店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2008.7



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7月1日(火) 晴

 『ヴィンランド・サガ 6(幸村誠/著、講談社)』読了。今回も主人公はひたすら肉弾戦に終始し孤軍奮闘…の挙句、ふと我に返れば周囲の流れに置き去りにされている。不憫。
 とはいえ、「真の戦士」を希求するトルケル、奉ずるべき王を求めるアシェラッド、ヒトそのものの在り様と己のとる道を悟って王の道へと踏み出したクヌートと、この面々が一斉に濃ゆ〜い個性を発揮しまくっている状況で、ただ父の仇討ちを拠り所に生きている一本気(悪く言えば単純馬鹿な青二才)な彼がスルーされてしまっても仕方ないのか。巻を重ねて6冊目ながらまだまだ見えぬ「サガ」の本道へいつ至るのか、これら特濃人種との今後の関わりを見物してゆくのみ。語り口が非常に丁寧なので飽きる気遣いはいまだ無いけれど、発刊ペースよ上がってくれ!と祈りたいなあ。しかし北欧神話に物語の神っていたっけ(吟遊詩人の神はバルドゥルだよね)トリックスター系ってことでローゲですか?迂闊に祈ったらとんでもなく捻った結果が出そうなのだが。


7月3日(木) 晴

 『赤き死の訪れ(ポール・ドハティー/著、古賀弥生/訳、東京創元社)』読了。『毒杯の囀り』に続くアセルスタン修道士と検死官サー・クランストンのシリーズ2作目である。
 今回の舞台はロンドン塔。血塗られた歴史をもつ…と言いたいところだが、有名どころの幽閉だの暗殺だのは1300年代を現在とする物語中ではまだ発生していない。が、陰鬱極まりない石造要塞としては既に市民にその圧迫感を誇っている、その城の守が密室で殺され、謎ひしめく連続殺人が始まる…のだが、まあ飛び込んでみたまえお立会い、前作と比べると非常に読み易く、かつ話の展開が劇的で実に面白い。まあ、ミステリというよりはちょっぴり横溝風味な中世復讐譚というところ、犯人サイドから描いたらピカレスク・ロマンになったかもしらん。『紅はこべ』とか幼少期に刷り込まれていると、それはそれで読みたくなるかも?
 ネタを網羅しつつバレは無い、カバーイラストもまた結構。次回もこの調子でお願いしますぜご両所。


7月11日(金) 曇

 サミットが終わり、市内は急にスカスカになった感がある。イベント中は要所にもそうでない所にも警官が屯し、特に重要な道筋は青服に加えてシールド持ちの機動隊まで頑張っていたのが急にゼロ。一種お祭気分の見物人からすると、いささか淋しいような気がするな。
 そういえば、警官たちが紺色のパラシューター素材っぽい巾着袋を持ち歩いていたけれど、アレは何だったのかなと今さら妙に気になる。幼稚園児の「おどうぐぶくろ」然とした形状だったが…よもやソノモノではあるまいな。次にサミットがあったら、ぜひ聞いてみるとしよう。<無いない

 『鉄腕バーディー 19(ゆうきまさみ/著、小学館)』読了。
 温泉宿での激闘(ふんだんにポロリつき)を経てようやく本筋へ復帰…と思いきや、またまた別勢力の登壇により事態があらぬ方向へ。つとむの日常は崩壊しつつあるわ、バーディーは政局に振り回されるわ、しかもサラッと暗殺命令の話まで出て剣呑このうえない。さあ、どうなる?というところであろうことか連載誌が無くなってしまうという未曾有の事態に。いやいやいや、これは本編とは関係ないんだけど、予告されてる次巻がちゃんと読めるのかどうかっつー大問題だわな。大昔に描かれたオリジナルをふと思いつつ、ここで雲散霧消されないことをせつに祈りたい。超人ロックのごと、雑誌から雑誌を潰しもとい渡り歩いても、必ず結末へ導かれんことを!


7月13日(日) 晴時々曇

 『ダリアハウスの陽気な幽霊(キャロライン・ヘインズ/著、下山真紀/訳、創元推理文庫)』読了。よくあることながら、オビの内容と中身とのギャップが激しい。特にお嬢様探偵ってアナタ、その言葉から想像される繊細だの優雅だのはヒロインには薬にしたくともありませんぜ?ひと昔前なら大年増の三十路越えで破産目前、生まれはいいけど地に足をがっしりつけて、幽霊つきの家を維持すべく友人の犬を誘拐してみたり、金持ち男に身を任せるべきか悩んでみたりしつつ、恋より性欲をストレートに主張する、タフでリアリスティックな「オンナ」そのもの。どこ見てアオリ文句つけてんだ、え?
 で、邪魔なオビをへし折って栞代わりに読み進めると、これが意外と面白い。南北戦争時代の元奴隷の幽霊ジティ(何故かヒッピームーブメント以降のファッションが気に入り)はでしゃばりで強引、甲羅を経た厚かましさと妙に現代的な合理精神でヒロインの生活に口を出しまくる。負けじと(あらぬ方向へ)奮闘し、コージー・ミステリの主人公の例に漏れず退きどころを無視して事件の深みへどんどこはまり込むヒロインが探る過去の事件は華麗なアール・ヌーヴォーの美術に彩られた名家の一大スキャンダル。キーとなるアイテムが実にそれらしく、このあたりのアート好きには結構ツボじゃなかろうか。アメリカ南部の歴史や気風が巧みに織り込まれてるのも読みどころ。途中の色恋沙汰はどこのハーレクイン・ロマンスかって気もするが、真相解明あたりの活劇はなかなか手に汗握らされるものがあった。タイトルに「骨」のついたこのシリーズ、今後も旧家の秘密をネタにするものと思われるが、ぜひ盛大に掘り返し咥え出されんことをと期待する。あ、子宮のビョーキのほうはエッセンスにしては半端なので、どうかほどほどに。


