母堂を亡くされたMさんから、とんでもないことを耳にした。
 我々の上司S氏も葬儀に出席したのだが、かける言葉に事欠いて「逆縁は親不孝」だの「これは親離れの機会」だのと、マナー集の禁則事項みたいな事ばかりを口にのぼせたのだそうな。
 えーと、Sさん。確か貴方こちとらよりふたつみっつ年上、四捨五入すると50でしたよね。本人がするならいざ知らず葬儀における弔問客、要は外野が「よかった探し」なんかするもんじゃねぇと分かってなきゃあオカシイでしょうが。いやさご自身もう親御さんはおられない筈、かけて欲しい言葉かどうか分かるでしょうが?善意でかける声だとて、言葉を選べないなら意味ないっすよ。
 基本的にトラブルに怒りをもってあたる傾向があるため、我が友ストロハイムの葬儀に際して上滑りな説法を並べた坊主に殺意が湧いたことを昨日のことのように思い出し頭に熱が吹き上げたりしたのだが、当のM嬢のほうは大人らしく耐えておられたのでソイツの持って行き場も無くなってしまった。
 頼んますよ、もぉ。
 情け無くぷしゅう、と気が抜けて、勤労意欲も大幅にマイナス。
 抜けた後を埋めるべく、終業後はススキノへ転がっていったのは責められまい。もっとも、転げ込んだのはスープカリー屋だから、後で我が身を責めねばならんかも知れぬが。

 まあアレだ、この状況であえて「よかった探し」をすると、反面教師による「沈黙は金」の実例が得られたってことですな。常日頃から小ネタではいろいろ貰ってますけどね。


1月10日(木) 曇時々雪

 最高気温が氷点下の日が続き、ただ歩くだけで体力を削られる今日この頃。RPGの毒の沼かよ!ってツッコミはさておき、動くのがしんどい→極力動かない→微妙にメタボ→振り出しに戻る、という嫌なループに陥りつつある。こんなんではいかんだろうと思うのだが、なるべく動かずダイエットを考えると必須の食餌療法だけはなかなか取り入れられない。
 なぜかというに、致命的に料理が苦手なんである。
 元来がシングルタスクなので1品だけなら何とかデッチ上げるのだが、バランスよく食べるために複数品を用意ってのがまず出来ない。ついでに1品だけにしても、途中で齟齬の無いようにじっくりとパーツを洗い切って並べてからでないとスタートできない。要は工作と同じ流れでないとダメなんですな。

 で、そんな人間にはコンプレックスを刺激されまくる1作『きのう何食べた? 1(よしながふみ/著、講談社)』 。なんだこの主人公の(ちょっと真似できそうな気にさせられる)手際の良さは。当たり前の日常を彩りそうで、かつ一工夫された惣菜メニューの数々は。
 よしなが氏の作品はつとに偏愛していながら正直ホモ系がちょっと苦手で今日まで読まずにいたのだけれど、裏表紙に並べられたメニューを見たらページを開かずにいられようかってもんなのだ。で、作中で主人公がつらつら語るレシピを眺めて生唾ごくり。いや〜、描写が旨いや上手すぎ。違う意味でアブナイ本だったなこりゃ。
 実際、主人公がホモであることは周囲の人々の(どっちかというと妙な)リアクションを誘うものとしてのファクターが大きく、『ジェラールとジャック』のように性描写があるでもない。ただうっかり夜中に読むと急激に腹が減って眠れなくなったりそのままコンビニへ走りたくなったりするかもしれないが、そこはもって瞑すべしということで。いや瞑して走っちまうと嫌なループがさらに加速されますけどね。


1月11日(金) 曇時々晴

 昨日書いたことをうっかり実地で証明してしまった。
 晩飯の支度中、よせばいいのに次プロセスとの間にふと効率よかれと包丁を洗う気になった。で、進行中の料理に気を取られ、右手の人差し指の先をサクッ★とやっちまったんである。おのれのスペックをわきまえないとこういうことになるんだよなあと溜息つきつつ、まっすぐ工作道具のところへ走りウエスでぐるぐる巻いてラジペンで引っ張り括って血止め。ん、何か間違ってるような?

 『雨柳堂夢咄 其ノ十二(波津彬子/著、朝日新聞社)』を読む。
 もののけ往来する骨董店の物語、此度は揺れる少女のこころいじらしい「金魚白昼夢譚」を皮切りにやさしく紡ぎだしておいて、やおら「百物語の夜」で究極の怪異を出現させるなど幅広く読ませてくれる。個人的には「匏翁」の瓢々じゃなかった飄々たるアツカマシサ加減が好き。こういうもののけなら週に1度ぐらい来てもいい。
 しかし巻末の連載休止中のお知らせには非常にがっかりさせられた。理由は伏せられているが、掲載誌の版元倒壊(いや親会社に吸収されちまったワケだけど)のあおりを食ってなんじゃなかろうなエェ朝日ソノラマさんえと、文字通りあらぬ方向を睨まずにおられない。まあ、しっかり幕を引かれるよりは数段マシだけど、書き下ろしでも雑誌を引っ越してもいいから続きをお願いしたいなあ。いやいやいや、なんなら同人誌でも買います買わせていただきますが。そこらへんはどうでしょ波津センセ。当方まだ『金銀ラヴリ』を抱えてる身、そういうお話があれば間違いなく推参つかまつりますぞ。


1月14日(月) 晴

 気持ち良く晴れた空に引かれねこまと魚屋へ。といっても食用ではなく観賞用、目的も周辺機器のスペアだったのだが。
 「丸いヒーターシートがあるよ?」
 む、金魚鉢の底に敷くのか。便利なものができてるなあ。
 「出目金カワイイ」
 昔は単にグロとしか思わなかったんだけどねえ。これを丸い鉢に入れて、底にさっきのシートを敷いて上から眺めるとさぞや愛らしかろうな。いやいやいや、飼わないよ買わないけどね。
 「あ、こっちのグッピーすごく綺麗」
 何世代ぐらいの交配で出るのかねコレは。しかしワシゃワイルドもののほうが好きでのう。
 「あ、スケキヨさんだ!」
 サカサナマズだっつーの!
 …とか会話してたらあら不思議、帰ったらヤマトヌマエビとボララス・マクラータ各5匹、ピグミーコリドラス2匹が30cm水槽に追加される仕儀と相成ったのであった。まさにイリュージョン、カッパーフィールドもびっくりですな!


1月17日(木) 曇

 先日スッパリやった指先が、いささか煩わしいことになってきた。傷自体は順調にふさがったのだが、表皮はくっつかずササクレ状に浮いている。で、紙だの布地だの髪の毛だのに触るとひっかかる。うっかりそのまま引っ張れば当然、痛い。
 だからといって絆創膏(古語だろうかこれは)を貼ると、キーボードが叩きにくい。隣のキーまで巻き込んで、およそ地球言語らしからぬものがらrwgsついやもとい羅列される。少なくとも業務メールには妥当ではあるまい。しょうことなしに他の指を使うと、速度がガタ落ちである。
 とうとう、瞬間接着剤のお世話になることにした。もともと外科用に開発されたものの筈だからいいよね!答は聞いてない!とか呟きつつ、傷をなぞって滴下。待つこと数分で、見事に傷の標本いやいやいやコーティングが出来上がった。ガサつかず引っかからず完全防水、実に快適である。
 ただ表面がなめらかすぎてキートップで滑るのがちょっと不具合。あとで粗目のペーパーかけて荒らしてみるか。いや、それとも少し盛り足ししてテクスチャつけようか…って、やっぱり何か間違ってるような?