7月19日(土) 曇時々晴

 小説家の作風さまざまあれど、中に「水」をイメージさせる人がいる。作中モチーフとして多用されるという訳ではなく、作品そのものが生活圏とは全く異なる、なにがしかの支度や覚悟をととのえて立ち入らねばならないエリアとしての水の印象を与える人々が。
 たとえばH・クックは見通せない澱みだ。その中に何かがあることは分かっていて、その形を色を正体を突き止めたいという好奇心には無性に駆られるものの、深さが読めず逡巡させられる。もしかすると水はあまり深くないかもしれないが、底は泥がごってり溜まってて、足を取られてずぶずぶずぶなんてコトになりゃすまいか。ん?今何か泳がなかったか?あっちででかい泡が立ったのは何だ?とか何とか言いつつ思い切って踏み込んでみると、まあ見たとおりな状況で、半泣きで泥水飲みつつもがく羽目になる。分かってるのに何故踏み込むのかと誰かに問われたら逆ギレしたくなる、そういう作品だ。
 そしてこの人は、清澄感と冷気漂う、しんと静まった湖水に似ている。辺りに立ち込める空気も水気を含んで清々しいのだけれど、それゆえ立ち入った時の痛いような冷たさが容易に察しられ、やはり一歩が踏み出し難い。だからといって勢いをつけといて頭からざんぶりなどというのは論外だ。確実に心臓にくるだろう。いや、それより一見きめ細かく美しく見える底砂に、何か尖ったものが覗いてやしないか?
 とつおいつ疑いつ、ミネット・ウォルターズ『病める狐(成川裕子/訳、創元推理文庫)』上下巻を読了。
 がしかし、今回は覚悟したほどの衝撃が無くてちょいと意外。水温が少し高いのか、はたまた日差しが強いのか、いつもの身じろぎをも許さぬ雰囲気ではない。一応の主人公は居るものの、多くの人々の視点を渡り歩いて語られる物語は常のように身に迫るものがなく、他作品では細密にねっとりと綴られる人間の卑しい面も今回滑稽味を加えて描写されているせいか毒気が少なくて、なんだかワンクール完結のTVドラマのようだった。子供の視点も加わったためか一部ジュブナイル調でもあったりして、こんな味もあるのかと意外性を楽しめないでもないのだが、食い足りない感のほうが強かったような。まあ、これで油断させといて次回作でまた冷水を浴びせてくれるのかもしれないけどね。用心用心。


7月24日(木) 曇時々雨

 日付の変わる頃、だだ流ししていたTVの画面に地震警報が映った。初めて見たもので「おやどこかで地震が?」とか間抜けに眺めているうちに部屋が揺れ出す。
 おおスゲェ!ちゃんと予報できてるよ!
 震源が東北と知ってさっそく仲間の安否確認にチャットへ入り、とりあえず無事を喜び合うが、各自の地震計が全て棚の上のフィギュアであるあたりに業を感じるばかり。ちなみにヒロツさんちがちびキャラの長門、博士がガンダム、我が家は木野さんことアナザーアギトだったりする。地震による被害の前に、落ちて(いや、キックをかまして)きた地震計に殺られそうな気がせんでもないな。困ったもんだ。


7月31日(木) 曇時々晴

 ここしばらく通院している案件でMRIを撮りに行く。そう、一朝こと在らばリバーシブルのジャンパーを裏がえして出動する怪奇を暴く人び…いや、このネタは前にもやったわな。年をとると物忘れが激しくて困るのう。
 ヨタはさておき、馬齢を重ねるにつれ病院へ行く機会が増えてくるのは鬱陶しいが、そこで新しい技術に出会うのは非常に面白くこころ躍るものがある。たとえば今日のMRIにしても、数年前に受けたものよりは確実に小型化され、手順も簡略になっていた。まだ目にしてはいないけれど、カプセル型の胃カメラとか血管内を手術できる極細マニュピレータとか面白いものがどんどこ出ているというし、この先どうなるか楽しみだなあ!…って、お世話になりたいモノでもないだろうが>わし
 そういえばもう5年ばかり前、しつこい不整脈に我慢できず検査を受けたら、障害は無いけれど波形が逆向きと言われたっけ。コレなんかも理由が分かれば面白いだろううな。


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