 ときに今日は誕生日である。がしかし当年とって44歳、四捨五入してギリ40台にしがみつける以外特にトピックも無い年齢だ。冥土の旅の一里塚ってか、マラソンで言うなら折り返し地点。しかもウイークデイなんで例によって残業三昧ときたもんだ。いつものように帰宅して猫と魚に餌の催促をされ、本を読みつつヨダレくって寝るだけである。
 さっぱりめでたくねぇ。
 ま、強いて言うなら「めいどのたび」と入力して「メイドの足袋」と変換され、大正ロマンな感じがしてちょっと萌えたあたりがめでたいかもしれませんね。いや、こういう「よかった探し」しちまうオノレの脳がお目出度いのは承知ですけども。


1月20日(日) 曇時々雪

 つとに思い、幾度か記してきたことだけれど、物語というのは飛行に似ている。
 気球でも飛行機でもハンググライダーでもよし、まずはわくわくと勢い込んで離陸、しばし地に足のつかない世界を楽しむ。ちょっとした乱気流やトラブルに見舞われることもあるけれど、大方はスムーズにコースを辿ってゆき、さて着陸…が最も難しい。微妙に速度を加減し高度を下げ、地面に接するその瞬間に乗客に違和感を感じさせないのがベストなのだけれど、フライトが長ければそれだけパイロットはくたびれて、着陸がお粗末になることが多い。胴体着陸ならまだしも、目的を見失って迷走し燃料切れで墜落する物語の多さに、幾度がっかりさせられたろう。
 そして今日は、1年を通じてワクワク飛ばせてくれた『仮面ライダー電王』の着陸日。間違っても事故など起こしてくれるなよと、年甲斐も無くドキドキとTVに見入った。
 …実に見事、極上のランディングだった。
 モノが電車だから「終点」と言うべきかも知れないけれど、主人公たちが導いた未来(「いつか」ではなく「未来」という、明確な希望をもったこのフレーズの好ましかったこと!)へ走り続けることを明示した終わり方に、その言葉は不似合いと思う。重さを感じさせないようなかろやかな着地、そして受け手の心中の見果てぬ地平へ再び飛翔するがごと、希望に満ちた余韻を残してくれた。
 そもそも、最終回の着陸のという考えが、観ている間は全く脳裏に浮かばなかったものなあ。わずか30分に満たないドラマの中、笑わされ泣かされ膝を打たされ唸らされ、心底満足させてもらったというのが素直なところだ。顔・声・アクションの役者諸氏、演出家さんカメラさん小道具さん大道具さん調整役のスタッフの皆さん、誰より脚本家K氏に、ひたすら感謝。いいモン見せてもらいました!
 
 それにしても、主人公たちの物語とはまた別に、影に流れたいまひとつの物語は…深かったなあ。
 己の存在を消すことと承知で戦いに臨み囮として命を賭けた桜井と、その彼と心を同じくするゆえに目の前で消えてゆく相手になお微笑をもって見送る愛理。小さな子供には分からないかもしれないけれど、いい年ぶっこいている身にはふたりの想いが察せられる上に、これまで観てきた数多のヒーローたちが脳裏を過ぎりまくってもう切ないなんてもんじゃ無ぇのです。キンタロスの投げてる懐紙も追いつかないほど、泣けたでぇ!


1月24日(木) 雪

 朝からえらい勢いで雪が降っている。うっかり転んだらそのまま春まで発見されないんじゃないかっつー勢いがいっそ恐ろしいほどだ。例年、クリスマス前と雪まつり前にドカっと来てるんだが、納期ギリギリのやっつけ仕事は結構迷惑ですぜ冬将軍様。仕事ってなぁ日々の積み重ねってものがですね…って、これ以上降り積もるのはマジで困るわどーにかしてくれ。

 と、架空の存在に文句垂れてる非科学人が『生物と無生物のあいだ(福岡伸一/著、講談社現代新書)』を読んだ。例によってベストセラー嫌いの天邪鬼、おまけに理系が苦手の食わず嫌いで流しかけてたところを、ねこまの薦めで手にしたのだが。
 ごっつー面白かったですこれ。
 「生物」というものを定義づけるという命題を主軸に、極小レベルの生命活動の仕組みやその底知れなさ、これまでその謎に挑んできた学者たちの思わぬ素顔や影、そして表紙の惹句にあるがごと推理を巡らせ論証を積み重ねながらするりと逃げてゆく「生」の不思議。特定の要素を削っても発育過程でバイパスを作って補完してしまうくだりなど、まるでミステリで鮮やかに裏をかかれた時の悔しさ交じりの心地よさがある。またそれらが退屈させない筆致ですとんすとんと脳におさまって、確かに知識を得る心地よさを与えてくれる。学生時代にこういう本に当たっていたら、ひょっとすると生物の時間がもっと楽しかったかもしれないなあ。
 (まあ僕の場合メモリは揮発性なので、あまり長保ちしないのが悲しいトコではあるが)
 科学者というと詩心や感傷、或いは信仰とほど遠いところにある印象を持ちがちだが、セーガン博士やアシモフ翁にクラーク爺様、そしてこちらの先生をみるに、かれらこそ最もそうした灯火を胸に抱いて夢を追っているのではという気がする。火の粉を分けてもらって少し暖まったところで、この分野にちょっと踏み込むべくナショジオでも買ってみるとしようか。


1月29日(水) 晴

 昼食を求めに入ったスーパーで食玩「仮面ライダーキッズ」を発見しほぼ箱買い。ほぼ、というのは12個入りの箱から全11種をレジへ運んだということなのだが、ぶっちゃけまだ観ぬ『キバ』を2つ入れるくらいならモモタロスを2個にしてくれんかな、そしたら一箱わし掴みで済んだのに…と思わぬでもない。同じ考えの駄目な大人が他にも居たらしく、売り場にキバばかり集団で残っていたのがいささか哀れでもあった。
 さて、肝心なちびソフビだが、今回も出来は極上。先回モモだけだったタロスsが、デネブやジークまで全員きちんと特徴的なポーズでコンプされて嬉しい限り。電王もゼロノスもフルモード出揃ったところはビビッドカラーまばゆいばかり。これ、いつものCDケースに飾ったらそこだけ浮きまくりそうだな。望むところではあるけれど。
今日の1枚
 欲を言えばクライマックス「てんこもり」フォームのペイントで、肩が省略されてるのが残念。確かに細かくて塗り難いのかもしれないけど、ゼロノスのベガフォームは「飾り」の筈の胸の顔にきっちり色が乗ってたんだよね。キンちゃんとウラが不憫なので、ぜひ次ロットで何とかしてください。買いなおしますから。
今日の1枚
 で、そんなモノを会社の机にならべてニヤニヤ見入っていたら、後輩がやってきてある情報を落としていった。
 電王の続編、Vシネマで登場…って、マジかい?と主役のブログを観にいったら本当に書いてあるじゃあないか!いや、これは本当に「すごいこと」だな。実際にどんな物語になるかは分からないけれど、「イマジンはもう居ないから新たな敵が?」「いやいや、ゼロノスが始動した辺りの謎を追うのでは」「カイの居た未来の話か?」「良太郎&小太郎がアリだったんだから、ハナも侑斗も複数に!」とか妄想たくましゅうしつつ、クランクアップを首を伸ばして待つしかない。楽しみだ!

 『PEPPER(たがみよしひさ/著、ぶんか社)』を読む。
 『軽シン』前後とおぼしい、まだ線が1本に集約されない画は、しかし陰影までみっしりとペン描きされていて絵柄に似ない重さがある。ストーリーは正統派の西部劇、そこに作者一流のライトでドライな人物が配されて、昨今の同系統の映画に似たテイストがあるような。ある意味、古びない人であるわな。
 それにしても『化石の記憶』を頂点と思ってる人間には、この頃の画で新作があらまほしいところ。雪女で雑誌を潰し歩いても構わないから、復活してくれないかな。



翌月へ





[ 銀鰻亭店内へ ]


サーチ:
キーワード:
Amazon.co.jp のロゴ